俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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そんなわけで、明後日の夕方。風紀委員本部に鈴音が大輝を迎えに来た。
「大輝くん。帰りましょう」
「あー、ちょっと着替えるから待っててくれ」
そう言う大輝の服装はジャージ姿だ。
「どうして、ジャージなんですか?」
「カフェでサボってたらコーヒー零した。校内ならまだしも、外ではジャージで帰りたくない」
「そうですか……分かりました」
で、鈴音は外に出た。その間に、大輝は花音に伝言を任せると、窓から飛び降りてエリカや幹比古と合流し、学校を出た。
○
十分後。
「遅いですね……」
鈴音はそう呟くと、風紀委員本部に入った。中に大輝の姿はない。その瞬間、ゴウッ!と鈴音の髪の毛が逆立った。
「っ⁉︎」
中にいた花音が思わず腰を抜かしそうになる。その花音に鈴音は聞いた。
「…………どこですか?」
「えっ?」
「真田大輝くんはどこですか?」
「ひぃっ!」
思わず泣きそうになるが、なんとか堪えて花音は口を開いた。
「さ、真田くんなら、なんか……伝言残して、窓から降りて行きました……」
「伝言?」
で、花音は大輝の伝言を丸々伝えた。
「用事があるので先に帰ります!てへっ☆……だそうです」
「千代田さん、デスノートかニワトコの杖ありませんか?」
「落ち着いて!」
○
渋谷。幹比古の占いを頼りにエリカと幹比古は歩いていた。で、今は休憩も兼ねてエリカと幹比古は吸血鬼を探すためにあたりを見回している。
「流星に、三回お願いすると願い叶うって言うだろ?俺、ガキの時に実行してみたら翌日、アイドルが一人死んだってニュースで流れたんだよね」
大輝が立ちションしながら唐突に言い出した。
「………いきなりなんの話よ。つーかなんのお願いしたのよ」
「や、俺アイドル嫌いなんだよ。特にほら、少し前に流行ったナントカカントカっつーグループ。特にあの時に総選挙で一位取ったからって調子に乗ってたあいつ……なんてったっけ、斬腹?あいつがキライだったんだけど、『クタバレ斬腹このヤロー』って三回唱えたら交通事故で、死んだみたいでさ」
「あんたガキの頃からそんなだったのね……」
「あ、僕もそのニュース覚えてる。急だったからビックリしたよ」
幹比古が会話に参加した。
「まぁ、魔法が平気で存在してるご時世だから、流れ星の話とかあり得てもおかしかねーと思うが、流石にビビったね。俺になんか能力あるのかと思ったもん」
「罪悪感とかは無かったのね……。それより、そろそろ先行くわよ」
と、エリカは大輝の方を見た。
「……あんまこっち見ないでくんない」
「キャアァァァァァッッ‼︎‼︎」
赤面したエリカのビンタが大輝の顔面に炸裂した。
「いってぇな!テメェ何しやがんだ!小便手に少し掛かったじゃねぇか、どうしてくれんだこの野郎‼︎」
「知らないわよ!この露出魔!ヘンタイ!痴漢!」
「我慢できなかったんだから仕方ねぇだろ!」
「ふ、二人とも大きな声出さないで……!」
と、幹比古が言いかけた時、視線の先で画面を被った奴とフード付きのコートが戦闘してるのが見えた。
「いたよ!」
「本当⁉︎」
エリカはすぐに幹比古の隣へ。
「あーあ…ねぇ、誰かティッシュ持ってない?」
「ミキはコートの方を。あたしは仮面を抑える!」
「分かった!」
「ちょっと聞いてる?手に小便掛かったからティッシュ……」
だが、二人は行ってしまった。
「ったく、しゃーねーなこのヤロー……葉っぱでいいか」
と、呟きながら葉っぱで手を拭く大輝。で、自分も戦闘に参加しようとチャックを引き上げようとした。だが、
「いでででで!毛が挟まった!チャックに絡まった!」
一人でバカやってた。
○
エリカと仮面の女は渡り合う。ほとんど互角と言ってもいいレベルだった。横浜の時、自分の他に三人いて倒せなかった呂剛虎を一人で倒して見せた大輝の身体の使い方を真似るように、密かに特訓していたエリカ。その成果か、エリカは魔法無しで仮面の女と互角に戦っていた。
エリカの剣を籠手でガードする仮面。エリカは剣を引き戻し、仮面が銃を持ち上げるより速く、相手の左へ回り込んだ。そして、銃身を叩いた。
だが、その時だ。仮面の女の手がエリカの顔の前に伸びる。エリカの顔の前に小さな雷球が迫る。エリカは避けようと思えば避けられたのだが、その雷球が掻き消された。木刀によって。
「ふぅ……楽しそうなことやってんなオイ」
大輝が復活していた。
「俺も混ぜろよ」
ニヤリと笑いながら言うと、仮面の女は拳銃を大輝に向けた。が、その銃を大輝は掌底で払うと、木刀で仮面の女の腹を突いた。突きの速さに対応しきれず、後ろに吹き飛ぶ仮面の女。
「退けよエリカ。十分楽しんだだろ。選手交代だ」
「あ、あたしはまだやれるわよ」
「ままま、見取り稽古だと思いなさいよ。前の道場剣法と違って、随分と勘で動けるようになったじゃねぇの」
大輝の動きを参考にしてたことがバレた。が、「マズイ」とも「ヤバイ」とも思わず、むしろ少し嬉しかった。師匠というわけではないが、自分が参考にしていた人に褒められたからだ。
「さて、じゃあそろそろ俺も……」
と、大輝が言いかけたところで電話が鳴った。大輝のだ。
「………げっ、スズ……」
携帯を見た瞬間、魔法を飛ばしてくる仮面の女。それを魔法斬りで弾きながら大輝はとりあえず電話に出た。
「あっ、もしもしスズ?……音さん?あの……怒ってる?」
電話で話しながら、襲い掛かってくる仮面の女の攻撃を捌いていた。
「いや……だから夜遊びとか浮気とかじゃなくて……ちょっとエリカと一緒に……えっ?いやエリカと大人の遊びなんてしてないから!違うよ、だって幹比古も一緒だし……あ?3Pなんてするわけねーだろ。ほんとに用事なんだってば」
口では言い訳しながらも攻撃はちゃんと捌くどころか反撃し、押し返している。
「や、開き直ってないよ……嘘ついたことは謝るようん。いやでもさ、友達だしこいつら……ほっとけなかったんだよ。……いや、良い雰囲気にして誤魔化すとかそんな話じゃなくて。してないもん」
相手は今度は接近戦を仕掛けてきた。
「うん……まぁ嘘ついた。それはごめん。俺が悪かっ…ていうかごめんなさい。反省してます……うん。分かってます。俺のためを思って……はい。ごめん。申し訳ありませんでした」
(すごく謝ってる……)
心の中で感心するエリカ。
「ええっ⁉︎今日は野宿しろって……嘘でしょ⁉︎だって、今冬……あ、いや、えっ、てかそれ俺の家……ごめんなさい。勘弁してください……」
仮面の女がヘビィ・メタル・バーストを放った。
「うん……ごめん。ごめんなさい。というか、申し訳ありません。むしろ、すいませんでした。あと、ごめん。少し……」
そう言うと大輝は携帯を耳から離して木刀を思いっきり振るった。
「うるっせんだよこのチンカス野郎がァァッ‼︎」
ヘビィ・メタル・バーストをあっさり魔法斬りで無効にすると、木刀をブン投げ、顔面に減り込ませた。
「………ああ、ごめん。ちょっと酔っ払いに絡まれて……うん。だから野宿だけは勘弁して……わかった。今から帰るから……うん」
さっきとは正反対のテンションで携帯をしまうと、木刀を回収してエリカの方に歩き出した。
「ごめんエリカ。俺帰るわ」
「な、何かあったの?」
「スズに怒られる……」
トボトボと歩く大輝。目の前をフード付きのコートの魔法師が通った。
「どけよ腐れモヒカン」
八つ当たり気味に顔面を殴った。一撃で死んだ。そのまま涙目で帰宅するのだった。