今日は「歯科衛生士概論と、臨床歯科医学(前編)」です。
画像の問題が多めになっています。
問題文をよく読んで答えるようにしましょう!
※出題形式の都合上、解答方法を変更している問題があります。ご了承ください。
解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててくださいね。
歯科衛生士概論と臨床歯科医学(前編)
ここでは、歯科衛生士概論と、臨床歯科医学の中の臨床歯科総論、歯・歯髄・歯周組織の疾患と治療について出題します。
解説
今日の解答と解説です。
写真も改めてよく見ておきましょう。
歯科衛生士の業務で正しいのはどれか
答え:仮封材を除去する
歯科衛生士の業務は、歯科予防処置、歯科診療補助、歯科保健指導と歯科衛生士法で規定されている。
仮封材の除去は、相対的歯科医行為で歯科診療補助にあたり、歯科医師だけでなく、歯科衛生士も行える。
インレーの装着、主訴を聞き取り診療録への記入は、歯科医師が行う絶対的歯科医行為である。
エックス線の照射は、診療放射線技師法で診療放射線技師、医師、歯科医師の業務であると規定しており、歯科衛生士が行うことは認められていない。
(第27回 午後31)
歯科診療所において、歯科衛生士が担うことができないのはどれか
答え:歯科診療所の管理者
歯科診療所を含め、すべての医療機関における安全管理体制の確保は、医療法が規定しており、歯科診療所の管理者は、歯科医師が役割を担うとされ、歯科衛生士は役割を担うことができない。
医薬品安全管理責任者、医療機器安全管理者、医療安全管理者は、2007(平成19)年4月に「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法の一部を改正する法律」が施行され、常勤の歯科医師に加え、常勤の歯科衛生士も役割を担うことになった。
特別管理産業廃棄物管理責任者は、環境省の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」で規定しており、歯科医師、歯科衛生士は役割を担う有資格者として明記されている。
(第27回 午前34)
83歳の男性。上顎右側第一小臼歯の疼痛を主訴として来院した。
化膿性歯髄炎と診断され、抜髄処置を行うこととした。
患者は多発性脳梗塞の影響で体位の保持が困難である。
処置中の写真を別に示す。矢印で示す器具の目的はどれか。
答え:誤飲防止
写真では根管切削用具として把持している指がチェーンでつながれている様子がわかる。
脳梗塞は脳動脈の狭窄、閉塞が原因で動脈が流れる領域に虚血部分ができ脳組織が壊死に至る。
その結果、脳の神経細胞の一部が障害を受けその部分の機能が失われる。
上肢下肢の麻痺の発現で座位保持が困難になる場合もある。
嚥下障害がみられる場合は歯科治療中に小器具が落下した場合、誤飲。誤嚥の危険を避けるため注意が必要であるが、仰臥位での診療では特に小器具の落下防止の対策を講じる。
(第27回 午後59)
ビスホスホネート系薬物が投与されている可能性がある疾患はどれか
答え:骨粗鬆症
ビスホスホネート(BP)は、破骨細胞に作用する骨吸収抑制薬で、骨粗鬆症、多発性骨髄腫による骨病変や乳がん、前立腺がんなどの骨転移により骨吸収を抑制するための治療に使用されている。
2003年に米国でBP治療により難治性の顎骨壊死(BRONJ)が発生することが報告された。
BP製剤の添付文書には顎骨壊死・顎骨骨髄炎に関して「投与にあたっては患者に対し適切な歯科受診を受け、必要に応じて抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置を投与前に済ませるよう指示するとともに、投与中は歯科において口腔内管理を受け、抜歯等の侵襲的な処置はできる限り避ける」等記載がある。
近年はBP製剤以外に、骨吸収抑制作用を示す薬剤により顎骨壊死発生も認められていることから、総称して、骨吸収薬関連顎骨壊死(Anti-resorptive agents-relate osteonecrosis of the jaw;ARONJ)の名称が使用されている。
また、顎骨壊死をきたす薬剤全体を含めて薬物関連顎骨壊死(Medication-relate osteonecrosis of the jaw;MRONJ)ともよばれている。
心筋梗塞では抗凝固薬、高血圧症では降圧薬、閉塞性肺炎(慢性)では気管支拡張薬が主として使用されている。
(第27回 午前50)
写真の器具を使用する部位はどれか、正しい組み合わせをえらべ
a.16歯根部頬側
b.27歯根部口蓋
c.34歯根部頬側
d.46歯根部舌側
答え:a,d
写真の器具はファーケーションプローブ(根分岐部用プローブ)である。
ファーケーションプローブは、複根歯(上下顎大臼歯、上顎小臼歯)における根分岐部病変の有無と破壊の程度を診査するために用いる。
下記写真にて示すように、解剖学的に上下顎第一大臼歯と第二大臼歯を比較すると、第二大臼歯は第一大臼歯より歯根の離開度が小さく根が癒合している場合が多い。したがって、16(上顎右側第一臼歯)歯根部頬側と46(下顎右側第一大臼歯)歯根部舌側はファーケーションプローブで診査する。
また、27(上顎左側第二大臼歯)歯根部口蓋側は歯根の離開度が小さいためファーケーションプローブではなく、歯周プローブで測定する。
34(下顎左側第一小臼歯)歯根部頬側は単根であるため歯周プローブで測定する。
(第27回 午前67)
5歳の男児。下顎左側第二乳臼歯のう蝕治療のため保護者と来院した。
う蝕象牙質の除去中に露髄がみられたため、生活歯髄切断法を行うことになった。
歯髄切断後に貼付するのはどれか。
答え:水酸化カルシウム
乳歯の生活歯髄切断法は、炎症が歯冠部歯髄に限局している場合に、歯冠部歯髄を除去することで根部歯髄を正常に維持したまま封鎖することにより、生理的歯根吸収と後継永久歯との交換を期待する方法である。
設問の状況では、う蝕象牙質除去中に露髄がみられたことから、生活歯髄切断法の適応と考えられる。
歯髄切断後は切断面にデンティンブリッジ(象牙質橋:切断歯髄面を覆う新生象牙質)の形成を促進し、根部歯髄を正常に維持することを目的として水酸化カルシウム製剤が応用される。
ホルマリンクレゾールはタンパク凝固作用により歯髄の凝固壊死をもたらす。
グラスアイオノマーセメントは歯質接着性を有し、歯髄に対して比較的無刺激性でありフッ素徐放性により二次う蝕の抑制が期待できることから、形成修復材、裏層材、合着材および小窩裂填塞材として応用される。
酸化亜鉛ユージノールセメントは歯髄鎮痛・鎮静、直接歯髄覆罩、根管充填、仮封などに用いる。
(第27回 午後107)
根管治療で単一で仮封に用いる材料に適していないのはどれか
答え:テンポラリーストッピング
仮封材には水硬性仮封材、テンポラリーストッピング、酸化亜鉛ユージノールセメント、サンダラックバーニッシュがある。
水硬性仮封材は水酸化カルシウムを成分とし、パテ状で唾液の水分で硬化し、封鎖性は良好である。
テンポラリーストッピングはガッタパーチャを成分とする熱可塑性の材料で、加熱によって軟化し充填する。
封鎖性に乏しく、単独では使用せず、他の仮封材と併用する。
酸化亜鉛ユージノールセメントは硬めに練和して充填する。
封鎖性は良好であるが、ユージノールによる刺激性があり、味覚異常を起こしやすい。
サンダラックバーニッシュは粘性の強い樹脂製の材料で、急性可能性根尖性歯周炎など、排膿が持続する場合に使用される。
グラスアイオノマーセメントおよびポリカルボキシレートセメントは合着材であり、封鎖性は良好である。
グラスアイオノマーセメントはフルオロアルミノシリケートガラスの粉末とポリカルボン酸水溶液を練和して硬化する。
ポリカルボキシレートセメントは酸化亜鉛を主成分とする粉末とポリカルボン酸水溶液を練和して硬化する。
(第27回 午前40)
48歳の女性。歯髄の腫脹、発赤および歯の離開を主訴として来院した。
数年前より自覚していたが放置していたという。口唇の乾燥を認める。
プロービング深さは全額的に4~5mmであり、動揺は認めない。
初診時の口腔内写真を示す(ミラー像)。考えられる対応はどれか。
答え:オーラルスクリーン装着
写真は上顎の口腔内写真である。
口蓋側歯肉にはテンションリッジ(堤状隆起)がみられる。
テンションリッジは、口呼吸の患者にみられる口蓋側歯肉の堤状の腫脹で、その内側の歯頸部歯肉には強い炎症症状がみられる。
口唇の乾燥がみられることから口呼吸であることがわかる。
口呼吸の対応としては、原因に応じて矯正治療、口唇閉鎖訓練、オーラルスクリーンによって症状の改善を図る。矯正治療は炎症の消退後に行う。
動揺はみられないため、暫間固定は必要ない。
ナイトガードはブラキシズムに対して用いる装置であり、テンションリッジには適応しない。
(第27回 午前44)
19歳の女性。ブラッシング時の出血を主訴として来院した。
けいれん発作があるため医師からの処方薬を服用しているという。
初診時の口腔内写真を示す。原因と考えられる服用薬はどれか。
答え:フェニトイン
19歳の女性は、けいれん発作があるため処方薬を服用している。
写真は歯間乳頭部および辺縁歯肉に歯肉増殖が認められる。
歯肉増殖を起こすとされる薬には、フェニトイン、ニフェジピン、シクロスポリンがあげられるが、設問の状況では「けいれん発作がある」ため、抗てんかん薬(抗けいれん薬)であるフェニトインを服用している。
ニフェジピンは狭心症治療薬・心筋梗塞治療薬であり、カルシウム拮抗薬である。
カルバマゼピンも抗てんかん薬であるが、歯肉増殖は起こらない。
シクロスポリンは免疫抑制薬である。
(第27回 午前61)
妊娠期の口腔に多くみられるのはどれか、正しい組み合わせをえらべ
a.悪阻による口腔清掃不良
b.妊娠初期のアレルギー性歯肉炎
c.妊娠高血圧症候群による粘膜皮膚病変
d.女性ホルモンのバランスの変化に関連する歯肉炎
答え:a,d
妊娠期は、一般的にう蝕や歯周病が発症したり、すでに存在している疾患が再発・増悪しやすくなる。
また、生理現象であるつわりの症状が悪化すると妊娠悪阻により、食事や感触の摂取回数が増加する傾向にある。
そのため口腔清掃をできないことがあり、口腔衛生不良となることが多い。
さらに、妊娠期間中は女性ホルモンの分泌が活発となり、女性ホルモンによって発育が促進される菌種(Prevotella intermedia)が増加し、妊娠性歯肉炎を引き起こす。
アレルギー性歯肉炎は妊娠初期とは関係なく、金属やレジンなどの修復物や補綴装置の辺縁にアレルギー反応がみられることである。
妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降、分娩後12週までに高血圧の症状がみられる場合か高血圧にタンパク尿を伴う症状のいずれかが現れることで、粘膜皮膚病変とは関係ない。
(第27回 午前65)