【大相撲】関脇玉鷲が横綱白鵬破り、2敗で並ぶ2019年1月25日 紙面から
◇初場所<12日目>(24日・両国国技館) 横綱白鵬(33)=宮城野=は関脇玉鷲(34)=片男波=に逆転負け。押し出されて2連敗を喫し、両力士が2敗のトップで並んだ。3敗は新関脇貴景勝(22)=千賀ノ浦=と平幕の魁聖、遠藤の3人。2大関は高安が碧山を寄り切って7勝目を挙げ、豪栄道は嘉風をさばいて星を五分に戻した。左脚のけがから再出場の小結御嶽海は7勝とした。 角界ナンバーワンの鉄人が、これ以上ない大一番で最高の輝きを放った。玉鷲が、現役1位の通算連続出場を1148回に更新した結びの一番、初顔合わせの2010年春場所から9年近く、過去13番全敗だった白鵬を本能むき出しの攻めで押し出した。直接対決で引きずり降ろし、7連勝で優勝争いのトップに並んだ。 「気持ち良かった。起こしてくれたっす、心の本能を。みんなそうじゃないですか」 張り手を食らうと、スイッチが入った。張り返すこと2度、それでもギリギリまで落ち着きを失わなかった。押し込まれたが、横綱が上体だけで突っ込んだ瞬間を見逃さずにいなした。そこで記憶は途切れ、気付くと攻め返して土俵際。止まらなかった。「何かすごい…。『勝ったの?』みたいな。第三者から見てるみたい」と、支度部屋でも夢心地だった。 同じモンゴル出身の鶴竜から入門先を紹介され、2004年春場所で序ノ口デビューして以来、休場ゼロで土俵に上がり続ける。34歳とベテランの域には入ったが、若々しい突き押し一辺倒の相撲を貫いている。 上位総当たりの地位を維持して14場所目になる。その安定感の土台を、師匠の片男波親方(元関脇玉春日)が野球の投手に例えた。「昔は力と力のぶつかり合い。三振ばかり狙っていた。今は10の力じゃなくて7、8で打たせて取るような感じ。相撲が分かってきた」。荒々しさに冷静さが加わり、進化を遂げた。 励みになっている連続出場記録も、膝や足首のケガで危機は何度もあった。それでも、休場した場合は認められない場所後の母国への帰省などを確保するために「出ます」。自身を「ニンジン作戦」で鼓舞し続けた。 今場所後は特に予定はないというが、初の優勝争いが何よりのエネルギーになる。だが、肩の力を抜くように「自分のことはだいたい分かる。(優勝を)意識するといいことない。普段の一番一番のつもりで」と人懐っこい笑顔で宣言。力まず千秋楽まで、連勝街道を突っ走る。 (志村拓)
PR情報
|