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【社説】

北方領土交渉 動じず、押し込まれず

 北方領土交渉が勝負どころを迎えた。日ロ外相会談に続き、二十二日は安倍首相がプーチン大統領と会談した。両国は建設的な対話を通じ、ゴールの平和条約締結にこぎ着けてほしい。

 プーチン氏は会談後の共同記者発表で、日本との貿易、投資、技術協力での関係拡大に向け「より野心的な計画を論議した」と指摘し、領土交渉に絡めて日本の経済協力を求める意向をにじませた。

 欧米の経済制裁のあおりも受けて低迷する経済や、人口減が深刻な極東地域の開発をにらんで、交渉の果実を必要としているのだろう。

 昨年十一月、両首脳が一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速させることで合意したのを機に、ロシアでは領土引き渡しへの反対論が高まった。

 プーチン政権はこれに神経をとがらせ、交渉態度にそれは表れている。ラブロフ外相は「日本は第二次大戦の結果を認めよ」と述べ、北方四島は合法的にソ連領になったと認めるよう主張する。

 ソ連は大戦末期、日ソ中立条約を破って対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後に四島を不法に占拠した。とても日本が受け入れられる「歴史観」ではない。

 ラブロフ発言は多分に国内向けだろう。だが、この種の発言を繰り返せば自分の手を縛ることになりかねない。そもそも「歴史的な(主張を戦わせる)ピンポンをやめるべきだ」と主張したのはプーチン氏である。

 歴史論争を蒸し返すのは不毛なだけだ。ロシアには前を向いた話し合いを期待する。日本もロシア側の揺さぶりに動じず冷静に対処してほしい。

 日ロは交渉の出発点となる共同宣言の解釈でも対立する。「共同宣言は日本への引き渡しをうたった歯舞、色丹両島の主権については触れていない」として、ロシア側からは主権の問題を議論しない旨の発言も相次ぐ。

 それでは交渉が成り立たない。両首脳とも領土問題では双方が受け入れ可能な解決策を目指す姿勢を見せている。この基本線に沿って日本は粘り強く交渉すべきだ。

 戦後七十年以上経過しても平和条約が結ばれていない「異常な状態」(安倍氏)に自分たちで終止符を打つ、と両首脳は誓ったはずである。日ロ関係を新たな高みに上げることは双方の利益にかなう。両首脳には英知と決断を望みたい。

 

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