今日は「歯科診療補助論(中編)」です。
歯科診療補助論の中でも、保存治療時、補綴治療時、口腔外科治療時、矯正歯科治療時などの診療補助について出題しています。
※出題形式の都合上、解答方法を変更している問題があります。ご了承ください。
解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててくださいね。
歯科診療補助論(中編)
ここでは、歯科診療補助論の分野について出題します。
解説
解答と解説です。
文章問題が多いので、実際に実習であったことなども思い出しながら復習してみてください!
45歳の男性。下顎第一大臼歯の全部金属冠の印象採得を行うことになった。
圧排糸を用いて歯肉排除を行うよう歯科医師から指示された。
正しい組み合わせを選べ。
a.支台歯の歯頸部全周より数mm短いものを使用する
b.硫酸アルミニウムを浸透させる
c.ジンパッカーで歯肉溝に挿入する
d.探針で取り出す
答え:b,c
45歳の男性は、圧排糸を用いた歯肉排除を行うところである。
歯肉排除は、歯肉縁下の支台歯形成や印象採得のために辺縁歯肉を一時的に排除して作業野を明示させるとともに操作を容易にするために行う。
圧排糸を用いる歯肉排除には、硫酸アルミニウムなどの血管収斂薬やアドレナリン(エピネフリン)等の血管収縮薬をしみこませた錦糸がよく用いられる。
歯肉排除は支台歯の歯頸部全周よりも数mm長く準備した圧排糸を、ジンパッカーで歯肉溝内に挿入して行う。
圧排糸は印象採得直前にピンセットで辺縁歯肉を刺激しないように取り出す。
(第27回 午前102)
46歳女性。上顎右側小臼歯の変色を主訴として来院した。
5年前にコンポジットレジン修復を受けたという。疼痛は認められない。
初診時の口腔内写真を示す。変色の原因として考えられるのはどれか。
答え:仕上げ研磨の不足
写真はコンポジットレジン充塡の辺縁の着色である。
仕上げ研磨を行うときに、すり合わせが不十分であると非接着面が着色する。
保持形態は、修復物が窩洞から脱落しないように窩洞に与えられた形態で、保持形態の不良は、修復物の脱落に影響する。
窩洞外形は、窩洞の外縁形態を示す外形線のことであり、窩洞外形の不備は二次う蝕を引き起こす。
感染歯質の残存は二次う蝕の発症を招く。
(第27回 午後39)
22歳女性。上顎左側第一小臼歯のう蝕治療を希望して来院した。
修復処置を行い、本日修復物の装着を予定している。
装着前の修復物の写真を示す。合着前に行う処理はどれか。正しい組み合わせを選べ。
a.フッ酸処理
b.サンドブラスト
c.リン酸エッチング
d.イオウ含有プライマー塗布
答え:b,c
写真の修復物は、セラミックもしくはハイブリッドレジンインレーである。
フッ酸はフッ化水素のことで、生体に強い毒性をもつ。
また、イオウ含有プライマーは金属の接着の際に用いる。
合着前に行う歯質の処置としてリン酸エッチング処理を行い、修復物の処置として窩洞接着面にサンドブラスト処理を行う。
(第27回 午前99)
加圧根管充塡時の術式の模式図を示す。矢印で示す器具の目的はどれか。
答え:根尖方向に圧接する
図の矢印は根管用プラガーを示している。
根管用プラガーは、加圧根管充塡の際、充塡材を根管内で根尖方向に充塡、圧接するのに用いる。
スプレッダーを用いてガッタパーチャポイントを側方に圧接することで空間が生まれ、アクセサリーポイントを追加する。
シーラーを塗布するのにはレンツロを用いる。
これは先端が細いらせん状のしなやかな器具で、コントラアングルに装着して使用する。
熱可塑性のガッタパーチャは根管壁に物理的に接着する。
使用方法は加熱器でガッタパーチャを軟化させて、根管内に注入する。
また、シーラーを用いることでガッタパーチャポイントを根管壁に接着させる。
(第27回 午後41)
歯科技工物の写真を示す。治療時に用意するのはどれか、正しい組み合わせを選べ。
a.コンタクトゲージ
b.ワックススパチュラ
c.パラフィンワックス
d.モデリングコンパウンド
答え:b,c
写真は部分床義歯の咬合床である。
咬合床は顎堤粘膜に直接触れるレジン製の基礎床とパラフィンワックスで作られた咬合堤から構成される。
治療は咬合床を用いた咬合採得(顎間関係の記録)を行うが、パラフィンワックスとワックスを軟化させて調整するためのワックススパチュラやアルコールトーチランプなどが必要である。
コンタクトゲージは隣接する歯の接触関係をチェックするのに用いる。
モデリングコンパウンドは熱可塑性の非弾性印象材で無菌顎の粘膜面の加圧印象や辺縁部の筋圧形成に用いられる。
(第27回 午前103)
58歳男性。慢性歯周炎によって上顎右側第二大臼歯の抜歯をすることになり、歯科医師から抜歯鉗子を準備するよう指示があった。
正しい器具を写真から選べ。
答え:④
写真は抜歯鉗子である。抜歯鉗子は、歯頸部の大きさと適合するように嘴部がつくられており、大きさと形態でさまざまな種類がある。
下顎用はほぼ直角の単屈曲、上顎用は複屈曲(前歯用は屈曲のない直線状)である。
また、屈曲のゆるやかな上・下顎兼用鉗子もある。
設問にある上顎右側第二大臼歯の抜歯を行うには、嘴部が複屈曲の右側用を準備する必要がある。
①は下顎前歯用、②は下顎小臼歯用、③は上顎前歯用、④は上顎大臼歯用である。
左右の区別はないが、上顎大臼歯用は例外で、頬側の近心根と遠心根の分岐部に適合するように嘴部先端の内側に爪のような小突起が付いているため、右側用、左側用がある。
(第27回 午後104)
持針器の写真を示す。正しいのはどれか
答え:へガール
写真は持針器である。持針器は先端に縫合針をはさんで固定し、粘膜や皮膚などの縫合処置に使用する。
持針器先端の把持内面には縫合針がずれないようダイヤモンドチップなどが加工されている。
マチュー型とへガール型があり、止血鉗子に似て剪刀と同じ持ち方が可能なほうがへガール型であるため、写真はへガール型の持針器であることがわかる。
ペアンとモスキートは止血鉗子であり、出血している血管あるいは同部の軟組織を挟んで永久止血するための鉗子である。
モスキートはペアンより小さく、それぞれ有鉤と無鉤、直と曲がある。
(第27回 午後105)
伝達麻酔のカートリッジ式注射器について正しい組み合わせを選べ
a.浸潤麻酔に使用できる
b.ハンドルはリング状である
c.プランジャーの先端は平坦である
d.注射針は30G(ゲージ)を使用する
答え:a,b
伝達麻酔は、局所麻酔薬を神経幹に作用させることによってその神経幹に作用させることによってその神経幹の支配領域に麻酔効果を発現する。
少量の局所麻酔で広範囲に長時間の麻酔効果を期待できる。
歯科では下顎孔伝達麻酔の使用頻度が最も高い。
伝達麻酔のカートリッジ式注射器は、ハンドルがリング状でプランジャーの先端はらせん状またはモリ状になっており薬液の血管内誤注を防止するための吸引操作ができるようになっている。
通常、伝達麻酔には25Gまたは27Gの太い注射針が用いられる。
浸潤麻酔のカートリッジ式注射器は、ハンドルとプランジャーの先端が平坦で30Gまたは33Gの細い注射針が用いられるが、一般的な浸潤麻酔法は伝達麻酔のカートリッジ式注射器でも施術することができる。
(第27回 午前104)
17歳男子。動的治療中に装置の調整のために来院した。
矯正装置にアーチワイヤーを装着したときの口腔内写真を別に示す。
矢印の位置でアーチワイヤーを口腔内で切断するのに適している器具はどれか。
答え:ディスタルエンドカッター
写真は、第二大臼歯のバッカルチューブからアーチワイヤーの余剰部分が突出した状態である。
矢印で示された余剰部分を口腔内で切断するには、ディスタルエンドカッターを用いる。
ピンアンドリガチャーカッターは、結紮線やロックピン等の切断に用いる。
ピンアンドリガチャーカッターをアーチワイヤーの切断に用いると、その刃先が損傷してしまう。
ワイヤーカッターは、口腔外でアーチワイヤーや比較的太いワイヤーを切断するのに用いる。
ライトワイヤープライヤーの用途は線屈曲である。ワイヤーカッター付きのライトワイヤープライヤーも存在するが、これを口腔内でアーチワイヤー余剰部分の切断に用いることはない。
(第27回 午後55)
マルチブラケット装置を装着した口腔内写真を示す。下顎のアーチワイヤーの固定に使用しているのはどれか。
答え:エラストメリックモジュール
写真はマルチブラケット装置を装着した口腔内である。
アーチワイヤーの固定には、リガチャーワイヤーを用いる結紮と、エラストメリックモジュールというゴムを用いる場合がある。
エラストメリックモジュールは透明やさまざまな色のものがそろっている。
写真は下顎にピンクのエラストメリックモジュールを使用している。
エラスティックは、顎間固定に用いるゴムリングである。
エラストメリックチェーンはブラケット間に装着して矯正力を発揮するもので、歯間空隙の閉鎖や歯の移動に用いられ、小さなポリウレタン製のゴムが鎖状につながっている。
エラスティックセパレーターは、バンド挿入用のスペース確保時に歯間分離を行うために使用するゴムである。
(第27回 午後106)