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【サッカー】

<目撃者>堂安、快勝PK 追い込んで成長するビッグマウス男

2019年1月26日 紙面から

 【ドバイ(アラブ首長国連邦)松岡祐司】サッカーのアジア杯は24日、当地などで準々決勝が行われ、日本はベトナムを1-0で下し、4度目の優勝を飾った2011年大会以来2大会ぶりに4強入りを果たした。後半12分に決勝PKを決めたMF堂安律(20)=フローニンゲン=の原動力は、途方もない目標を口にする「ビッグマウス」の裏側に隠されていた。28日の準決勝でアジア最強のイランと激突する日本は一夜明けた25日、控え組が体を動かした。

 目をぎらつかせた20歳はボールを抱え、GKダン・バン・ラムをにらみつけた。「入る気しかしなかったんで自信満々で蹴りました」。後半12分、ビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)で得たPK。堂安は左足を振り抜き、右隅に突き刺した。今大会2点目。誇らしげな表情で胸を張り、雄たけびを上げた。

 「僕は性格的に自信しか持っていないタイプなので、自信を失うことは一切ない。自信を持って試合に臨んだ。圧倒的に自信はある」

 少年時代から技術はずばぬけ、ドリブルは誰にも止められなかった。天才肌で自信家。あまりに突き抜けた存在だったため、ミスする仲間に「なんでや」と叱責(しっせき)を飛ばし、てんぐになりそうな時もあった。

 兵庫・西宮SS時代に指導した早野陽さん(34)は堂安に寄り添い、決して満足しないよう高い目標を与え続けてきた。

 「『まだまだ上がいるよ』って。そこは律にめっちゃ言ってきました」

 恩師の教えに従い、堂安は12歳の時に日本代表入りや欧州クラブ移籍を描き、オランダ移籍後はバロンドール(欧州年間最優秀選手賞)を狙うことを決めた。そして、いつも大目標を公言してきた。「ビッグマウス」を介して退路を断ち、プレッシャーに身をさらすことで成長スピードを速める。それが、堂安流の進化論だった。

 「言葉にして、そこへ自分自身を引き上げる。小さい頃からの律のやり方。自分に言い聞かせているんです。誰にどう思われようが、自分はやるよという強烈な意思表示ですね」(早野さん)

 ベトナム戦前夜。堂安は長友に「僕を追い込んでください」と頼み込んだ。長友が「得点を決めなければ頭を丸めて」と言うと、堂安は「了解。PKを決めて、勝利に導きます」と応じた。そのやりとりを、SNSで公開することを前提に映像に収めた。大きなプレッシャーを意図的につくりだすことで、自らの闘争本能に火を付けたのだ。

 堂安は「アジア杯で日本を優勝させる」と言い続けてきた。「律はこれまで言ってきたことを全てかなえてきている。自分自身に厳しい律の思いを信じ、見守ってあげてほしい」と早野さん。

 チーム最年少の20歳が大好物の重圧を食らい、新たな歴史をつくろうとしている。

 

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