もしも深雪が百合に目覚めたら   作:カボチャ自動販売機
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この作品、書くのが楽しすぎるのはぼくがヤバいのだろうか。そんな風に思った今話。


もしも深雪が百合に目覚めたら3

生徒会長である真由美と話しこんでいたせいなのか、生徒達が真面目なのか、達也が講堂に入った時にはまだ入学式の30分前だというのに、既に席の半分以上が埋まっていた。

 

ややざわついた講堂内を見回し、空席を探すと、席順に法則があることに気がついた。

 

講堂の前半分が一科生。後ろ半分が二科生。

 

学校によっては入学式前にクラス分けを発表してクラス別に並ばせる古風なところもあるものよ、この学校はIDカード交付時にクラスが判明する仕組になっている。IDカードの交付は入学式後に行われることになっているのだから、クラス別に分かれるということもないはずなのだが、新入生の分布はきっちりと区分けされていた。

 

郷に入っては郷に従え。

敢えて逆らうつもりもない達也は、後ろ三分の一辺りの中央に近い空き席を適当に見繕った。

席についてすぐ、二科生の差別、というのが思っていた以上に根深く、それ以上に、最も差別意識が強いのは、差別を受けている者である、ということを実感し思わずため息を吐きたくなった。

 

会式まで後二十分。

 

 

いつまでも『差別』について考えている程、達也は二科生の差別について真剣さを持っていない。

物理的に、通信制限が掛かっており、インターネットにアクセスすることはできないし、何よりマナーとして端末を開くことができないため、達也は椅子に深く座りなおして目を閉じる。

今頃、最後のリハーサルをしているであろう深雪はこんな直後にじたばたするはずもないが、好みの美少女を前にしてきちんと猫を被れているのかは多分に不安だった。今朝の彼女を見るに生徒会メンバーに相当入れ込んでいるのは間違いないからだ。

 

妹を信頼してはいるが、妹の性格もまた理解している。

 

彼女が意外に感情的な人間であることを、達也は知っていた。

 

 

「あの、お隣は空いていますか?」

 

 

目を閉じてはいたが、眠っていたわけではない。やや緊張したような声が近くで聞こえ、目を開く。

声で分かるとおりの、女子生徒の視線は、自分に向けられており、その声が達也に掛けられたものであることは明白だった。

 

「どうぞ」

 

 

特に気にすることもなかったため、愛想よく頷く。

まだ空席は少なくないのに、何故わざわざ見知らぬ男子生徒の隣に座りたがるのかと、一瞬、訝しんだが、ありがとうございます、と頭を下げて腰掛ける少女に続いて三人の少女が腰を下ろすを見て、納得した。

どうやら四人一続きで座れる場所を探していたらしい。

 

 

「あの……私、柴田美月っていいます。よろしくお願いします」

 

「司波達也です、こちらこそよろしく」

 

 

気弱で自己アピールが苦手そうだ、というのが達也の彼女に対する第一印象だったのだが、予想に反して自ら自己紹介をしてきた。

声からして緊張しており、無理をしていると分かった達也は、なるべく柔らかな態度を心掛け、自身も名乗る。

 

 

 

視力矯正治療が普及し、近視が過去の病となりつつある現代ではかなり珍しいメガネ、それも大きな縁無しレンズ。

 

 

――メガネに巨乳、これでドジっ娘だったらパーフェクトですね!

 

 

妹の声による幻聴を聞き流し、達也は美月のメガネに視線を向ける。

現代において、わざわざメガネを使う理由があるとすれば、単なる嗜好か、ファッションか、あるいは――

 

『霊子視覚過敏症』。

 

意図せずに霊子放射光が見える、意識して霊子放射光を見えないようにすることが出来ない、一種の魔力制御不全症だ。

プシオン感受性をコントロールすることで解消されることではあるが、その為の技能は魔法の一分野として確立されているものの、簡単に習得できるようなものではない。そのため、それが出来ない者には技術的な代替手段が提供されている。

その一つが、オーラ・カット・コーティング・レンズだ。

故に、魔法科高校の生徒でメガネを使っている者、となるとその用途を予想することは難しくない。

 

一瞬、嗜好か、ファッションの可能性を疑ったのは、深雪がメガネフェチだからである。

達也にとっては大変に頭が痛くなる問題なのだが、深雪は複数の眼鏡を所持しており、その用途が、自分用ではなく、いつか出会う美少女用という残念な理由であることを知っていた。

眼鏡を眺めて小一時間だらしのない顔で妄想している深雪を目撃したときには、流石の達也も引いた。達也に唯一残された兄妹愛すら超越する深雪の変態行動から、達也は若干眼鏡に恐怖を抱いているのだが、それは己すらまだ理解できてはいない。

美月を見て、その眼鏡に一番最初に目がいったのは、その恐怖心故であるのだ。

 

 

 

「あたしは千葉エリカ。よろしくね、司波君」

 

「こちらこそ」

 

 

明るい栗色の、ミディアムショートヘアーは、彼女に物怖じも人見知りもしない活発な性格という印象をより強くしている。

陽性の美少女。深雪という稀代の美少女を見慣れている達也を持ってしても、そう認める程にエリカの容姿は整っていた。その性格と相まってきっと目立つ存在になるだろう、という予感は決して間違ったものではない。――達也がそれ以上に目立つ存在となることは、勿論知るよしもないのだが。

 

 

「でも面白い偶然、と言っていいのかな?」

 

「何が?」

 

「だってさ、シバにシバタにチバでしょ? 何だか語呂合わせみたいじゃない。チョッと違うけどさ」

 

「……なるほど」

 

返事こそ返していたが達也の興味はどうでも良い語呂合わせのようなものではなく、エリカの名字に向いていた。

 

『千葉』。

 

百家本流の家系であり、『剣の魔法師』の二つ名が与えられている、自己加速・自己加重魔法を用いた白兵戦技、白兵戦用の武器製造で知られる名門だ。

 

千葉家に達也と同い年の女子がいることは、把握していない。()()千葉家であるとは限らないが、可能性としては高いだろう。

気にはなるが、まだ初対面の段階で訊ねる程不躾ではない。今は無難に、波風を立てず会話をすることを選ぶ。

 

そうして、残り二人の自己紹介も終わる。

四人とも全員初対面ということには驚いたが、美月の『霊子視覚過敏症』、エリカの『千葉』意外は特筆することでもなかった。

 

 

 

 

後日。

 

 

 

「特筆することがなかった?お兄様の目は節穴ですか!?精霊の眼(笑)なんですか!?

特筆すべきはまず美月のおっぱいですよ、高校生離れしたあの大きさ!柔らかく、もっちりしているに違いありません。そしてエリカのスタイル!あれはちょっとやそっと鍛えたものではなく、日常的に、実践的なトレーニングを積んでいる者の肉体ですよ。あの大きすぎず小さすぎずのおっぱいにあのスタイル、そしてあの容姿、とんでもない逸材ですよ。ああ、いえ、逸材と言えば美月もそうですよ、むしろ伸び代なら断然美月です、あの巨乳に加え、希少な眼鏡属性!さらには自己アピールの苦手な控えめな性格!そう例えるならば暗殺者です。一見、控えめでありながら、その実、大きな胸と、眼鏡という猛毒を隠している!なんて恐ろしい!私、もう暗殺されちゃいそうです!あの大きな胸に顔を埋めたくて仕方ないです!」

 

 

「……俺はお前と中学生くらいからやり直したくて仕方ないけどな」

 

「良いですね!そうなれば私は合法的にまた(・・)女子中学生を狙えるじゃないですか!素晴らしい」

 

「…………そうだな」

 

 

このようにして、入学式前の美月とエリカとの出会いを深雪に話したことで、達也は精神に多大なダメージ受け、諦めることの大切さを知ることになるのだが、この時の達也はまだ、知らない。




深雪が完全に変態の仲間入りを(汗)

ぼくが連載している他作品での美月がぶっ壊れているために、普通の美月に違和感(笑)
ちなみに、美月転生。~お兄様からは逃げられない~という作品です(宣伝)


さて、明日も0時に投稿します。




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