二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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早く正午にならないかな。決勝トーナメント早くやりたい。で、明日は渡辺さんの代打でミラージバッドだよね。…………なんか助っ人し過ぎじゃね?スケット団?まぁなんでもいいんだけどさ。これはもうMVPとしてうちの兄ちゃんにパフェ食べ放題と来週発売されるプレステ173奢らせるしかないな。なんて考えながら、あたしはホテルのベンチでぼんやりしている。いや、ぼんやりはしてないな。音ゲーの真っ最中だ。
「ふぅー……フルコン乙……」
息をついてあたしがイヤホンを外した時だ。
「次兄上!何故このような所にいらっしゃるのですかっ?」
なんだ?聞き慣れてる声だけど聞きなれてない口調だな。見ると、誰お前?みたいな感じの口調のエリカが、おそらくその兄上と思われる人物に食い付いていた。
「兄上は来週まで、タイへの剣術指南のためのご出張のはずです!どうしてここにいらっしゃるのですか!」
「エリカ……少し落ち着いて」
「これが落ち着いておられましょうか!和兄上ならばいざ知らず、次兄上がお務めを放り出すなど、昔であれば考えられませんでした!」
「いや、だから落ち着いて……僕は仕事を放り出してきたわけではなくてね……」
「はーいそこまでー」
気が付けばあたしは二人の間に入っていた。いや、三人だ。渡辺さんもいる。
「………誰?」
「初めまして〜あたし、エリカのお友達の司波・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・美雨です。よろしくね!」
「え?あ、ああ……千葉修次です。な、長い名前だね」
「嘘ですよ次兄上。本名は司波美雨です。………ていうか、何の用よ美雨」
「ん?なんか修羅場ってたから首突っ込んだだけ。なんかエリカがエリカじゃなかったし」
「しまったー……一番見られちゃいけない奴に見られたー……」
すると、次修さんの方が「あっ」と声を上げた。
「美雨って……そうか。摩利を助けてくれたのは君だったのか」
「助けた?」
「あ、ああ。そうだったな。彼女が私を助けてくれたんだ」
「ありがとう。摩利を助けてくれて」
「………あ、ああ。あの時ですか。いえいえ、あの程度あたしに任せてくれればヨユーですよヨユー」
「はははっ。そうだ。何か奢らせてくれ」
「じゃあ飲み物買ってください!」
「いいよ。さ、行こうか」
と、あたしは次修さんと飲み物を買いに行った。で、チロッと後ろを向くと、エリカと渡辺さんがすごい顔であたしのことを睨んでいる。あたしはそこにすごく嫌な笑顔で返してやった。
*
そのまま決勝トーナメントが始まる。あたしとレオとミッキーは速攻で九校を沈め、残りは三高との決勝戦。
「美雨」
「なに?兄ちゃん」
「無理はするなよ。勝てなくてもいい。決勝まで来た時点で、新人戦の優勝は決まっている」
「わかってるよ。その代わり、勝てたらちゃんと報酬よろしくね」
「ああ」
「あと、そっちの仕事もよろしく。奴ら、叩き潰しといてね」
「分かってる」
さて、サクッと優勝してこようかな。