俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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「あっあー。こちらお兄様。応答願いますクソドS」
達也が携帯ごしで大輝に声をかけた。ちなみにお兄様とクソドSというのはお互いがお互いにつけたコードネームである。
「公園の西口に着いた。南口の様子はどうだ?」
『こちら南口。ただいまマフラーと手袋で迷ってます』
「………はっ?」
『あっ、いや何でもないです。こっちの問題です。というか、鈴音の問題』
「お前どこにいんだよ」
『こちら南口』
「嘘つけ。どこの南口だ」
『SEIBUの南口』
「すぐこっちに来い。じゃないと市原先輩に浮気してたと」
『いやでもさ、その市原先輩にお土産お願いされちゃってさ。あ、そだ。お前も一緒に来て選んでくんない?』
「はぁ?」
『お前ならどーせ妹にプレゼントの一つや二つ頼まれて買った事あるんだろ?頼むよ』
「………まぁ、今日のこと頼んだのは俺だからな。分かったよ。今行く」
で、達也は渋々SEIBUへ向かった。
○
「おーう、来た来た」
達也がやって来ると、大輝は本当にマフラーと手袋で悩んでいた。
「どっちがいいかな」
「お前マフラーって縄じゃないか。手袋に至っては軍手か」
「いや、冬ならやっぱりこれかなって」
「もう少しデザインを考えろ。特にマフラー。それめっきり冷たくなって動かなくなるから」
「………だよなぁ。俺も悩んだんだけどさぁ」
「悩みどころが違うだろ。まぁ少し待て」
で、達也は深雪に電話をかけた。
『もしもし、お兄様ですか?』
「あっあー。こちらお兄様。応答願いますクソブラコン」
『………お兄様?』
「すまん、間違えた。それで深雪、相談があるんだが……」
『な、なんでもおっしゃってください!』
で、達也は大輝に携帯を渡した。
「もしもしクソブラコン?」
『誰ですか?』
「響だよ」
『切りますね』
「真田です。でさ、相談があるんだけど、鈴音のお土産なんだけどさ、手袋とマフラーどっちがいいかな」
『……あなたお兄様と何してるの?』
「お土産頼まれたからそれ選んでる」
『………あっそう。もうなんでもいいわ。うーん……私個人としてはマフラーかしら、マフラーなら二人で一緒に巻けるでしょ?』
「いやいや、俺は集団自殺は望んでねーから」
『待ちなさい。あなたマフラーで何する気?』
「今、俺の選んだマフラーの写真送るよ」
カシャッ、メールを送信しました。
『………これマフラーじゃなくて縄じゃない!もっと普通のマフラー選びなさいよ!』
「普通のって?」
『ふかふかした奴とか、暖かそうとか……』
「なるほどな」
『私は市原先輩は青とかクールな色が似合うと思うわ』
「了解。サンキューな。お兄様に変わるわ」
『はい』
で、達也に携帯を渡した。
「ありがとな深雪。じゃあな」
通話を切った。
「青いマフラーだって」
「なら、さっさと選んで帰るか」
「おー」
で、二人でマフラーを選ぶこと一時間、
「これでいいな」
「中々いいんじゃないか?」
「だべ?じゃ、帰るか」
「そうだな」
そのまま二人で帰宅しようと駅に向かった。すると、たまたまビックカメラのでっかいテレビのニュース速報で、『吸血鬼、未だ捕まらず』の文字が見えた。
「忘れてた!吸血鬼!」
「どした達也?」
「はい問題!俺たちは本来何をしにここに来たのだろーか!」
「あっ!忘れてた!」
で、二人は急いで公園に戻った。
○
公園では、吸血鬼とアンジー・シリウスが戦っていた。
「大輝、俺が合図したら同時に行くぞ」
「突貫します!」
「人の話を聞け!」
で、二人は戦いの中に飛び込んだ。
「! ダイキ……!」
アンジー・シリウスのその呟きは大輝には聞こえなかった。が、達也には聞こえていたようで、キッとアンジー・シリウスを睨んだ。その時だ。
「止まりなさい」
「あっ?」
アンジー・シリウス、つーかもう、リーナでいいや。リーナに言われて動きを止める大輝。
「私達はあなたの恋人である市原鈴音を拘束しています」
「はぁ?」
「離して欲しければ、退きなさい。我々の仕事の邪魔をするなら、彼女を殺します」
「何、ハッタリほざいてんだコラ。あの人がテメェみてぇなチンカスに負けるわけねーだろ」
鈴音の実力知らないけど、と心の中で付け加える。
「この動画を見ても同じことを言えますか?」
リーナの手には携帯が握られていた。テレビ電話のようだ。そこには、爆睡してる鈴音の映像が映っていた。
「これで分かったでしょう。大人しく武器を捨てて……」
と、言いかけたリーナの手の携帯に木刀が突き刺さった。
「……………えっ?」
「落ち着け大輝!」
達也が声をかけるも、大輝はリーナの顔面を拳でブン殴った。木に叩きつけられ、ぶっ飛びながら四、五本木をなぎ倒すリーナ。
「いったいわね!人の話くらい最後まで……!」
と、リーナは言いかけたが思わず台詞は止まった。大輝が鬼の形相で木刀を握って襲い掛かってきていたからだ。思いっきり木刀をブン回す。リーナは慌てて頭を下げて躱す。木刀は木にクリティカルし、思いっきりへし折った。
「このっ………!」
焦ったリーナは反撃しようと、魔法を発動しようとする。そこに大輝はへし折った木を掴んで叩きつけた。その様子を達也は見ながら、九重に言われたことを思い出していた。
『真田大輝くん、だったかな?彼の戦闘には型がない。つまり、どうやって攻撃、またはガードするか全然読めないんだよ。だから、君も少し参考にしてみるといい』
(あれが、大輝の戦闘、か……。今まで何度も見てきたつもりだったが、改めて見ると……いや、今は感心してる場合じゃないな)
そう思い直すと、達也は大輝を止めに戦闘に加わった。
「落ち着け大輝!その動画が作成したものである可能性もあるんだぞ!」
だが、止まらない。何とか木から脱出したリーナに殴りかかる。その大輝を止めようと、リーナの部下が数人、警棒を持って突っ込んだ。
顔面に警棒で突きを放つ部下。大輝はそれを首を捻って躱す。そして、そいつの顎に木刀を突き上げ、空中に上げた。その足を掴んで別の部下に叩きつけた。
で、リーナを睨む大輝。そのリーナの顔の真横に大輝は木刀を突き刺した。
「今、鈴音の居場所を吐くか死ぬか、どっちがいいよ」
「………私を殺すと恋人さんは戻ってこないわよ」
「そしたら自力で探す。とりあえず今はお前が死ねば俺はそれでいい。だけど、それを鈴音の居場所を吐けば断念してやるって言ってんだ。ありがたく思えー」
「……………」
断る、リーナはそう言おうとした。だが、大輝が木刀一回振って五本木を叩き斬った。
「わ、分かった……言うから……」
「ならばよし」
「公園の出口の前の車の中」
「OK。じゃ、死ね」
「ええっ⁉︎言ってることが違っ……」
「そこまでだ大輝」
達也が止めた。
「それより、早く市原先輩を助けに行かなくていいのか?」
「ああ、そうだった」
そのまま大輝は車へ向かった。