二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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二高戦。ステージは五階建てビル。
「このビル、壊しちゃまずいよなぁ……」
なんせ、自分たちがいるビルだ。下手したらレオやミッキーも巻き込まれる。ていうか、せっかくのデュフェンスなのに相手が来なくて暇だ。暇なので懐のゲーム機を取り出した。
「さぁ、ゲームを始めよう」
なんて呟いてみたり。そのまましばらく戦っていると、悪意を感じた。敵が来たっぽいな。そっちに向かってあたしは石を投げた。すると、壁を突き抜けて、壁の向こう側で「あでっ!」と、声が聞こえた。多分気絶したな。
「退屈だナー」
大会中にゲームやる暇があるとかどうなってんのマジで。もういいや。あたしもオフェンスしちゃおーっと。
数秒後、試合が終わった。
*
いよいよ決勝トーナメント。あたしは飲み物でも買おうかと、雫ちゃんと自販機コーナーに向かった。
「それで、男子の試合に出てるわけね……」
「本当横暴だよねぇ〜。男子並みの体力があるだかなんだか知らないけどさぁ」
「いや、男子並みっていうかサイヤ人並だと思うんだけど」
「あ、雫ちゃん何飲む?奢ってあげるよ」
「じゃあ、ファ○タグレープ」
「はいはーい。可愛い」
で、小銭を入れようとした時だ。手元を滑らせてしまった。
「あっ」
そのまま小銭は転がり、自販機の下へ。
「あーあ……」
「任せて、わたしの方が腕細い」
「? なんで腕の細さが出てくるの?」
「え?」
天然さんなのかな雫ちゃんは。あたしは不思議に思いつつも、自販機を持ち上げた。
「よっ」
「」
その時だ。ヴーッ!と警報が鳴った。
「うえっ⁉︎」
「そりゃそうなるよね」
そのままたかってくる警備員達。
「うええっ⁉︎な、なんで……」
「君!何をしている!」
「いや、自販機の下にお金が、落っこちちゃったんで……」
「だから壊そうとしたのか?ていうかそれどうやって持ち上げてんの?」
「怪力」
「ふざけるな!どこの生徒だ!」
あわわわわ〜……、ど、どうしよ……。雫ちゃんいつの間にか少し離れたベンチで他人のふり決め込んでるし……。テンパってると、ヌッと入ってくる影。
「すみません。この子の言ってることは本当です」
花音さんだ。
「君は?」
「一高の千代田です。彼女がお金を落とすところを見ました。本当に落ちています」
「………そうか。一高の。ならわかった」
そのまま退散する警備員。よく納得したな。一高の名前マジ便利。
「花音ちゃん!助かったよ!」
と、言ったあたしにチョップ。
「ったぁ!」
「まったくあなたね。お金を取りたいなら普通に取りなさいよ」
「だ、だって……自販機軽いのにそんな地面に這い蹲るなんて……」
「言い方酷いわね……。それで、お金は取ったの?」
「あ、取ってないや」
「仕方ないわね。取ってあげるわ」
そのまま花音ちゃんは自販機の下に手を伸ばす。あたしはそれに合わせて携帯で花音ちゃんの無防備なスカートを覗き込んだ。あとパシャリと一発。あー熊さんパンツだー。可愛い。なんてやってると、花音ちゃんはすぐに立ち上がってしまった。
「ほら」
「ありがとね」
「じゃあ、啓を待たせてるから」
そのまま花音ちゃんは行ってしまった。
「うん。またね」
で、あたしはジュースを二本買って雫ちゃんの元へ。
「はい、ジュース」
「ありがと変態」
「うるさいなー。そんなことよりさ、花音さんってカッコよくない?」
「えっ?」
「いやなんか、堂々としてるっていうか……なんていうか、カッコいいよね。旦那さんにしたい」
「…………そだね」
「どしたの?」
「カッコイイ、か………ふむ、なるほど……」
なんかブツブツ言ってるよこの子。大丈夫かな。