二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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決勝の意思

 

 

 

 

あたしは一足先に部屋に戻った。

 

「やっほー、生きてるー?みゆきー?」

 

「縁起でもないこと言わないで。……ていうか、何その嫌な笑顔………」

 

「いやーうちの姉は素直じゃないねぇ〜」

 

「………どういう意味よ」

 

「あたしのこと大好きなんだからぁ♪もっと素直になりなさいよぉ」

 

「ど、どういう……⁉︎はっ!あの子達、余計なことを……!」

 

「ほらほらぁ、可愛い可愛い妹が甘えに来ましたよー」

 

あたしは言いながら深雪に後ろから抱き着いた。

 

「こ、コラ!調子に乗るなー!」

 

「おねえちゃーん♪」

 

「ひゃっ!ど、どこ揉んで……このっ!いい加減にしろー!」

 

投げられた。準備運動の海老のような格好で叩きつけられた時に、あたしはふと思い出した。

 

「あ、そうだお姉ちゃん!」

 

「そのお姉ちゃんって気持ち悪いからやめて」

 

「あと数分くらいで雫ちゃん達が来ちゃうんだよ!」

 

「ええっ⁉︎」

 

「あたしのふりをして!お願い!」

 

「ふざけないで!私に死ねと⁉︎」

 

だが、コンコンとノックの音。

 

「ああ!は、はーい」

 

「あ、後で覚えてなさいよー!」

 

無視してあたしは応対した。

 

「はーい」

 

「きたよ。美雨ちゃん元気?」

 

「うん。今、グッスリ寝てるわ」

 

そのまま雫ちゃんとほのかちゃんと英美ちゃん、だっけ?その三人を入れた。そして、部屋の奥に行くと、

 

深雪がゴロゴロしながらゲームしてた。

 

「深雪、全然寝てないけど」

 

「ええっ⁉︎って、美雨!ちゃんと寝てなさいって言ったでしょ⁉︎」

 

我ながら完璧な深雪になってると思う。だが、あたしになってる深雪は、

 

「雫ちゃーん!」

 

ガバッと雫ちゃんに抱き着いた。え、何この姉可愛い。と、思ったら笑顔なのに血管が浮き出てる。あ、これあたし後で死んだわ。

 

「もう……心配したんだよ美雨」

 

「ごめんね雫ちゃん、また試合見れなかったよー……」

 

「風邪引いてたんだから仕方ないよ。それより、早く寝な?」

 

「うん♪」

 

あれ?これ本当にうちの姉?………なんだ、夢か。

 

「深雪ー。お腹空いたー」

 

「はいはい……」

 

思わず言うこと聞いちゃったよ……。そのまま深雪はあたしに成り切り、なんとか凌ぎ切った。

 

 

 

 

次の日、そのまま順調に勝ち進んだ。そのまま午前の競技が終わって、第一高校の天幕は完全なお祭り状態になっていた。

新人戦女子ピラーズ・ブレイク三回戦三試合三勝だからそりゃそうだよね。そんな中、あたしと雫ちゃんと英美って子が会長さんに集められた。

 

「時間に余裕があるわけじゃないから手短に言います。決勝リーグを同一校で独占するのは、今回が初めてです。司波さん、北山さん、明智さん、本当によくやってくれました」

 

と、会長さんがお辞儀しながら言った。

 

「この初の快挙に対して、大会委員会から提案がありました。決勝リーグの順位に関わらず学校に与えられるポイントの合計は同じになりますから、決勝リーグを行わず、三人を同率優勝としてはどうか、と」

 

ふーん。なるほどね。あたしとしてはバレるリスクが減って万々歳だね。

 

「大会委員会の提案をうけるかどうかは、皆さんの意思に任せます。ただし、あまり考える時間はあげられません。今、この場で決めてください」

 

あたしの答えは決まってる。答えようとしたら、会長さんは兄ちゃんに聞いた。

 

「達也くん、あなたの意見はどうかしら?三人が戦うとなれば、あなたもやりにくいと思うけど」

 

「正直に言いますと、明智さんはこれ以上の試合を避けたほうがいいコンディションですね。三回戦は激闘でした。あと一時間や二時間で回復できるとは思えません」

 

「そうですか……明智さん。達也くんはこう言ってますが?」

 

「私は今のお話を伺う前から、棄権で構わないと思っていました。さっきから調子が悪いのは確かだし、司波くんに相談して決めようって」

 

「そうですか。北山さんと司波さんは?」

 

断ろう。そう思って口を開きかけた時だ。先に雫ちゃんが口を開いた。

 

「私は……戦いたい、と思います」

 

「えうっ⁉︎」

 

思わず間抜けな声が出てしまった。

 

「深雪と本気で競うことのできる機会なんて、この先何回、あるか……。私は、このチャンスを逃したくない、です」

 

「そうですか……」

 

いやあたし深雪じゃないんですけど……。でもそんな風に言われたら断りずらいよ………。

 

「深雪さんはどうしたいのですか?」

 

「えっ……」

 

ど、どうしようも何も………。そんなの決まって……あ、いやでもここで断ったら……。チロッと兄ちゃんを見ると、目を逸らしていた。コイツ、使エネー。

 

「深雪さん?」

 

「え、えーっと……ま、まぁどっちでもいいですよ」

 

あっやべっ。困った時の対処法スキルがオート発動しちまった……。

 

「えっ⁉︎………あ、いや、わかりました……では、大会委員会に伝えておきます。決勝は午後一番になるでしょうから、試合の準備を始めた方が良いでしょうね」

 

あー……どうしよ。兄ちゃん、あんた困った顔してる場合じゃないよ……。

 

 

 





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