謎の水装置問題(2018年)

助けてください

謎の水装置問題でとても困っています。誰か助けてください。
このままだと業者に400万円を搾取されてしまいます。
行政や相談所に行きましたが、いずれもたらい回しか、担当でないという回答です。
対応してくれそうな、警察官、公務員、官公庁、相談所、学識経験者、NPO、なんでも構いません。心当たりがあれば連絡をください。(クローズにつき連絡先抹消

できごと

当マンションは大規模改修の時期を迎えており、水道管の全面交換をどうするかという長年の問題がありました。一般的な工事では3000万円ほどの支出になります。工事期間は長く、断水も発生します
ところが、住民の一人が見つけてきた「ESR更生機(電子スピン共鳴更生機)」を使えば400万円ですべての問題が解決するとのこと。工事は1日(というか一瞬)で、断水も生じず、装置は電源も制御も不要で40年間動作し、効果がなければ返金されるという、夢のような話です・・・?

現代科学を超越した説明だったので「疑問」をぶつけてみたのですが、回答は要領を得ません。この時点で私は「非常に疑わしい」と思いました。
しかし住民の皆様は「説明はよく分からなかったが、担当者が頑張ったんだから反対したら悪いわね」という雰囲気になってしまいました。

私の立場

私はマンションの「区分所有者」です。
当マンションでは「役員会」が議案を作成し「集会」で住民全体で決議する方式を採用しています。
集会に先立って住民説明会が開かれて、初めて装置のことを知りました。
購入の原資はマンションの改修積立金で、約400万円を支払うとのこと。
次回集会で導入決定という計画になっています。


私は様々な方に意見を求め、この製品の説明は「事実ではない」と判断しました。
効果を期待できない装置に400万円も払う事態を避けるため活動しています。
住民数名と話してみましたが「ESR(電子スピン共鳴)と言われても難しくてわからない」と、科学的な説得で廃案にすることが難しい状況です。


「導入賛成派」は本製品について「特別な思惑」があるように見受けられ、説明や話し合いは拒否されています。
集会では疑似科学装置のリスクを開示せずに可決させたいようです。

どう決着したいか

  1. 装置の購入をやめさせたい
  2. そもそも効果が期待できない装置なので、購入する意味がない
  3. 集会で住民に「リスク」を説明してほしい
  4. 「導入賛成派」は「知り合いのマンションで効果が出たと言っている」という伝聞で効果を判断しています。
    しかし、皆から集めたお金で買うからには、装置のメリット・デメリットをきちんと提示して判断を仰ぐべきでしょう。
    科学的な原理が正しいのか、効果が出なかった事例はあるのか、効果が出ない場合に保証されるのか、といった点は全く説明されていません。
    都合の良い情報だけを列挙して、リスクを知らせないまま議決させることは不誠実です。
    逆に、全員が「リスク」を承知の上で購入するなら、疑似科学であっても仕方ないと諦めます。
  5. 行政に謎装置の「見解」を出してほしい
  6. 住民説明会を受けてから、上記1〜2のように民主的な手段での解決を試みましたが、「導入派」の奇妙な熱意や、問題が科学的すぎて住民の理解が及ばないことから、装置の問題点が伝わりません。
    そもそも装置は「ESRを用いている」と、現代科学で理解できない説明をされています。このような誤解を招く宣伝方法に、行政が何らかの措置を出してくれることを期待します。

装置の疑問点

「ESR更生機」はESR(電子スピン共鳴)現象を用いて水道管のサビを取る装置とされています。
しかし学術研究のESR装置と、水道管のサビを取るESR更生機の構造は全くの別物です。この装置の特許に書いてあるような簡素な構造でESR現象を起こせるとは思えません。
またESR現象が水中に自由電子を発生させるという主張は、現代科学では理解不能です。
装置の構造は、2000年代に問題になった「磁気処理水」に見えます。

  1. 電源を用いない装置でマイクロ波が恒常的に発生すると言う説明
  2. この装置では特殊な材質を使うことで周囲の熱を電波に変えるそうです。
    平衡状態からエネルギーを取り出すような材質は、熱力学第二法則と矛盾します。
    もし装置から有意な量のマイクロ波が発生し続けるのであれば、コイルを用いて電流を取り出すことが可能になります。これは第二種永久機関とよばれるもので、現代科学では実現不可能とされています。
  3. マイクロ波が金属を透過すると言う説明
  4. 電磁気学の法則により、電波は金属を透過しません
    ケータイWatchの実験
  5. ESR現象によって自由電子が発生すると言う説明
  6. マイクロ波のエネルギーで水分子から電子を放出させることは不可能です。
    そもそもESRは被験体の物性を変えない装置です。もし自由電子が発生するなら観測装置として使えないことになります。

水商売ウォッチングへのリンク

大学教員が運営するサイト「水商売ウォッチング」では20年近く前から「水処理装置」について解説されているそうです。
同様な装置について「科学的に」解説していたところ、業者から「訴える」とのメールが来た事もあるそうです。
  1. NMRでサビを取るとされる製品の解説
  2. ESRでサビを取るとされる製品の解説
  3. 公正取引委員会に通報したという記載
  4. 団地でのトラブルへの相談
  5. クレームとその対策
  6. 業者から訴えられそうになったメールのやり取り。業者が「NASAの技術を使っている」と主張するメールなど

私の活動記録

  1. 某国立大学 教員
  2. 掲載許可をもらっていないので氏名割愛
    直接メールを書いたところ回答をいただけました。「業者が主張する原理と効果は全く結びつかない」「目をつけられた〜お気の毒としか申し上げようがありません」という内容でした。
    資料もいただきました
  3. 某国立大学 教員
  4. 掲載許可をもらっていないので氏名割愛
    直接連絡を差し上げたところ、先生が業者の論文と特許を読み「磁気核共鳴は起きない」という主旨のコメントいただけました。
  5. 北海道立 工業試験場
  6. 謎の水装置のウェブサイトで「効果を検証した」として掲載されています。
    試験場に電話したところ、「水道に関して怪しい宣伝が〜」まで伝えたら「ESR更生機ですか?」と言われました。
    試験場はサンプルの分析をしただけで、装置の性能は承知していないとのこと。
    企業に記事削除を求めたが、話し合いは物別れに終わった。効果を検証したとする北大の◯◯名誉教授は当場の関係者ではない」とのことです。
  7. 国民生活センター/消費者センター
  8. 消費者庁の管轄で、怪しげな商品について対処してくれるはずの部署です。
    直接電話したところ「マンションの管理組合は一般消費者ではないので何も対応できない。このような問題に対処できる官公庁は思い当たらない」「国交省のNETISに登録されているので技術は確かなのではないか?」という回答でした。
    (追記)国民生活センターは消費者庁所轄、消費者センターは消費者法によって自治体が設置する機関です。全くの別組織ですが、同じ理由で断られたので項目をまとめました。
  9. 水道局
  10. 直接電話したところ「貯水槽方式のマンションは水道局の管轄外」とのことでした。
    (追記)一般家庭の場合は蛇口から水が出てくるまでが水道法の対象になっています。したがって、蛇口やパイプの取り替えは資格が必要です。
    ところが、マンションのように集合貯水槽方式の場合は水道法が及ぶのは貯水槽までです。貯水槽の出口から蛇口までは水道局は関知しないので、資格がなくても工事できてしまいます。本件がまさにこのケースです。

    各地の水道局にも磁気活水器の相談があるようですが「磁石をメーターに近づけないで」と言うのが精一杯のようです。
  11. (社)マンション管理組合連合会
  12. マンションの管理組合を会員として、問題解決をサポートする組織。
    「非科学的な装置を売り込まれて困っている」と訪問相談したところESR更生機の存在を知っており、「ESRを使った優れた装置なので付けてはどうか」との回答。
    「効果」と称する資料を見せてきたので問題点を指摘していくと「このことを外で話したら然るべき処置をとる!」と激昂したので逃げてきました。
    会員を恫喝するとは、ものすごい公益法人があったものです
  13. (財)マンション管理センター
  14. センター監修の本でNMR更生機を絶賛する記述あり。
    電話で問い合わせたところ「監修といっても記載された全ての項目を検証するわけではない。装置は知らないし、センターには何の資料もないと思う。センターは効果を保証するものではないので、詳細は作者に問い合わせてほしい」との事。
    (NMR更生機を絶賛する記述は販売会社の社長が執筆したとの事なので、客観的な見解とは言い難い)
    センターの技術担当者は「装置の詳細は知らないが、地磁気が動力源ではないか。科学では説明がつかないこともある」との事。
  15. 公正取引委員会
  16. 景表法の対象外。経産局の担当では?との事
  17. 経済産業局
  18. 不当競争防止法で該当しそうだが取締りは警察へ、との事
  19. 法テラス
  20. 地方弁護士会を紹介してくれるとのこと
  21. 地方弁護士会
  22. 無料相談で訪問。「どうしたら良いか分からない、適任者の紹介もできない」との事
  23. 市内 某マンション管理会社
  24. 知り合いのツテで電話連絡。
    市内に「入れたけど効果がなかった」というマンションと、「売り込みを受けたが怪しいので却下した」というマンションがあるとの情報。
    連絡してもらえるように要請中
  25. 某私立大学 教員(追記)
  26. 掲載許可をもらっていないので氏名割愛。本ページ経由で連絡をいただきました。
    「この装置は水質に影響を与えない」と、一般の方にも分かるよう噛み砕いた説明文をいただきました。
  27. 地方新聞社(追記)
  28. 地方新聞に「NMR更生機」を勧める記事が掲載されました。
    この問題で協力してくれている方が記者に電話したところ、「金属を透過する電波もある。自由電子が発生することを"専門家"に確認した」との回答だったそうです。
    マンション問題は当事者同士の争いにすぎませんが、新聞が非科学的な情報を載せてしまうことは社会全体の問題です。
  29. 某商業施設(追記)
  30. 某商業施設に導入の経緯を伺いました。
    「設置した記録はあるが、業者を選定した経緯はない」「そもそも新築なのでサビ水対策は不要」「設置状態や効果を確認したことはない」とのこと。

記事の修正について(追記)

  • 本項は特定の商品の効果について言及するものではありません。
    ESRという用語が正しいかどうかだけが論点です。
  • 本項では当初、個人名・役職名の取り扱いに無頓着でした。誠に申し訳ありません。個人を特定する情報は削除し、組織・活動については都度判断とします
  • 上記の他にも一部表記を訂正しています。一般的には編集前後を参照できるようにすべきですが、技術力、時間の都合で編集後のみ掲載としました。ご容赦ください

質問と回答(追記)

  • マンション自治の問題は話し合いで解決するべきでは?
  • 私も当初そのように考えていました。ご近所さんとの井戸端会議で話題に出し、1名が「私が役員と話してくる」と出かけたようです。
    数週間後に結果を聞くと、装置の素晴らしさを延々と語られてしまいました。いわゆる闇落ちでしょうか。
    その方曰く「装置は水が流れることを前提にしている。空き部屋でも蛇口から水を出し続けることで効果があるのではないか?」とのこと。
    無人の部屋の台所や風呂や洗面台で延々と水を流し続ける・・・?
    もはや正常な判断力があるとは思えません。背筋が凍りました。
    このような出来事が他にも起きたため、気軽に相談して回ることができなくなってしまいました
  • 教授の見解とやらを住民に見せればよいのでは?
  • 業者と学者の両方が「科学である」と主張しているので、どちらの言い分が正しいか判断できないという住民が圧倒的多数でした。
    「反対派」になってくれた人も「先生の説明は全くわからないが〜」という前置きで、契約や空き部屋問題での反対ということのようです。
  • 役所に相談しても問題は解決しないのでは?
  • 装置を買ってしまったとしても、装置に何らかの指導が入ったら「疑似科学に手を出した」として問題を表面化することができます。(購入担当に賠償責任・・・やりたくないですが)
  • そうは言っても多数決には従うべきでは?
  • その通りです。住民の皆さんが「疑似科学である。リスクがある」と承知した上で購入するのなら反対しません。
    しかし今回、効果や測定方法の不透明さ、空き家対策などの「リスク」を隠したまま議決が行われることは多数決以前の問題です
  • 役員はとても大変な作業です。参加もせずに文句を言うのは間違い
  • 役員は持ち回りです。自治会活動を普段どれだけ頑張っていても、自分が役員でない年に「超科学装置」を購入されることは避けられません。
  • 科学で全てが解決されるわけではない
  • 非科学=悪という考えではありません。私は初詣でおみくじを買いますし、起工式の地鎮祭は意味があると思っています。
    対価に見合う面白さがあり、科学と非科学の境界線が明確であれば良いという考えです。
    現代科学を根底から覆す技術を、何の実証もなく「事実である」と主張することは倫理として許されません。
  • 購入に法的な縛りを入れたら良いのでは?
  • 「効果がなければ返金という文言の厳格化」「装置が疑似科学だとわかった場合の責任を明確化する」などのアドバイスをいただきます。
    そのような「追加の文言」を入れさせるためには「装置が疑似科学である」と認めさせることが前提になり、循環論法になってしまいます。つまり無理でした。
  • 疑似科学を購入するような役員は罷免要求しては?
  • 賛同する住民を集めるためには、まず「装置が疑似科学である」と認めてもらう必要があります。そうなったら罷免しなくても購入が否決されるはずで、本末転倒です。つまり無理でした。