二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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事故

 

 

 

夜中。深雪は兄ちゃんに伝える事があるとか言ってどこかへ行ってしまった。で、あたしは一人。さて、ゲームやるか。今日1日溜まってる分を発散しないと。

 

「さて、行きますか……」

 

『シルバー』『•』『ホーン』出撃する!

 

 

 

 

二日目飛んで三日目。なんかバトル・ボードの決勝が行われるということで、一応観に行く。今いるのは、兄ちゃんにあたしに深雪、会長の四人。

 

「お兄様、もうすぐスタートですよ!」

 

深雪が嬉しそうに言ってた。イマイチ、ルールは分からないが、まぁサーフィンで競争するみたいなもんか。なにそれまったく意味不明。すると、スタートした。トップはたった2人で、三位以降は大きく離されている。

 

「やはり手強い……!」

 

「さすがは『海の七高』」

 

「去年の決勝カードですよねこれ」

 

「ねぇ、どれが渡辺さんなの?」

 

「トップの人よ。それくらい分かりなさい」

 

なんか無茶言い出しましたようちの姉ー。まぁ勝ってるならいいか。と、思ったがそういうわけでもない。二人は魔法を撃ち合っていた。へぇー、妨害もありなんだ。

 

「いいなぁ…面白そう……」

 

「魔法が使えるようになってからいいなさい」

 

兄妹揃って言わなくてもいいじゃないですかー……。まぁでも、このままなら勝てそうだ。と、思った時だ。海の七高選手のボードが体勢を崩していた。

 

「オーバースピード⁉︎」

 

と、誰かが言った時にはあたしは動いていた。なぜなら、その選手の前には渡辺さんがいたからだ。思いっきり、客席を踏み台にして、デッカいクレーターを作りながらも、レース中の二人に向かってジャンプ。

七高選手は渡辺先輩に衝突し、そのままフェンスに突っ込む。が、フェンスに当たる前にあたしは2人を抱えて、フェンスを飛び越えた。

 

「痛っ!」

 

「!」

 

あたしの声じゃない。しまった…フェンスにどちらかが足をぶつけてしまったっぽい。考えながらもとりあえず着地する。

 

「うっ……!」

 

「だ、大丈夫ですか渡辺さん⁉︎」

 

「き、君は…司波三人目か……私は大丈夫だ。それより、彼女は?」

 

「き、気絶してるみたいです」

 

「そうか。良かっ……痛ッ!」

 

渡辺さんが痛みを堪えるように片足を押さえ、小さく短い悲鳴を上げた。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「ああ……どうも、フェンスに足をぶつけてしまったようだ……」

 

「っ」

 

………あたしのせいだ。もっと、ちゃんと助けていれば。

 

「美雨!」

 

呼ばれて振り返ると、兄ちゃんが走ってきていた。

 

「渡辺先輩は?」

 

「足をぶつけたみたい……」

 

「そちらの選手は?」

 

「見た所、外傷は見えないけど、気絶してるだけっぽいよ」

 

「そうか……。よくやったな美雨。あとは俺と医務班に任せろ」

 

「うん………」

 

その後、渡辺先輩は病院に送られた。

 

 

 

 

病室。手術が終わり、あたしと会長さんと兄ちゃんだけが病室にいる。

 

「摩利、気が付いた?私が誰だかわかる?」

 

目を覚ました渡辺さんに会長さんが尋ねる。

 

「真由美、何を言っている?そんなことはきくまでも……ここは病院か」

 

「ええ、裾野基地の病院よ。良かった……意識に異常はないようね」

 

「足は、骨折か?」

 

「ええ…あのスピードでフェンスに足だけ直撃したみたいだから……」

 

「うっ……」

 

そう言われると困る。もしかしたら、あたしが助けなかった方が良かったのかもしれない。

 

「それで、定着までどのくらい掛かる?」

 

「全治一週間、1日寝てれば日常動作に支障はなくなるけど、念の為に、10日間は激しい運動を禁止」

 

「おい、それじゃあ⁉︎」

 

「ミラージ・バットも棄権ね。仕方ないわ」

 

「そうか……」

 

「その、渡辺さん……」

 

あたしは声をかけた。謝るならこのタイミングだろう。

 

「すみません……慌ててたもので、ちゃんと助けられなくて……」

 

「いや、君は悪くないよ。あのまま全身で直撃していた方が酷かったかもしれない」

 

「でも………」

 

「美雨」

 

顔を伏せてると、頭の上に手が置かれた。見ると、兄ちゃんが撫でてくれていた。

 

「お前はよくやった。俺たちの中で、お前だけが唯一動けていたんだ」

 

「それは、身体能力にも差が……」

 

「いいから。それ以上自分を責めるな。それより、観客席のデッカいクレーターの方をどうにかするか考えるんだな」

 

「ええっ⁉︎弁償⁉︎」

 

「冗談だ」

 

た、タチの悪い冗談を……。なんてやってるのは置いといて、渡辺さんは言った。

 

「しかし、バトル・ボードが棄権となった以上、ミラージ・バッドを落とすわけにはいかないぞ」

 

「そうね。このままじゃ今年は負けてしまう可能性も……」

 

「誰か、代役を立てるか……」

 

「ま、その話は置いといて、お昼にしましょう」

 

「では、俺と美雨は失礼します」

 

「うん。またね」

 

そのままあたしと兄ちゃんが病室を出ようとした時だ。

 

「美雨さん、だったかな?」

 

渡辺さんに声をかけられた。

 

「はい?」

 

「ありがとう。助かったよ」

 

「…………いえ」

 

さて、あたし達はこれから、犯人探しかな。

 

 

 

 





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