今日は「歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み(前編)」です。
幅が広く、かつ例年よく出題される分野なので、しっかり身につけておきましょう!
※出題形式の都合上、解答方法を変更している問題があります。ご了承ください。
解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててくださいね。
歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み(前編)
歯と口腔の健康に関する総論、う蝕の予防やその他疾患の予防についてを出題します。
解説
解答と解説です。
Hirschfeldの清掃不可能部位はどれか
答え:小窩裂溝
Hirschfeldの3部位では、唾液による洗浄効果や咀嚼・発音による歯の接触などの自浄作用によって清掃可能な自浄部位(前歯切縁、犬歯尖頭、頬舌面豊隆部)、ブラッシングや歯間清掃によって清掃可能な部位(隣接面、咬合面、歯頸部)、清掃不可能部位(小窩裂溝)に分けられる。
(第27回 午後16)
両唇音の組み合わせで正しいものはどれか
答え:パ・マ
両唇音とは上下の唇を接触、または接近させて発する音のことで「パ」行、「バ」行、「マ」行、「フ」「ワ」がこれにあたる。
「タ」と「ラ」はともに歯茎音であるが、「タ」は舌突部が口蓋前方部に触れることで発せられる無声の破裂音となり、「ラ」は舌突部が口蓋中央部に接触し、粘膜を弾いて発する有声の弾音とされる。
(第27回 午前91)
口腔の付着物・沈着物で正しい組み合わせはどれか
a.歯石の主成分はリン酸カルシウムである
b.色素沈着は外来性と歯質内に着色するものがある
c.歯垢は細菌と食物残渣からなる層状の構造物である
d.ペリクルは口腔粘膜に形成される透明な薄膜である
答え:a,b
口腔内には、さまざまな付着物・沈着物が存在し、これらは歯と口腔の健康維持に大きな影響を与える。
歯石の主成分はリン酸カルシウムである。
色素沈着は、タバコのタールやコーヒー、紅茶などの飲食物などが原因の外来性色素沈着と歯髄病変、テトラサイクリン系抗菌薬、歯の形成不全などが原因で歯質内に着色するものがある。
歯垢(プラーク)は、歯の表面に付着する主に細菌からなる構造物である。
ぺクリル(獲得被膜)は、歯面に唾液成分中の糖タンパクが直接付着することによって形成される有機性の薄膜である。
(第27回 午前64)
不溶性グルカンを合成するのはどれか
答え:グルコシルトランスフェラーゼ
ミュータンスレンサ球菌はショ糖からグルカンおよびフルクタンを菌体外に産生する。
グルカンは、グルコシルトランスフェラーゼという酵素によってショ糖のグルコース分子からグルコースが多重結合して合成され、フルクタンは、フルクトシルトランスフェラーゼの反応によりフルクトースから生成される。
不溶性グルカン(ムタン)は、粘着性に富み、その物質を介して自身の菌体やほかの菌体を歯面に強固に固着させるため、う蝕誘発性との関連が高いとされている。
インベルターゼは、ショ糖を構成するブドウ糖と果糖に分解することにより、転化糖を作る酵素であり、デキストラナーゼは歯磨き類に含まれるプラーク分解酵素で、薬用成分の1つである。
(第27回 午後18)
舌苔が付着しやすい部位はどれか
答え:①
舌苔は微生物、剥落角化上皮、唾液成分などで構成され、舌表面の糸状乳頭に付着する。
その付着量や色調は個人差が大きく、口腔や全身の健康状態によって左右される。
特に舌運動や自浄作用が働きにくい舌根部に付着しやすい。
(第27回 午前16)
粉歯磨き、練歯磨き、液状歯磨き及び液体歯磨きの代表的な成分を図に示す。
練歯磨きはどれか
答え:③
歯磨剤の形状は、基本成分の成分の割合によって、粉歯磨き、練歯磨き、液状歯磨き、液体歯磨きに分類される。
歯磨剤の基本成分は、清掃剤(研磨剤)、湿潤剤、発泡剤、粘結剤、香味剤、保存剤からなる。
粉歯磨きは90%以上が研磨剤で湿潤剤は含まない(グラフ④)。
一方、液体歯磨きは、研磨剤を含まず、湿潤剤やそのほかの基本成分、水を多く含んでいる(グラフ①)。
液状歯磨きは、研磨剤より湿潤剤の含有割合が高い(グラフ②)。
練歯磨きは、湿潤剤より研磨剤の成分を多く含む(グラフ③)。
(第27回 午前17)
う蝕発症の宿主要因はどれか、正しい組み合わせを選べ
a.歯列不正
b.唾液緩衝能
c.含糖食品摂取頻度
d.ミュータンスレンサ球菌数
答え:a,b
Keyesによるう蝕の発生要因では、個体(歯と宿主)、病原(口腔細菌)、環境(発酵性糖質)の3つの要因が作用した結果としてう蝕が発症するとしている。
宿主要因としては、年齢や性別のほか、歯の形態や歯列、歯質、唾液緩衝能や唾液分泌量といった唾液に関する因子があげられる。
口腔細菌としてはう蝕の主な原因であるミュータンスレンサ球菌があげられ、環境要因としては、砂糖を代表とする発酵性糖質があげられる。
含糖食品(砂糖を含む食品)の摂取頻度が高いほどう蝕のリスクが高くなる。
また、間食として含糖食品を摂取すると、食事とともに摂取するよりもう蝕発症率が高くなる。
(第27回 午前19)
根面う蝕の特徴はどれか、正しい組み合わせを選べ
a.環状に拡大する
b.歯肉退縮を伴う
c.穿通性に進行する
d.う蝕円錐を形成する
答え:a,b
根面う蝕は、生理的ないし病的な歯肉の退縮によって露出した歯根面歯頸部に生じるう蝕である。
露出した歯根面に沿って進行するため、環状に拡大し、一般には病変の進行速度が遅い。
う窩を形成せずに脱灰と軟化が広範囲に拡大していることが多い。
穿通性う蝕は、急性う蝕にみられ、歯髄に向かって細く深く拡大する。
う蝕円錐は、う蝕がエナメル小柱あるいは象牙細管の走行によって円錐状に進行する。
小窩裂溝部では、円錐の底面がエナメル象牙境に向かうのに対し、隣接面などの平滑面では、頂点がエナメル象牙境に向かうことが多い。
(第27回 午前42)
フッ化物歯面塗布に用いるのはどれか
答え:NaF
フッ化物歯面塗布に用いるのは、NaF(2%フッ化ナトリウム溶液、リン酸酸性フッ化ナトリウム溶液)とSnF₂(フッ化第一スズ溶液)で、う蝕抑制効果は、永久歯で20~40%とされている。HF(フッ化水素)は、セラミックス材料の表面処理などに用い、口腔内への使用は禁忌である。
CaF₂(フッ化カルシウム)は、水道水のフッ化物添加に用いられる。
Ca₁₀(PO₄)₆F₂は、歯質の主成分であるヒドロキシアパタイト(HA)がフッ化物に触れることで生じる結晶であり、歯の耐酸性を向上させる。
(第27回 午前18)
口臭の原因となる揮発性硫化物はどれか、正しい組み合わせを選べ
a.アセトン
b.アセトアルデヒド
c.メチルメルカプタン
d.ジメチルサルファイド
答え:c,d
口臭の主要な原因物質は腐敗臭をもたらす揮発性硫化物である。
揮発性硫化物は、ジメチルサルファイド(磯のにおいのような腐敗臭)、硫化水素(卵の腐敗臭)、メチルメルカプタン(野菜の腐敗臭)であり、唾液、剥離上皮細胞、歯肉溝浸出液などに含まれる含硫アミノ酸やタンパク質が口腔内細菌によって分解されることによって産生される。
そのほか、口腔から検出される化合物には、糖尿病の進行により糖の代わりに脂肪が代謝されることによって生じるアセトン、アルコールが体内で分解されることで生じるアセトアルデヒドなどがあるが、揮発性硫化物以外は嗅覚閾値よりはるかに低濃度であるため、単独では口臭の原因とはならず、揮発性硫化物に付加されると、においが増強される。
(第27回 午後19)