既に勝ち越しを決めている再十両2場所目で西十両5枚目の豊ノ島(35=時津風)が、再入幕に前進する9勝目(4敗)を挙げた。
「オジさんだからね、疲れちゃうよ」。開口一番、苦笑いを浮かべたが「勝ったからいいでしょ」とかみつぶしていた苦虫は、すぐに消えていた。
それも当然。1日2番を取った。最初の取組は、左をのぞかせながら出足をきかせて一気の攻め。向正面に押し切ったかに見えたが、体を預けた時、ギリギリまで我慢した右手が土俵に着いた。その時、相手の剣翔(27=追手風)も右足を大きく踏み越し、宙に浮いていた。その右足が土俵外に着くのと、豊ノ島の右手が着くのが、ほぼ同時。軍配は豊ノ島に上がったが物言いがつき「攻め込んでいる分、どうかなと思ったけど、相手の(左)足も残っていたし、もう一丁かな」と案じていた予感どおり、協議の結果は取り直しとなった。
その一番は文句なしの快勝。踏み込んで右をのぞかせると、こじ入れようとしていた右も巻き返す形で、得意のもろ差し。休まず十分に腰を落とし、万全の体勢で寄り切った。
「オジさんだから」の言葉は口癖になったが、体力的な衰えは全く感じられない。自分でも「勝手に自分にはスタミナはないな、とおもっていたけど、今日なんかも(取り直しの一番で)相手の方が息が上がっている感じがしたし、自分は冷静に淡々と(仕切っていた)」と元気印を強調する。前日は敗れて部屋に戻ると、稽古まわしを締め体を動かした。「自分に納得したかったからね。『これだけやってるんだから大丈夫』と自分に言い聞かせる意味でも」と気分転換も兼ねた。老け込むのは、まだまだ当分先の話。単独トップの志摩ノ海が敗れ2敗になったため、石浦、千代丸とともに2差の豊ノ島にも、わずかながら逆転優勝の可能性が残るが、それは視界に入らない。まずは残り2番に、過去十両出場6場所で5場所達成している2ケタ勝利を目指す。