二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
<< 前の話 次の話 >>
雫ちゃんとの決勝の日。兄ちゃんはあたしの所に来た。
「美雨」
「おお、兄ちゃん。愛しの妹の応援かな?」
「まぁな。いや、忠告と言っておこうか」
忠告?なんの。
「手は抜くなよ。それが雫のためだ」
「……………」
「深雪のフリをしているから、とかは関係ない。挑まれた以上は正面から戦え」
やっぱ、そうだよね。
「分かってるよお兄ちゃん。優勝、してくる」
「なら、いい」
そんなわけで、試合開始だ。
*
ベジータと着物の少女がステージに上がってきた。その2人は凛とした表情でただ見つめ合っていた。
「いよいよだな」
達也が声を漏らした。ハッキリ言って雫に勝ち目はない。しかも、相手は美雨だ。こんなチートお化けみたいな奴にどうやって戦うのか。すると、試合が始まった。瞬間、美雨の姿が一瞬消える。が、すぐに出てきた。
「!」
だが、壊された氷柱は六つだけだった。
(なるほど……振動か。あのスピードで揺れた足場の氷柱に狙いを定めるのは確かに至難だ。それに、動きを止められれば、魔法の使えない美雨に自分の氷柱を守る術はない。どうやら雫のやつ、美雨だと気付いてるみたいだな)
と、達也は分析する中、試合場では、雫もまた、美雨の拳の跡がついた氷柱を眺めながら分析していた。
(拳の跡……前々の試合や昨日の美雨のお見舞いに行ってた時から思ってたけど、あれは深雪じゃない。多分、本当に風邪引いたのは深雪で、代わりに美雨が出てるって感じね。まぁ今はそんなことどうでもいいわ。後で美雨のことボコすだけ。正直、深雪相手は勝てるとは思ってなかったけど………美雨なら勝てる。これは、魔法を使う競技だから!)
考えながら雫は魔法を発動。しようとした時だ。自分の足元でパキィンッと氷柱の砕ける音がした。
「なっ……⁉︎」
前を見ると、美雨は動いていない。また、目では追えないスピードだと判断した雫は再び振動魔法を発動。だが、それでも破られる。
「そんなっ……!」
見ると、美雨はその場でパンチのモーションをしている。
(! そんな、まさか……!パンチを飛ばしてるの?)
そう考えてる間にも破壊されていく氷柱。
「このっ……!」
雫は負けじとフォノンメーザーを発動。超音波の振動数を上げ、量子化して熱線とする高等魔法だ。だが、美雨は思いっきりステージを踏み付けた。その振動によって、震度5弱ほどの地震が会場を襲った。騒然とする会場。周りから見たら魔法にしか見えないだろう。だが、これは美雨の自力だ。そして、その地震によってすべての氷柱は砕け散った。お互いの。
「あっ」
そこで、美雨は気付いた。
(やべっ、これじゃ引き分けじゃね?)
引き分けになった。