俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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事前に言ってくれれば

 

 

帰り道。大輝は自分のアパートの前でウロウロしていた。家に入るべきか野宿するべきか……。入ればボコボコ、入らなければホームレス。幸い、服装は学校の服だ。そのまま学校に行けば今日だけはなんとかなりそうな気もする。

だが、それも今日だけの話だ。これから先はそうもいかない。

 

「どうしたもんかな……」

 

「何がですか?」

 

「そりゃお前、スズに謝るんだよ。あの人、怒ると超サイヤ人並みに怖いからな」

 

「そうですか……でもそれもあなたことを思ってるのでは?」

 

「わかってるんだけどさぁ、怖いものは怖いんだよ。だってお前超サイヤ人だからね?髪の毛逆立つからね?」

 

「えっ?さ、逆立ってます?」

 

「うん。なんつーか、超サイヤ人というよりどっちかっつーと……」

 

と、そこで言葉を切った。

 

「………つーか誰と喋ってんの俺?」

 

なんとなく後ろを振り返ると、鈴音が逆立った髪の毛でニコニコしていた。

 

「………ほら逆立ってる」

 

「罰の時間ですよ」

 

「はい………」

 

部屋でメチャクチャ怒られた。

 

 

 

 

テレビ中継車に偽装した移動基地へ戻ったアンジー・シリウスはシートに腰をおくより早く撤収を命じた。

 

「少佐」

 

「申し訳ございませんでした」

 

アンジー・シリウス……リーナの前にたった二人は謝罪した。

 

「甘いません。第三者の思わぬ介入があったとはいえ、私も逃してしまいましたし」

 

「……ありがとうございます」

 

「それにサリバン軍曹の処分は完了したのですから、あながち作戦失敗とは言えません。軍曹の死体は回収しましたか?」

 

「回収済みです」

 

「そうですか」

 

安堵したように息を吐くリーナ。

 

「軍曹の死体はすぐに解剖に回してください。それから、私が追跡していた個体の正体は判明しましたか?」

 

「申し訳ございません。今回は想子波パターンの採取に成功しましたが、一致するデータはありませんでした」

 

「そうですか……わかりました。採取したパターンの追跡に当たってください」

 

「イエス・マム」

 

そのまま二人を座らせて、リーナは頭を抱えた。

 

(ヘヴィ・メタル・バーストを斬るなんて反則じゃない!なんなのよあいつ!)

 

頬に冷たい汗が流れた。

 

(ダイキ……あいつがいる限り面倒なことになり兼ねない……)

 

そう判断するとリーナは目の色を変えて、大輝に恋人がいることを思い出していた。

 

 

 

 

翌日。昼食後の授業中。流石に授業中にまで教室に来るのはアウトということで、教室に鈴音の姿はなかった。

 

「………随分疲れてるな大輝」

 

達也に言われた。

 

「いや……ちょっとな。昨日、吸血鬼退治に行ったらエリカに股間見られてチャックに毛挟んでスズに電話で怒られて帰って来て葛藤して怒られたから……」

 

「それで、吸血鬼は倒せたのか?」

 

「知らね。……あれ?俺、昨日何と戦ってたんだっけ」

 

「戦った相手の事くらい覚えておけ……。吸血鬼ではなかったんだな?」

 

「いや、それも思い出せない。なんかと戦ってた気がするんだけど……。エリカ、あれ何?」

 

「さぁ……わたしも分からないわ。なんか紫っぽい顔してて仮面被ってたわね」

 

近くの席のエリカに聞いても曖昧な答え。

 

「……その紫色、というのは肌の色か?」

 

「そうよ。人、というよりは人の形をした何かって感じだったわね」

 

相対した時のことを思い出すように言うエリカ。

 

「何、俺そんな化け物と戦ってたの?」

 

「……あんたほんとに何も覚えてないの?」

 

「鈴音に謝ることのが重要だったんだよ。むしろそっちに集中してたから相手の顔なんて一々覚えてない」

 

「どんだけ市原先輩怖いのよ……」

 

なんてやり取りをしてる中、達也は顎に手を当てて考えていた。

 

「大輝、今日の放課後、空いてるか」

 

「空いてるよ」

 

「なら、手伝ってくれないか?」

 

「あー………」

 

大輝は返事に困った。流石に昨日の今日で鈴音をしんぱいさせるわけにはいかなかった。

 

「鈴音に許可もらえたらな」

 

「………さすがに学習したか」

 

「るせーよ。まぁいけたら行くってことで」

 

「分かった」

 

 

 

 

「と、いうわけで、鈴音。今日も達也と渋谷に行きたいんだけど……」

 

昼休み。大輝は鈴音とお昼を食べながら気まずげに相談した。

 

「いや、許可が出ないならいいんだ。その時は行かないから……」

 

「いいですよ」

 

「だけど達也が俺に助けを求めるなんて相当な……えっ?いいの?」

 

「はい。私が怒っていたのは、嘘をついたことと黙って出て行ったことですから。事前に言ってくれれば、私は大輝くんの強さには信用がありますから、安心できます。でも、あまり夜遅くになってはいけませんよ。十時には帰って来るように」

 

「あ、ああ。努力するよ」

 

「じゃあ、気を付けていってらっしゃい。お土産、待ってますから」

 

「………冗談でしょ?」

 

「本気です」

 

「…………わかりました」

 

大輝は肩を落とした。

 

 





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