今日は「臨床歯科医学(後編)」です。

画像の問題、文章を読む問題が多めになっています。
問題文をよく読んで答えるようにしましょう!

※出題形式の都合上、解答方法を変更している問題があります。ご了承ください。

解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててくださいね。

臨床歯科医学(後編)

ここでは歯の欠損・不正咬合・小児や高齢者の理解と歯科治療について出題します。

解説

解答と解説です。
写真も改めてよく見ておきましょう。

縮合型シリコーンラバー印象材と比較して付加型シリコーンラバー印象材の特徴はどれか

答え:寸法変化が小さい

シリコーンラバー印象材には縮合型と付加型がある。
縮合型は硬化反応の調節ができ、弾性ひずみが大きく、口腔から撤去しやすいという利点はあるが、硬化時にアルコールや水素が生成され、それが放出される縮合反応を利用しているため、経時的寸法変化が大きく、取り扱いが難しい。
付加型は付加重合反応を利用しており、寸法安定性がきわめて優れているため、現在は付加型を利用することが多い。
ひずみとは物体に外力を加えたときの変形の割合であり、外力がなくなれば、ひずみもなくなる性質を弾性といい、この時戻った分のひずみを弾性ひずみという。
また、付加型は温度が高くなると速く硬化するため、室温が高い状況で保管されていると硬化が促進される。

(第27回 午後48)

全部床義歯と部分床義歯に共通した構成要素はどれか、正しい組み合わせをえらべ

a.人工歯
b.連結子
c.義歯床
d.支台装置

答え:a,c

全部床義歯とは無菌顎症例に対する人工歯と義歯床からなる義歯である。
部分床義歯は少数歯欠損から1歯残存までの欠損症例に対する部分的な義歯をいう。
部分床義歯は人工歯、義歯床、支台装置(維持装置)、連結子(連結装置)から構成される。
したがって、共通した構成要素は人工歯と義歯床である。
部分床義歯の支台装置にはクラスプやアタッチメントがあり、連結子には大連結子(リンガルバーやパラタルバーなど)と小連結子(レストと大連結子を連結する装置など)がある。

(第27回 午前46)

次の文を読み問3、4に答えよ。

80歳男性。上顎左側犬歯相当部の顎堤粘膜の疼痛を主訴として来院した。
7年前に上下顎全部床義歯を製作し、2年前から徐々に粘膜部が増殖してきたが、疼痛を認めなかったため、義歯は使用し続けていた。
最近になり、食事時に疼痛を認めるようになったという。
義歯性繊維症と診断された。
問3,4写真

【問3】初診時の口腔内写真(ミラー像)について、丸印で示した患部の原因として考えられるのはどれか。

答え:義歯床縁の不良

写真はミラー像のため左右が逆に示されている。
丸印で示された部位は歯肉頬(唇)移行部粘膜の増殖を示している。
義歯性繊維症は不適合な義歯の長期使用により顎堤粘膜への機械的刺激が持続的に加わった結果、粘膜に炎症反応性の増殖が生じたものである。
7年前に義歯を製作し、2年前から粘膜部の増殖を認めたことと疼痛を認めなかったことから義歯性繊維症と診断された。
骨鋭縁が原因であれば疼痛を生じる。
丸印で示された部位は、通常レジン床が接触するため、床用材料が原因であれば吸水性により不潔となり義歯性口内炎が生じる。
また、人工歯排列の不良であれば、義歯装着後すぐに何らかの症状が生じる。

(第27回 午前47)

【問4】新義歯製作にあたり、前処置として考えられるのはどれか

答え:粘膜調整

新義歯製作における前処置は次に述べるような状態で義歯製作に支障をきたす場合に行う。
(1)顎堤の強いアンダーカットや歯槽骨の鋭縁、大きな上顎結節、下顎隆起、口蓋隆起
(2)義歯床下粘膜の異常(義歯性繊維症、フラビーガム、発赤、圧痕など)
(3)使用中の義歯の異常(咬合関係不良など)

本症例では、義歯性繊維症を認めることから、これを改善するために、義歯床縁の携帯修整とティッシュコンディショナーを用いた粘膜調整(粘膜面全体に均等な圧が加わるようにする)を行う。
歯槽骨整形術は、骨隆起など歯槽骨の形態に異常がある場合に行う。
唾液腺マッサージは唾液分泌量の低下の場合に行う。
プラークコントロールは清掃状態不良の際に行う。

(第27回 午前48)

8歳女児。上顎前歯の位置異常を主訴として来院した。
萌出開始時から気になっていたという。初診時の口腔内写真を示す。
上顎右側中切歯の位置異常はどれか。

問5写真

答え:捻転

写真の上顎右側中切歯は、歯列内にあって歯の長軸(歯軸)を中心に90度回転している。
このように、歯軸を中心に回転した状態を捻転という。
転位は、歯列弓内の正常な位置から近遠心あるいは唇(頬)舌方向に位置が変化した状態をいう。
移転は、歯がその臨在歯と入れ替わるように著しく位置を変えた状態をいう。
回転は歯の移動様式で、歯が捻転している場合に歯軸を中心に回転力を加えて歯列弓上に正しく排列させることをいう。

(第27回 午前53)

5歳女児。歯並びが気になることを主訴として来院した。
初診時の口腔内写真を示す。
矢印で示す空隙ができる原因はどれか。

問6写真

答え:顎骨の成長発育

口腔内写真に示された下顎両側乳中切歯遠心の空隙は発育空隙である。
発育空隙は顎骨の側方成長により生じる。
乳歯列期の霊長空隙以外の空隙をすべて発育空隙とよぶため、前歯交換期に顎骨の成長により生じた空隙を二次空隙として区別することもある。
口腔内写真から、乳歯はすべて存在しており、先天欠如はみられない。
対顎乳犬歯が咬合する場所は霊長空隙である。
下唇小帯や舌小帯の異常発育は正中離開の原因となる。

(第27回 午後57)

4歳男児。う蝕の治療を希望して来院した。
上顎乳前歯の多歯面う蝕と診断され、コンポジットレジン冠修復を行うこととした。
治療に用いる器材(写真A)と使用器材に対して処理した写真(写真B)を示す。
この処理の目的として正しい組み合わせを選べ。

問7写真a,b

a.切縁の位置確認
b.気泡の混入防止
c.試適時の落下防止
d.余剰レジンの流出

答え:b,d

写真に示された器材はコンポジットレジン冠修復に用いられるポリカーボネート冠である。
ポリカーボネート冠は乳前歯の形態を有しており、多歯面う蝕などで歯間崩壊した乳歯の解剖学的形態の回復に応用される。
写真Aの状態のポリカーボネート冠の辺縁を金冠バサミで切断し、支台歯に適合させる。
支台歯形成・歯面処理後、ポリカーボネート冠内部にレジンを充填し支台歯に圧接・光重合することで、レジンによる全部被覆を行う。
ポリカーボネート冠内部に遠心隅角部を探針で穿孔する(写真B)ことで、支台歯への圧接時に余剰レジンの流出口ができるので、気泡の混入が防止される。
切縁の位置確認はマージン調整時に行う。Bの処置を施しても落下防止の絹糸などを通すことはない。

(第27回 午後58)

75歳の女性。1年前の脳梗塞により右片麻痺があり車椅子を利用している。
今回、認知症と診断された。認知症の症状はまだらである。
考えられるのはどれか。

答え:血管性認知症

主な認知症には血管性、前頭側頭型、レビー小体型、アルツハイマー型があげられる。
血管性認知症は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害に引き続き現れ、脳の損傷部位、程度、血流の状態変化によって機能が保たれている部分とそうでない部分があり、症状がまだらに出る。
脳の障害を受けた部位によっては運動障害が起きる。前頭側頭型認知症では認知障害や失語が現れ特徴的な身体症状はみられない。
レビー小体型認知症は幻視やパーキンソン症状を特徴とし、記憶などの認知機能に日変、週変がみられる。
アルツハイマー型認知症では認知機能に変動はなく徐々に進行する。
記憶障害から見当識障害へと進み、さらに進むと失行や失語、失認が起こる。

(第27回 午前58)

80歳男性。2週間前に下顎全部床義歯を紛失した。
上顎には14本の歯を有し、普段の食事の飲み込みには問題ないという。
摂食嚥下の過程で影響がある時期はどれか。

答え:準備期

80歳の男性は、下顎全部床義歯の紛失により咀嚼による食塊形成がしにくいと推測されることから準備期に影響があるといえる。
摂食嚥下の過程では、食物を認知し口に入れるまでの段階を先行期、食物を口唇で取り入れ咀嚼し食塊を形成する段階を準備期、食塊を口腔から咽頭まで移送する段階を口腔期、嚥下反射により食塊を咽頭から食堂へ移送する段階を咽頭期、食道の蠕動運動により食塊を食道から胃へ移送する段階を食道期とよぶ。

(第27回 午後91)

76歳男性。食後よくむせることを主訴として来院した。
1年前に脳血管疾患を発症したという。摂食嚥下機能障害と診断され、リハビリテーションをおこなうことになった。
適切な代償的アプローチはどれか。

答え:摂食時の姿勢は45度仰臥位をとる

脳血管疾患によって脳の一部に損傷が起こり、神経・筋の異常から機能的な障害がみられる。
口腔や咽頭、食道などの摂食嚥下に必要な器官の構造が正常であってもそれらの器官の運動に問題があるため、嚥下に障害が起こる。
食後のむせは誤嚥の重要な兆候である。
リハビリテーションにおけるアプローチは機能そのものへのアプローチと代償的アプローチに分けられる。
前者は麻痺など病気の結果として生じ身体の機能の障害を回復させるためのアプローチで、口腔周囲筋などの強化訓練である。
食物形態を噛みごたえのあるものにすることも、咬合力向上のための方法である。
代償的アプローチは、残った機能を活用したり、補助具を活用することで行う方法である。
嚥下障害に対して摂食時の体位を適切な角度にすることで危険なく嚥下をすることができる。
コップの縁を切ることにより嚥下時の頸部の過伸展は防げるが、これは患者へのリハビリテーションではなく、患者を取り巻く環境の改善にあたる。

(第27回 午後92)