二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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ホテル

 

 

 

「私の妹がご迷惑をお掛け致しました」

 

深雪が深々と生徒会長さんに頭を下げる。だが、会長は、

 

「いいのよ。私達だって助けてもらったし。美雨ちゃん、大丈夫?」

 

「ず、ずみまぜん……大丈夫です……ウェップっ」

 

「なら良かった。もう少ししたら出発するからね」

 

うー……まだ少し気持ち悪い……。誰だ吐けばスッキリするとか言った奴は。まだ気持ち悪いわ。

 

「大丈夫?美雨」

 

「ごめんね深雪……」

 

「大丈夫よ。酔い止めあるけど飲む?」

 

「酔い止めなんて飲んだら余計気持ち悪くなるよ〜」

 

「そう。まぁいいわ。もう少しで着くから、それまで頑張れる?」

 

「うん……」

 

「一応、席順を変えたほうがいいかしら」

 

「じゃあ、深雪さん。隣に座ってあげてくれる?」

 

と、生徒会長。

 

「はい」

 

再び出発した。

 

 

バスの中、深雪の肩の上に頭を乗せて寝ている美雨の頭の上に頭を乗せて寝る深雪を見て、中の全員が(主に雫)が、鼻血を出しそうになったのは別の話。

 

 

 

 

到着。あたしは雫、ほのかと一緒にバスを降りた。

 

「んーっ!やぁっと着いたぁー!」

 

「……にしても美雨ちゃん。荷物多くない?」

 

ほのかに聞かれた。確かに、でっかいカバン二つにリュックが一つある。

 

「あーまぁね。パソコン三台にその他ゲームとポケットWiFiとか色々あるから。あとゲームとか…まぁ色々!」

 

「ぱ、パソコン三台……?」

 

「今日からネトゲのイベントなんだよねー。どーせ今日は競技ないんでそ?だったら部屋に篭ってゲームしてるよ」

 

「そ、そう……」

 

「美雨、私あとで遊びに行ってもいい?」

 

「もちろんだよ!お二人なら365日24時間四六時中一瞬の例外なく部屋にいてもいいくらいだもん!」

 

「それは嫌」

 

なんて話しながらホテルの中へ。だが、グイッと深雪に襟首を掴まれ止められた。お陰でグエッと潰れたカエルのような声が出てしまう。

 

「待ちなさい。どこへ行くの?」

 

「ぇげふぇっ!げふっ!……え?自分の部屋……」

 

「選手でもないあなたが1人部屋なんて借りられるわけないでしょう?あなたは私と同じ部屋よ」

 

「えーっ⁉︎」

 

深雪と同じってことは……自由にゲームできない……。

 

「そりゃないよ!」

 

「仕方ないでしょ。ほらいくわよ、さっきエリカと美月を見かけたから、後で挨拶したら?」

 

「会ったらね」

 

そんな事言いながら、深雪部屋に向かった。

 

 

 

 

「ちょっと、お手洗いに行ってくるわね」

 

これが、数分前の深雪の台詞。で、今はあたしは深雪の前で正座している。

 

「あなた……もはや呆れるを通り越して尊敬するわ。私がお手洗いにいる間、わずか数分よね?その間によくこの綺麗なホテルの一部屋を悪の組織の簡易監視システム管理室みたいに出来るわね」

 

「いや…その………今日はネトゲの……」

 

「黙りなさい」

 

「は、はひ!」

 

「………はぁ。もはや何も言わないわ。数分後には下の階で懇親会をやるそうだから、それまで下に来なさいよ」

 

「はーい」

 

そのまま深雪は部屋を出た。どーせ兄ちゃんの部屋にむかってるんだろーなー。さて、やるか。と、思ってパソコンをすべて起動し、ゲームを起動する。すると、コンコンっとノックの音。

 

「ふあーい」

 

気の抜けた返事をしながら扉を開くと、ほのかちゃんと雫ちゃんだった。

 

「今、お邪魔してもいいかな?」

 

「全然いいよー」

 

「お邪魔します……」

 

で、二人は部屋に入ってきた。

 

「で、何する?ベッド二つあるし、三人で?」

 

「ち、違うよー。普通に遊びに来たの」

 

「私、美雨のゲーム見たい」

 

「いいよ。それでも」

 

言いながらパソコンの前へ。画面の中を覗き込む雫ちゃん。

 

「『シルバー』『・』『ホーン』……これが、美雨なの?」

 

「うん」

 

「じゃあ、私と雫で『・』と『ホーン』を使うから、美雨ちゃんは……」

 

「ううん、大丈夫だよ。あたしが三人使うから」

 

「へっ……?」

 

アホな顔して驚くほのかちゃんを捨て置いて、イベントに突っ込んだ。左手でシルバー、・は両足、ホーンは右手で操る。

 

「や、やっぱり…足は厳しい、かな……」

 

「い、いやいやいや美雨ちゃん。動きが尋常じゃないんだけど……」

 

ほのかちゃんに言われるも無視してプレイ。そのままフルボッコにした。

 

「ふぃー……疲れたぁ……」

 

「あの……美雨って本当に人?ていうか目が3セット付いてるの?」

 

「? 何言ってんの雫ちゃん?」

 

「な、なんでもない……」

 

すると、ガチャッとまた扉が開く。

 

「美雨、そろそろ懇親会よ」

 

「はーい」

 

シャットダウンすると、ほのかちゃんと雫ちゃんは「また後でね」と、出て行った。さて、着替えないと……。

 

 

 

 

「ねぇ、本当にこの格好じゃなきゃダメなの深雪」

 

「ダメよ。本当ならあなたはここにいちゃいけないんだから。それなりにちゃんとした格好しないと……」

 

「制服でよかったんだけど」

 

「あなたがラーメン零したから今はクリーニング中でしょ?文句言わないの」

 

あたしはドレスを着させられている。なんで…なんでこんな格好……。

 

「はぁ……」

 

「ため息つかないの。あとでポテチ買ってあげるから」

 

「あたしは子供か!」

 

「ほら、遅れるわよ」

 

で、渋々部屋を出た。外ではほのかちゃんと雫ちゃんが待っていた。

 

「あ、美雨ちゃん。遅、かった、ね………」

 

「なにして、た、の………」

 

二人が言葉を失う。

 

「…………なに?」

 

「「誰?」」

 

「ぶっ飛ばすよ。北極まで」

 

まぁ、あたしの顔は深雪だし。そうなるのは知ってたけど……。

 

「はぁ……だから着たくなかったのに……それにスカートってなんかパンツの中までスースーして好きじゃないんだよなぁ………」

 

「ああ、やっぱ美雨だ」

 

「どういう意味だ⁉︎」

 

雫ちゃんに過剰に反応する。すると、深雪が言った。

 

「文句言わない。ほら、早く行くわよ」

 

やだなー…行きたくないなー……。そのまま懇親会へ向かった。

 

 

 

 





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