二人目の妹は入学すら出来ませんでした 作:スパイラル大沼
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大会4日目。あたしは自室にいる。隣では深雪が寝ていた。熱を出しているからだ。
「具合はどう?」
「大丈夫よ」
「ごめんね……あたしのせいで……」
「それはもういいわよ。気にしないの」
「…………うんっ」
「九校戦が終わるまでには治るかもしれないんだから。ね?」
「うん」
そんなに早く立ち直れるか。いや本当こういう時のあたしのメンタルマジ豆腐だからね。それと共に九校戦の間は深雪の代わりはあたしがやることになったんだから緊張感も尚更。
しょぼんとしてると、深雪に背中を叩かれた。
「そんな事よりいいの?そろそろ雫の試合じゃない?」
部屋の窓から文字通り飛んだ。
*
あたしはちょうどいい感じにほのかちゃんの隣に着地しようと調整する。なんかエリカと話してるみたいだな。
「ほ・の・か。今から緊張していては、試合までもたないわよ?」
「うっ、分かってるんだけど……」
「大丈夫よ、ほのかなら。司波くんもそう言ってたでしょ?」
「う、うん……」
「レースのことを考え過ぎないように、こっちに来たんでしょ?今は雫の応援を……」
ズドンッ!とあたしは落下、着地した。
「ーーーーっ!」
「」
「試合始まっちゃった⁉︎…………って、ほのかちゃん?どうかした?」
真っ白な顔したほのかちゃんがパタリとぶっ倒れた。
*
4日目夜。雫ちゃんの部屋。あたしはベッドに座ってる雫様に土下座していた。
「すいませんでした」
「試合、観に来る約束だった」
「仕方ないじゃん!ほのかちゃんが気絶しちゃったからそれを……!」
「そのほのかを気絶させたのは、誰?」
「あたしです、テヘペロ☆」
「今の、イラっとした」
頭を踏まれた。ああ……ご褒美……。
「今、ご褒美とか思ってた?」
な、なんでわかるの⁉︎
「そ、そんな滅相もないです!ごめんなさい!でも優勝おめでとう!」
「誤魔化せると思う?」
鬼………。
「し、雫……もうその辺で……。わ、私は大丈夫だったし、試合も予選突破出来たんだから……」
「ほのかは甘い。こういうのは怒らなきゃダメ」
うう……雫ちゃん相当怒ってるよぉ……。
「あ、そういえば明日は深雪の試合だね!」
思い出したようにほのかが言った。ちなみにあたしと深雪が入れ替わる予定なのはあたし、兄ちゃん、深雪、生徒会の皆様、渡辺さん、ゴリ文字さんしか知らない。
「そういえばそうだね。まぁ深雪なら心配する必要もないね」
「まぁ、あたしの姉だしね腐っても」
「何、勝手に喋ってるの?」
こ、怖っ!雫ちゃん思ったより愛が重い!
「ご、ごめんなさい……」
「ふぅ……反省してる?」
「はい」
「次の試合は観に来る?」
「はい」
「なら、許したげる」
「ありがとう雫ちゃーん!結婚しよう!」
「それは無理。…………したくても」
と、抱き合うあたし達を見ながらほのかちゃんが聞いてきた。
「あの、二人は、さ……どういう関係なの?」
「「友達以上恋人未満」」
即答した。すると、苦笑するほのかちゃんだった。あれ?そういえば明日、深雪の競技ってことは……あたしの出番じゃん。
「げふぇっ!えげふぇっ!」
「「美雨(ちゃん)⁉︎」」
*
次の日、雫ちゃんの振袖に本気で鼻血を垂らしながらも美雨の番となった。客席で達也と真由美、摩利は見ながらも内心はかなりドキドキしていた。
(頼むぞ美雨……勝てなくてもいいからバレないようにしてくれよ……)
(バレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんようにバレませんように………)
(お願い神様いやむしろ美雨様、頼むからバスの中みたいな派手なことはするなよ……)
と、三人は同じようなことを願っていた。すると、美雨がステージに上がった。瞬間、観客席が大きくどよめいた。
「ヴフッ!」
「ブハッ!」
「ブフッ⁉︎」
三人は噴き出した。出てきた深雪はベジータの戦闘服を着ていた。
「あっふぁっふぁっふぁっ‼︎み、深雪なんてもの着てんのよ!あーっはっはっはっ‼︎」
「だーっはっはっはっ‼︎た、確かに!ありゃねぇよ!」
と、爆笑するエリカとレオ。美月や幹比古までもがクスクスと笑っている。笑えないのは正体を知ってる三人。
(……小遣いの話はなしだな)
(バレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタバレタ………)
(あんのバカッ………!)
と、焦ってる三人にレオが聞いた。
「どうした?達也」
「いや、なんでもない」
「しかし思い切ったことすんだな深雪も。地味に似合ってるし」
こりゃ後で深雪に殺されるな美雨、と思いつつも試合会場を見る。すると、試合が始まった。いや、始まった時だ。美雨の姿が0.5秒くらい消えたかと思うと、敵選手の氷柱がすべて砕け散った。
会場はシンッとする。ただ、美雨だけが気だるそうに肩を回していた。
「あのバカっ……」
思わず達也は声を漏らした。周りは未だに声を上げることはないが、そんなの気にせずに美雨はさっさと退場した。