二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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検証と交渉

 

 

 

そんなこんなで、どっかの部屋。あたしと兄ちゃん、深雪がそこで待機していると、コンコンっとノックの音がした。

 

「深雪、すまないが出てくれ」

 

「………………」

 

だが、返事がない。ただの尸のようだ。いや死んでないけど。

 

「深雪?」

 

「…………は、はい!」

 

「どうかしたのか?」

 

「なんでもありません。それで、なんでしょう?」

 

「ノックがしたから出てくれ」

 

「は、はい」

 

で、深雪がドアを開ける。珍しいな、深雪が兄ちゃんの声聞き逃すなんて。

 

「どうぞお入りください。……お兄様、五十里先輩と千代田先輩がお見えになられました」

 

深雪の声に兄ちゃんが手を止める。

 

「わざわざすみません」

 

「いいよ、気にしないで。手伝うって言ったのは僕の方だし、作業中の端末を持って来させるわけにも行かないしね。…………って、深雪さんが二人⁉︎」

 

「ああ、お二人は初めてでしたね」

 

兄ちゃんがチロッとあたしを見る。自己紹介しろ、みたいな感じかな。

 

「妹達10032号美雨です。深雪のクローンです!」

 

「嘘を吐くな。自己紹介くらい真面目にやれ」

 

「分かってないねー兄ちゃん。世の中に必要なのは笑いと可愛いだよ。それさえあれば戦争なんて起きるはずな……」

 

「小遣い抜くぞ」

 

「司波美雨です。よろしくお願いします」

 

そのやり取りに苦笑いしながら二人は言った。

 

「五十里啓です」

 

「千代田花音よ。よろしくね。あなたは確か行きのバスから飛び出て車を蹴り飛ばした子?」

 

「そだよー」

 

「美雨。上級生だぞ」

 

兄ちゃんに怒られた。

 

「いいよ別に気にしないで。……にしても、深雪ちゃんそっくりなのに性質は正反対ね」

 

「よく言われるよ。………って、あなたこそ何をする競技だかで優勝してたヒト!」

 

「え?うん。いかにも!私がアイス・ピラーズ・ブレイク優勝者だよ!」

 

「カッコよかったよー!ねぇ結婚しよ!」

 

「ありがと………えっ?」

 

「気にしないでください、千代田先輩」

 

と、深雪。

 

「妹の言うことは九割九分九厘無視していいですから」

 

「それより、本題に入ってもよろしいでしょうか?」

 

「あ、うん。いいよ」

 

兄ちゃんに言われて五十里さんが反応する。

 

「それで、何か分かったの?」

 

「美雨が言うには、水面に何か見えた、とのことで一通り検証してみました。やはり、第三者の介入があったと見るべきですね。五十里先輩、確認していただけますか」

 

「こう言っちゃ悪いけど、美雨ちゃんの見間違いっていうのは?」

 

「ありません。うちの美雨は悪意には敏感です」

 

「あたしはニュータイプバリに敏感だからねー!」

 

「了解」

 

勧められた椅子に腰を下ろしながら、五十里さんはなんかしていた。魔法に関してはあたし、からっきしダメだから何してるか分かんないんだよな……。すると、五十里さんが振り返った。

 

「……予想以上に難しいね、これは」

 

「啓、どういうことなの?」

 

そのまま小難しい魔法関連のことをペラペラ話す四人。宇宙の言語にしか聞こえなかったのであたしはただボーッとしてると、コンコンとノックの音がした。ちょうどいいや、あたしが応対しよう。

 

「はーい」

 

ガチャッと開くと、ダブルミッキーだった。美月と幹比古ね。

 

「美雨ちゃん、だっけ?」

 

「兄ちゃん、お客さん」

 

「すまんな、二人とも」

 

兄ちゃんが声をかけると、二人は部屋に入る。

 

「ご紹介します。俺のクラスメイトの吉田と柴田です。二人とも、知っているとは思うが、二年の五十里先輩と千代田先輩だ」

 

と、ザックリした自己紹介をして、兄ちゃんは軽く説明する。

 

「二人には、水中工作員のなぞを解くために来てもらいました。二人とも、俺たちは今、渡辺先輩が第三者の不正な魔法により妨害を受けた可能性について検証している」

 

すると、二人は若干驚く。………ていうか、あたしここにいる必要あるのかな。魔法に関して空なあたしがいても仕方ない気がする。話し合いを進める6人を見ながらあたしは欠伸した。………なんか、深雪の顔赤くね?兄ちゃんが近くに座ってるからかな。いやでもそんな初恋の中学二年生みたいな反応を今更するとは思えないし………。後で部屋で聞いてみよう。

 

 

 

 

そんなわけで夜。深雪に尋ねようと思ったのだが、会長さんに呼び出されてどっか行っちゃった。ま、後でいいね。あたしはそのまま寝転がって持ってきたゲームをダラダラとしていた。すると、ガチャっと扉が開く音がした。

 

「あ、おかえりー……って、どしたの?」

 

そこにいたのは深雪をおぶった兄ちゃんに、会長さんに生徒会の人、だったっけ?それと渡辺さん。

 

「って、深雪どったの。顔赤くね?」

 

「美雨さん」

 

改まって会長さんに言われた。

 

「は、はい。なんですか?」

 

「単刀直入に言うわ。摩利の代わりの深雪さんの代わりにミラージ・バッドに出て下さい」

 

「………は?」

 

今なんつったこの人。

 

「だからね、九校戦に出ない?って聞いてるの」

 

「いや、いやいやいや。いやーいやいや。ん?いや?うんいやいやいや。それはいやいや、いやそれはいやそれは……いやいやいや」

 

「いやって言い過ぎだ。ていうか、お前出たがっていただろ。出ろ」

 

ちょっと命令してきましたよこのお兄さん……。

 

「深雪は体調不良だ。お前を追い掛けていた所為でな。まぁ、その件については深雪がすでに叱ったということで何も言わない。ただ、こうなったのはお前の責任でもあるんだ。出ろ」

 

「いや無理でしょ⁉︎てかなんであたしなの⁉︎」

 

「私が推薦した」

 

胸を張るのは渡辺さんだ。

 

「いや何してくれてんのあんた!」

 

「何、君は私の事を助けてくれたではないか。そのお礼に九校戦に出させてやろうということだ」

 

「いや『ということだ』じゃなくて。何一つ理解出来なかったんですけど」

 

「いいじゃないか。そろそろ見ているだけというのも飽きてきただろ?」

 

「それに、こういう時のための双子でしょう?」

 

「いや違うから!あたしとしてはむしろフレッドとジョージみたいな双子になりたかったよ!」

 

「美雨」

 

なんか真剣な顔で兄ちゃんに見られた。

 

「もうお前しかいないんだ。ミラージ・バッドは失うわけにはいかない」

 

「いや尚更それあたしじゃ……」

 

「一万円でどうだ?優勝したら」

 

「あたしに任せて。金、銀、銅メダル全部取ってきてあげる」

 

俄然やる気出てきた。で、ミラージ・バッドのルールを聴こうかな。

 

 

 

 





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