二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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決勝が始まった。
「二人とも、今まで通りに自由にやろう」
「おいおい、大丈夫なのかそれで?相手は十師族だぞ?」
「大丈夫。なんたってあたしがいるからね」
「ま、まぁそう言えばそうなんだが……」
「最悪、あの一条って人はあたしが相手をするよ。殺さない程度に」
「分かった」
そのまま三人は動いた。すると、一条も銃を構えながら歩いてこっちに来ていた。
「じゃ、挨拶代わりに一発」
美雨はそう言うと、プッと勢いよく唾を吐いた。それが一条に向かうが、一条はギリギリ躱す。
「避けた……」
(今の唾、当たってたら肩を貫通してたな。やはり化け物か、田中太郎。だが、魔法は防げるか?)
考えながら一条は偏倚解放を放つ。それを美雨は殴って弾いた。
「なにっ⁉︎」
「欠伸が出るよ」
(ま、魔法すらも弾けるのか……⁉︎)
だが、一条は怯むことなく、美雨に向かって攻撃をする。
(だが、お前の攻撃は威力が高過ぎる。俺に手出しは出来ないはずだ!)
そのままガンガン攻撃するが、美雨は殴ってすべて弾いた。
「このっ……!」
「!」
横で、幹比古と戦いながらその様子を見ていた吉祥寺が思った。
(あいつ、もしかして……!)
「将輝!」
「どうした」
「あいつ、もしかして………!」
「………! なるほど」
「試してみる価値はあるよ」
「そうだな。行くか。残りの2人は任せるぞ」
「うん!気を付けてね」
そのまま作戦会議を終えると、一条は走り出した。何もせず、ただ突撃した。
「!」
「なにっ⁉︎」
そう、美雨に魔法がない以上、物理的に殴ることは出来ない。だから、美雨は無視するべきだ、と二人は悟ったのだ。だが、美雨はつまらなさそうに走ってくる一条にこう吐き捨てた。
「ごめん。それじゃ無理なの」
こっちに来る前に拳圧でぶっ飛ばした。周りから見たら魔法にしか見えないだろう。
「なっ…!将輝!」
「そこ!」
「え?」
余所見した瞬間に、吉祥寺も倒された。そして、最後の一人はレオが倒した。なんかあっさり終わったなおい。
*
「いやー勝った勝った。お疲れーミッキー。レオ」
「おう。よくやったな、美雨」
「うん。ありがと。ミッキーもお疲れ。すごかったよ、あの公家みたいな髪型した人倒した時」
「う、うん。ありがとう。でも、美雨のがすごかったよ?」
「ううん。あたしは魔法使えないし、精霊も呼べないもん。だから、ミッキーはすごいよ」
「そう、かな……」
顔を赤くして照れるミッキー。男の子も可愛いところあるなー。なんて思いつつ、レオにも声をかけた。
「レオも、お疲れ様!」
「おう」
そのまま二人と別れた。
*
さて、明日でラストだ。ミラージバッド。深雪、そして渡辺さん達の代わりになるよう、頑張らないと、と気合を入れ、部屋に入った時だ。
「お、お帰り、美雨………」
「」
中には、
学ランを羽織り、両手に指ぬきグローブ、片腕に包帯、片目を前髪で隠した雫ちゃんが立っていた。
「や、闇の炎に抱かれて消えろ!」
「」
思わず声を失った。か、可愛い。可愛い過ぎる……。だが、それと共に思ったことが一つ。何やってんのこの子。
「あの、雫ちゃん?」
「ダークフレイムマスターだ!」
「ええ〜……」
あたしが反応に困ってると、深雪がパタパタと寄ってきた。
「ねぇ(小声)」
「何(小声)」
「どうしたのよ、てかあなた何を吹き込んだのよ(小声)」
「洗脳したみたいな言い方やめてよ。なんもしてないから(小声)」
「嘘おっしゃい。どうせあなたの影響でしょ?(小声)」
「絶対違う。それだけは自信持って言える(小声)」
「とにかくなんとかしなさいよ。このままじゃあの子のゴールが分からないわよ(小声)」
「なんとかも何もないでしょう。あたしも何考えてるかわかんないよ今回ばかりは……って、あっ(小声)」
「? どしたの?(小声)」
「あたし、昨日自販機の前で花音先輩にカッコいいって言ったんだよね。もしかしたら……(小声)」
「……………」
「……………」
二人でチラッと雫ちゃんを見た。
「魔剣ダーインスレイプ!」
うわあ……あたしはぶっちゃけると中二病患者は好きじゃないんだよなぁ……。アニメで見るぶんにはいいんだけど……。
「………どうしようもないわね」
深雪が言った。
「まぁ任せてよ深雪。とにかく、元に戻すから」
で、あたしは雫ちゃんに生暖かい笑顔で言った、
「カッコイイネ(棒読み)」
光の速さで雫ちゃんは出て行った。