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今日は「歯科診療補助論(後編)」です。
歯科診療補助論の中でも、矯正歯科治療時、小児歯科治療時、高齢者歯科治療時、障害者治療時などの診療補助について、また救急救命処置などを出題しています。
※出題形式の都合上、解答方法を変更している問題があります。ご了承ください。
解説はこの記事の、問題の下にありますので、解き終わったら復習に役立ててくださいね。
歯科診療補助論(後編)
ここでは、歯科診療補助論の分野について出題します。
解説
解答と解説です。
10日間お疲れさまでした!
図や問題文もしっかり見返しながら、復習しておきましょう。
小児歯科治療時の行動療法的対応法はどれか、正しい組み合わせを選べ
a.開口の保持
b.モデリング
c.トークンエコノミー
d.ハンドオーバーマウス
答え:b,c
行動療法とは、学習理論に基づいて個人の行動や感情を有用な方向へ変化させようとする療法である。
小児の歯科治療に対する不安や恐怖を軽減して治療に適応できるようにするためにさまざまな行動療法的対応法が用いられている。
モデリング法やトークンエコノミー法はその代表例である。
モデリング法は他社(モデル)が示した模範的な様子を観察させて同じように行動させる方法であり、ほかの小児や兄弟が歯科治療に適応している場面を近くで見学させてから当該小児の治療を開始する等の方法で実施される。
トークンエコノミー法は、治療終了時にシールやおもちゃ等のトークン(代用貨幣)を与えることで、治療が遂行できたことへのご褒美とし、適応行動が増えるように強化する方法である。
治療を嫌がる小児に対して開口器を用いて開口の保持をするのは抑制的対応法である。
ハンドオーバーマウス法は、泣きわめいて治療ができない小児に対して治療に協力させるために行われる抑制的対応法である。
この方法は術者が小児の口を手で押さえて声が出ないようにして、泣きわめいていると治療ができないことや静かにしたら手を離すことなどを説明し、聞き入れることができたら術者は手を離す方法であるが、説明等を理解できない低年齢児や障害児には用いない。
(第27回 午前106)
高齢者の歯科治療時の対応で適切なのはどれか、正しい組み合わせを選べ
a.高い声で話す
b.高齢者のペースに合わせる
c.診療日の気象条件に配慮する
d.非言語的働きかけは少なくする
答え:b,c
高齢者が安心・安全に歯科治療を受けられるよう、心理・身体両面に配慮した対応をとることが重要である。
加齢による聴力の変化や聴覚障害により、高音域が聞き取りにくい。
そのため、マスクを外して目線を合わせ、声のトーンを抑えて低い声でゆっくりとはっきり話す。
その際、むやみに大声で話すことは控える。
そして、周りに妨げるものがないか、介助が必要か、辛そうな表情をしていないかなどに気を配りながら、相手の思考や行動リズムのペースに合わせて対応する。
気象条件によっては来院時間に余裕をもたせたり、体調の変化に対応できるよう配慮する。
また、非言語的働きかけ(手を握る、手を添える、背中をさするなど)により、体温や皮膚などの観察ができ、かつコミュニケーションがうまくとれる場合もある。
(第27回 午後108)
19歳女性。ブラッシング時の出血を主訴として来院した。
けいれん発作があるため医師からの処方薬を服用しているという。
口腔清掃中に全身が硬直する発作が生じ、呼びかけに反応しない。直ちに行うのはどれか、正しい組み合わせを選べ。
a.背板を起こす
b.開口器で咬舌を防ぐ
c.口腔清掃を中止する
d.口腔内の器具をすべて除去する
答え:c,d
「全身が硬直する発作」とはてんかん患者に起こる発作と考えられる。
ほとんどのてんかん発作は数分以内で終わるため、見守るだけでよい。
そのため、全身が硬直している場合、背板を起こすと転倒の危険があるため、避けるべきである。
また、口腔清掃を中止し、歯の外傷や軟組織の外傷を引き起こす可能性のある器具などは口腔内から除去すべきで、開口器の装着は行わない。
ただし、発作が10分以上継続する重積状態になった場合には、バイタルサインを確認し、専門医の処置が必要である。
(第27回 午前62)
聴覚障害を有する患者の対応で適切なのはどれか、正しい組み合わせを選べ
a.筆談の準備をする
b.ジェスチャーを用いる
c.肩に手を置いて誘導する
d.補聴器の音量を最大にする
答え:a,b
聴覚障害者は通常の音声言語によるコミュニケーションが困難となる。
聴覚障害者とのコミュニケーションには、筆談、手話、ジェスチャー(身振り・手振り)等視覚に訴える手段が用いられるが、障害の程度や理解度に適した方法を把握しておくことが大切である。
また、補聴器は周りのすべての音をとらえて増幅するため、切削器具の音が不快感を与えることがあるので、治療中は補聴器の音量を下げるか外すかなどの対応をする。
肩に手を置いて誘導するのは視覚障害者における一般的な誘導法である。
(第27回 午前108)
咬翼法の投影角度を図に示す。正しいのはどれか。
答え:②
咬翼法は、上下顎臼歯部の隣接面う蝕や歯槽骨頂の吸収状態を観察することを目的とした撮影法である。
臼歯部の咬合状態、補綴装置の近遠心的な適合状態、歯石沈着の有無なども観察できる。
フィルムを補助具ではさみ、咬翼部を咬ませフィルムをできるだけ歯に密着させる。
水平的角度の設定では、術者はヘッド(管容器)の真後ろから中心線(主線)を臼歯部に定めて、正放射投影を行う。
垂直的角度の設定は、臼歯部咬合平面に対してやや上方(5~10度)から投影する。
(第27回 午後109)
エックス線写真フィルムの保管で正しい組み合わせを選べ
a.乾燥して保管する
b.ケースを使用する
c.診療録にテープで貼り付ける
d.患者氏名をフィルムに書き込む
答え:a,b
エックス線写真フィルムは診療時に間違いなく提示できるように整理をして管理し、劣化しないように保管することが大切である。
現像後のフィルムを濡れたままにしておくと傷やほこりが付きやすいので、自然乾燥または乾燥機を用いて乾燥して保管する。
また、エックス線写真フィルムはフィルムマウンド(ケース)に保管し、患者氏名や撮影年月日、性別などの情報をフィルムマウンドに記載する。
エックス線写真フィルムを汚してしまうと元に戻らず、重要な情報を損失してしまうので、診療録に直接テープで貼り付けたり、フィルムに直接書き込むことはしない。
(第27回 午前109)
診療前の検査項目と測定値の組合せで異常値を示すのはどれか、正しい組み合わせを選べ
a.SpO₂───────90%
b.脈拍数──────120回/分
c.腋窩温度─────36.9℃
d.収縮期血圧────126mmHg
答え:a,b
診療前の検査項目には、体温、脈拍、血圧、SpO₂があり、バイタルサイン(生命徴候)の1つである。
SpO₂(経皮的動脈血酸素飽和度)は、パルスオキシメータを用い装置の先端にあるプローブで指や耳介をはさみ測定する。
基準値はおおむね96~99%で、95%以下で低酸素症となり、脳などに障害が発生する可能性がある。
脈拍は、ヒトでは心拍数と一致し、通常橈骨動脈で測定する。
年齢によって異なり、新生児や乳幼児は基礎代謝が高いために脈拍数は多く、その後加齢とともに減少する。
脈拍数の基準値は、成人で60~80回/分で、100回/分以上で頻脈、60回/分以下で徐脈という。
体温は、体温計を用いて腋窩(脇の下)で測定するのが一般的である。平均体温は、35.5℃~37.0℃である。
血圧は、血管内の血液が血管壁に及ぼす圧力のことで、心臓が収縮した際の動脈血圧を収縮期血圧、弛緩して心臓が拡張した際の動脈血圧をい拡張期血圧という。
成人における収縮期血圧130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を正常血圧、収縮期血圧140mmHg以上あるいは拡張期血圧90mmHg以下を高血圧としている。
(第27回 午後96)
一次救命措置としてまず行うのはどれか
答え:意識の確認
呼吸停止、心停止とみられる人の救命に、特殊な器具や医療品を用いずに、呼吸と循環をサポートする一連の処置を一次救命処置(BLS:basic life support)という。
緊急時の迅速な119番通報、CPRの開始とAEDによる一次救命処置は、傷病者の社会復帰に大きな影響力をもつ。
歯科衛生士は、一次救命処置に対する知識と技能を身につけておく必要がある。
【BLSの手順】
①反応(意識)を確認する。
②応援を呼び、指示を出して119番通報とAEDの手配をする。
③正常な呼吸を確認する
④気道を確保する
⑤胸骨圧迫をする(心臓マッサージ)
⑥人工呼吸をする
⑦AEDを使用する
⑧傷病者を観察する
(第27回 午後110)
46歳男性。下顎左側第二小臼歯のインレー脱離を主訴として来院した。
局所麻酔後、軟化象牙質の除去中に意識レベルが低下し、顔面蒼白、徐脈および血圧低下を認めた。
適切な対応として正しい組み合わせを選べ。
a.衣服を緩める
b.AEDを装着する
c.深呼吸をすすめる
d.姿勢を半座位にする
答え:a,c
局所麻酔後に意識レベルの低下、顔面蒼白、徐脈(脈拍数の低下)、血圧低下等を認める場合には、まず神経性ショック(血管迷走神経反射)を疑う。
神経性ショックは、脳貧血や疼痛性ショック、デンタルショックなどともよばれる。歯科治療で最も頻度の高い全身的偶発症である。
一般には、歯科治療に対する不安や恐怖を抱いているところに局所麻酔注射などの痛みが加わった時に生じる。
通常は処置を中断して姿勢を水平位で下肢挙上させ、衣服を緩めて酸素吸入もしくは深呼吸をすすめて安静にする。
これらの対応により大部分の神経性ショックは回復する。
AEDを装着するのは心肺停止または心肺停止が切迫している患者である。
(第27回 午前110)
アーチワイヤーをブラケットのスロットに着脱するのに用いるのはどれか
答え:ユーティリティープライヤー
アーチワイヤーは、マルチブラケット装置に用いて、ブラケットなどを介して歯に矯正力を加えるための矯正用線である。
アーチワイヤーの適合・着脱に用いるのはユーティリティープライヤーである。
モスキートフォーセップスはエラストメリックモジュール(ブラケットにアーチワイヤーを固定するゴム)で結紮するときに用いる。
リガチャーインスツルメントはブラケットとアーチワイヤーとを結紮するときに用いる。
リガチャータイイングプライヤーはリガチャーワイヤーでエッジワイズブラケットとアーチワイヤーとを結紮するときに用いる。
(第26回 午後104)