二人目の妹は入学すら出来ませんでした   作:スパイラル大沼
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美雨

 

 

 

 

「死ねカス」

 

銃口を握り潰すと、美雨は二人のテロリストの顔面を顎から掴み上げて、持ち上げる。

 

「ほんとさ…おまっ何してくれてんのお前ら……いやだってお前さ……あんな、お前あんなハーレム状態で心ピョンピョンしてたあたしにお前あんな……さぁ、いやだってお前、そりゃねぇよ…お前だってこれお前……」

 

そこで美雨は両手を軽く広げる。そして、一歩踏み出して、テロリストの頭と頭を打ち付けた。

 

「千・本・桜ッッ‼︎‼︎」

 

頭はお互いに弾け、血がブシャアッ!と噴き出る。「きゃあああっ!」「深雪さぁぁぁぁんっっ!」「いやそれ私じゃないですー!」なんて騒然とする中、達也は美雨の元へ。

 

「落ち着け美雨。俺達と実技棟の方へ来い」

 

「はぁ?全員ぶっ殺すんじゃダメなの?」

 

「これはすべて陽動だ。早く終わらせるためには頭を叩くしかない」

 

「早く終わらせる?なんで?全員、生きてることを後悔させた上で眼球をほじくり返した後に永遠にゲロを吐き続ける状態にしたうで全裸でM開脚させて屋上から吊るす」

 

完全にドSイッチ入ってるな……。そう判断した達也は恐る恐る聞いてみた。

 

「何かあったのか?」

 

「あの振動のお陰で…あの振動のお陰で……あたしの肩に頭置いて可愛く寝息立ててた雫ちゃんとほのかちゃんが目を覚ましちゃったんだよっ‼︎」

 

呆れる達也だった。

 

「そうか。まぁ、今回落ち着いて、俺の言うことを聞いてくれてらアレだ。北山さんとのデート用に水族館のチケットを用意してやる」

 

「なんなりとお申し付け下さいませお兄様」

 

「じゃ、行くぞ」

 

 

 

 

途中、レオとエリカを仲間に加えてそのまま図書館に走る。狙いがそっちだと分かったからだ。途中、飛び出してくる敵は全て美雨が叩き潰した。比喩じゃなくて。

 

「パンツァ……」

 

と、叫び掛けたレオだが、その前に敵が吹っ飛ぶ。美雨によって。

 

「………おい達也。妹ちゃん、なんか機嫌悪くね?」

 

「仕方のないことだ。ほっとけば敵を殲滅してくれる」

 

「お前兄貴としてそれどうなんだよ」

 

「機嫌の悪いあいつの邪魔をすると八つ当たりの対象がこっちに向くぞ」

 

「八つ当たりなのかあれ……」

 

で、図書館に到着。

 

「ここか……」

 

「お兄様」

 

「分かってる」

 

達也は敵を感知する。

 

「二階特別閲覧室に四人、階段の上り口に二人、階段を上がりきったところに二人……だな」

 

「すごいね。達也くんがいれば、待ち伏せの意味がなくなっちゃう。実戦では絶対敵に回したくない相手だな」

 

「特別閲覧室で何してるのでしょう」

 

「おそらく、魔法大学が所蔵する機密文献を盗み出そうとしているんだろう」

 

「さ、それならさっさと行こうぜ。好きにさせられるかってんだよ」

 

と、図書館の前で気合いを入れる四人。その四人の少し離れた所で、美雨が図書館の外壁をこんこんと叩いていた。

 

「ここ……は、あんまよくないな……この辺、ここでいいか……」

 

「? 何してるんだ、妹ちゃ……」

 

「リン・ちゃん・なう☆」

 

と、言いかけたレオの口が止まった。美雨は拳を大きく引くと、図書館をブン殴った。その瞬間、図書館が崩壊した。

 

「」

 

「」

 

「」

 

「」

 

四人は言葉を失った。そんな四人を無視して美雨は手についた埃を払うようにパンッパンッと払う。

 

「ふぅ……」

 

「いや、何してんのよお前」

 

驚愕の表情でエリカが訪ねた。が、ケロリとした顔で美雨は答えた。

 

「いや、これが一番効率よく一網打尽出来ると踏んだんだけど……」

 

「エゲツないわねあんた……」

 

「とりあえず、先程の八人を回収しよう」

 

とりあえず、瓦礫と本の山を漁る五人。その時だ。「あっ」と深雪が声を上げた。

 

「どうしたの深雪?エロ本?エロ本でも落ちてた?」

 

「いや、あの……ていうかエロ本とか言わないの」

 

で、深雪はその見つけたものを引っ張り出した。

 

「壬生先輩……」

 

「……………」

 

 

 

 

その日、あたしは保健室の前で待機中。中では壬生さんの事情聴取が行われている。関係ないあたし……いやむしろ加害者のあたしが中にいるのはちょっとあれだろう。

あー、早く兄ちゃん出て来ないかなー。さっさと帰りたいのになー。なんて考えながら携帯いじってると、後ろの扉が開いた。

 

「あ、兄ちゃん遅いよ……」

 

前にいたのは壬生さんだった。

 

「って、壬生さん⁉︎」

 

うーわ、どんな顔すりゃいいんだ?とりあえず土下座かな。あたしは土下座した。

 

「ごめんなさい!違うんです!まさか中に壬生さんがいると思わなかったんです!わざとじゃな……あ、いや壊したのはわざとだけど…そういうんじゃなくて、あー……もう!ごめんなざああああい!」

 

「頭、あげてよ」

 

思わず泣いてしまうと、声をかけられた。なんだろ、ビンタかな。断頭かな……内心ビクビクしながら上げると、ふわっと抱き締められた。

 

「ありがとう。私を止めてくれて……」

 

「み、壬生しゃあん……オッパイ当たってますぅ……」

 

「………なんかお礼言って損し……あんた鼻血出てるわよ⁉︎ちょっ…ティッシュ、ティッシュ!」

 

「けっこんしてくだしゃい……」

 

「何言ってるのよ…ほら、上向いて。ティッシュ詰めるわよ」

 

 

 

 

「予想通りですね、お兄様」

 

「本命すぎて面白みがないけどな」

 

「現実はそんなものですよ委員長。さて、じゃあ行くか。深雪、美雨」

 

「うん。壬生さんを泣かした連中がこの世にDNAを残してるなんて反吐がでるもん」

 

「そこまで言う?」

 

なんて話してるあたしら司波一族。それに恐る恐る聞くのは生徒会長さん。

 

「どこに、行くつもりなの?」

 

「テロリストバスター」

 

「危険だ!学生の分を超えている!」

 

真っ先に反対したのは風紀委員長さんだ。

 

「私も反対よ。学外のことは警察に任せるべきだわ」

 

生徒会長さんも言う。あたしはその二人にこう返した。

 

「そうなると、壬生さんが強盗未遂で家裁送りになるんですよ?」

 

「!」

 

「なるほど。警察の介入は好ましくない、か」

 

「ていうか、壬生さんがこの学校からいなくなるのが嫌なんです。そしたらあたしが会いに行けないじゃないですか」

 

「理由が極めて不純だな君は……。しかし、相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる」

 

「そうだ。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に命を懸けろとは言えん」

 

ゴリ文字先輩が言った。

 

「だーかーらー、あたし達三兄妹が行くって言ってるじゃん。ゴリ文字さん」

 

「あたしも行くわ」

 

「俺もだ」

 

「って、エリカとレオもくんの?」

 

なんで?まぁいいけど。すると、兄ちゃんが言った。

 

「自分の生活空間がテロの標的になったんです。俺はもう、当事者ですよ。俺と深雪、美雨の日常を損なおうとするものを、すべて駆除します。これは俺にとって、最優先事項です」

 

そんなわけで、行くことが決定した。

 

「作戦はお前に任せるぞ。美雨」

 

「うん。えーっと、行くのはあたし、兄、姉、レオ、レウス、ゴリ文字さんの6人でいいんだよね?1分で考える」

 

「いや、もう一人いる。剣術部で一科生の桐原先輩も一緒だ」

 

「ふぅーん。りょーかい」

 

あたしが考えてると、ゴリ文字先輩が兄ちゃんに聞いた。

 

「………司波、彼女に任せて大丈夫なのか?」

 

「問題ありません。彼女は頭が良い」

 

「戦略ゲーとクイズゲーのために鍛えたスキルだけどねー」

 

なんか落胆のため息が聞こえたな。

 

 

 

 

 





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