二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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試合終了後、あたしは兄ちゃんに呼び出された。他には会長さんと渡辺さんがいる。
「勝ったよ?」
「よくやった。極力目立たないように」
「ほんとだよ。久々に本気で走ったわ」
「ま、待て待て待て。どういうことだ?美雨、君は何をしたんだ?」
渡辺さんに聞かれた。
「一個ずつ殴って壊しました。誰にも見えない速さなら自然かなって」
「いや、君は動いていなかったじゃないか」
「本当ですよ。………あっ、ほらこれ証拠」
あたしは手についてた氷をつまみ上げた。
「………っ」
「本当に人間?」
純粋な目で会長に問われてしまった。
「とにかく、次からの試合も目立たないように頼むぞ」
「うん!」
「「思いっきり目立ってたと思うけどね」」
ちょっとそこ。組みを揃えて言うのやめてくんない?
*
夕食の時間。
「すごかったわよねぇ、深雪のあれ」
「気が付いたら全部砕けてたもんね」
「ていうかなんて魔法なの?どうやったの?」
半分以上知らない女子に問い詰められています。
「え、えーっとね……」
チロッと奥の方を見ると、兄ちゃんがこっちを見ている。あ、あれ下手なこと言ったら殺すって目だな。
「や、あれは……その、トランザム」
「トランザム⁉︎」
「何それカッコイイ!」
「どういう魔法なの⁉︎」
「えっと……あれ、なんだ?えーっと……」
困った……。実に困った。もうテキトーでいいかな。と、思った時だ。
「まぁまぁ、深雪もすごかったけど雫も凄かったじゃん。それとエイミィも」
と、ほのかちゃんが助け舟を出してくれた。まぁ本人はそんなつもりなかっただろうけど。とにかく助かった。
「そういえば、美雨ちゃんはどうしたの?」
全然助かってなかった。ほのかちゃんの鮮やかすぎる裏切り。
「な、なんかゲームやり過ぎて休んでるみたいよ。まったくあの愚妹は……」
深雪の口調はこんな感じか?
「? 喧嘩でもしたの深雪?」
「? なんで?」
「いつもはこれでもかってほどに美雨ちゃんのこと褒めることしかしないじゃない。偏差値毎回トップだの運動がかなりできるだの……」
「へ?そ、そなの?……じゃなくてそーだっけ?」
「うん。大概シスコンだなぁーって思ってたんだけど……って、深雪⁉︎どうして泣いてるの⁉︎」
「ごめんなさい……ちょっと、意外で…じゃなくて目にゴミが………」
「そ、そう………」
なんていい姉なんだ……。今度、全力で労ってあげよう。
「そうだ。あとで美雨ちゃんに会いに行ってあげようよ」
えっ。
「それもそうね!」
「いらないわよ」
「本当に喧嘩でもしたの?」
「し、してないけど……」
「なら行こうよ!」
「そうだね!」
「そうしよう!」
やばっ…どうしよっ。
「い、いいわよやっぱり。案外、あの子ゲームやってピンピンしてそうだし」
「そうはいかない」
そこで前に出たのは雫ちゃんだ。
「美雨のため。私だけでも行く」
「し、雫ちゃ……(←寸止め)」
しかしこの子も気付いてないんだ……複雑だな少し。