俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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「や、あの、ほんっとすいませんでした」
大輝は達也、深雪、エリカ、幹比古、美月、十文字、ついでに鈴音の前で正座していた。パラサイトは、あの後に幹比古や達也や美月が追い払った。
「俺も、あれ……てっきりリーナが狙われてるんじゃないかと、もしかしたら国際問題に発展するんじゃないかと、そしたらまた太平洋戦争になるんじゃないかと思って、その……や、俺なりに考えたんですよ。バカはバカなりに。そしたら、その……何、リーナが意外とアレだったみたいで……」
すごく謝った。
○
その日の放課後、大輝と鈴音は一緒に帰っていた。その前に、エリカが立ち塞がった。
「ねぇ、大輝」
「あ、シャンクス」
「髪の色だけでカテゴライズしないで。少し、お願いがあるの」
「あ?」
「私に、剣の稽古をつけてくれない?」
○
そんなわけで、エリカに連れられて大輝と鈴音はエリカの家へ。
「うーわ、広ぇー……」
「本当ですね……」
「こんな部屋に住んでみたい……」
「分かります。部屋割りとかどうします?」
「一つはガンプラ、一つはゲーセン、一つは漫喫だな」
「無駄遣いもいいとこですね」
なんて話をしてる間に、エリカは中で自分の父親に話を付けていた。で、戻って来た。
「道場、使わせてくれるって」
「うーい」
エリカの後に続いた。生返事してここまで来てしまったが、大輝は困っていた。別に自己流の剣法があるわけでもないし、師匠もいたにはいたが、その人の技を教わった覚えはない。教える事など何もないのだ。
が、エリカはヤケに楽しみにしてしまっている。断れなかった。
「大丈夫なんですか?大輝くん」
「際どい」
「気持ちはわかりますが……」
で、板の間の道場。幸いなのかは分からないが、エリカしかいなかった。
「さ、よろしくお願いします」
エリカがいきなり頭を下げた。
「………あー、とにかくその口調やめろ」
「へっ?」
「俺は別に師匠ヅラするつもりもないし、お前の師匠になったわけでもない。だからいつも通りに接してくれ」
「わ、分かった……」
「で、お前は俺の何を知りたいの?趣味?職業?」
「お見合いか!私が知りたいのはあんたのその強さというか……技よ」
「技?」
「そう。今日、あのままあんたの挑発に乗って私が戦ってたら、多分負けてた。それは、私になくてあんたにあるものがあるからだと思うの」
「チ○コじゃね?」
「違くて」
「じゃあキ○タマ」
「一々下ネタに置き換えないと話進めらんないわけ⁉︎」
大輝の頭を後ろから鈴音がチョップした。
「お願いだから私の彼氏である自覚を持ってください」
「はいはい……。で、エリカ。何だっけ?」
「だから、それを見つけたい。一時期はあんたの真似して私も戦ってみたりしたけど、やっぱりそれだけじゃわからないわ」
「……………」
「お願い」
頭まで下げられては、「いいえ」とは言えなかった。後頭部をガシガシと掻きながら大輝は言った。
「じゃ、まずは掛かってきな」
「へっ?」
「俺は人にものを教えるのは苦手だ。だからかかって来い。身体で教えてやる」
エリカはごくりと唾を飲み込むと、竹刀を大輝に渡した。エリカは竹刀を構え、大輝は竹刀を持ったまま棒立ちである。ジリジリと隙を伺い、エリカは最初の一歩を踏み出した。
「あっ、たんま」
止められてずっこけた。
「な、何よ!」
「いや、せめて胴だけでも防具着けてもらえるか?」
「あ、うん」
言いながら胴を取りに行った。
「意外と紳士なんですね」
「まぁな。嫁入り前の体ボコボコにしちゃ悪いし」
すると、戻ってきた。
「はい、あんたの分」
「俺のはいらねーよ」
「へっ?」
「そんなもん動きにくくなるだけだ」
「じゃあなんで私には着けさせるのよ!」
「怪我させると悪いから」
「このっ……!」
イラッとするエリカだが、自分が教わる立場である事を思い出し、何とか堪えた。で、再び構える。今度こそ隙を見て斬りかかった。
「やあぁぁぁ!」
まずは突き込む。それを大輝は右に躱した。エリカはすかさず、竹刀の軌道を変えて、斬りかかる。それも大輝はジャンプで躱す。
「ッ!」
空中に向かってさらに突きを放った。が、それを大輝は足の裏でガードしつつ、竹刀を踏み台にしてジャンプし、エリカの首に足を挟んで肩車させると、自分の手に持った竹刀をエリカの胸元に持ってくる。
「ッ!」
「これが本物だったら死んでるぞ」
「……………」
言いながら大輝は竹刀で胸を軽く突き、肩の上から離れる。
「OK、大体分かった。というか、今の俺とお前じゃ喧嘩にもならん」
「なっ……!もう一本よ!」
「戦場にもう一本はねぇぞ」
「!」
大輝に言われて、冷たい汗が頬を流れた。そして、悔しそうに俯いた。
「てなわけで、お前の相手をするのは1日1本だけだ。その間に何か掴むんだな。でも、今のままだと200年くらいかかりそうだからヒントをやる。それも3つだ。泣いて感謝しろよ」
言われてエリカは顔を上げた。
「じゃあ1つ目。『剣だけが武器だと思うな』。2つ目『刀身だけが武器だと思うな』。そして3つ目……」
そこで言葉を切る大輝、エリカの目は真剣だった。
「『修行料は毎月5000円でいいです』」
「真面目に聞いて損した……」
あからさまにがっかりするエリカだった。
「じゃ、帰るわ。またな」
「うん。ありがとね」
「さようなら、千葉さん」
「うん。市原先輩」
そのまま二人は道場を出た。
「いやーいい仕事したわー……」
んーっと肩を伸ばす大輝に鈴音は言った。
「それはそうと、さっき千葉さんの胸を竹刀で突きましたね?」
「おう。意外とやわらかかった。…………あっ」
「お説教です」
「すいませんした……」