俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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パラサイト

 

 

翌朝。大輝の携帯に電話が来た。

 

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」

 

『大輝か?』

 

「いえ、葛飾区亀有公園前派出所ですが」

 

『長い。いいから早くしろ。凶報だ』

 

「えっ、もしかして俺、留年……?」

 

『ちげーよ。レオが吸血鬼に襲われて病院に運ばれたそうだ』

 

「………ふーん。そう。どうでもいい」

 

『どうでもいいって、お前な……』

 

「そんだけ?じゃ、切るよ俺。今日用事あるし」

 

『………用事、ね。余り無茶するなよ』

 

「わーってるよ」

 

で、大輝は立ち上がり、朝飯をさっさと食うと、鈴音に「用事あるから先行くわ」と、久々に言い放って出掛けた。

 

 

 

 

放課後。達也はいつものメンバーでレオのお見舞いに行った。病院にはすでにエリカがいた。

 

「みんな、来たんだ」

 

「エリカ、まだいたのか」

 

「ずっとここにいたわけじゃないよ。一旦家に戻って、一時間くらい前にまた来たとこ。達也くんたちが来るだろうと思ってね」

 

と、エリカは頷いた。

 

「エリカちゃん、レオくんは無事なの……?」

 

「大丈夫よ、美月。メールでも連絡したでしょ?命に別状は無いわ」

 

と、笑顔で答えた。で、病室をノックする。

 

「はい、どうぞ」

 

中から若い女性の声がした。

 

「カヤさん、お邪魔するね」

 

中に入ると、年齢は自分たちより四、五個上くらいの女性がいた。

 

「こちら西城花耶さん。レオのお姉さんよ」

 

と、いうので達也は丁寧に頭を下げた。で、達也はレオを見た。

 

「酷い目に遭ったな」

 

「みっともないとこ、見せちまったな」

 

「見たところ、怪我も無いようだが」

 

「そう簡単にやられてたまるかよ。オレだって無抵抗だったわけじゃないぜ」

 

「じゃあ何処をやられたんだ?」

 

「それがよくわからねぇんだよな」

 

と、曖昧な返事。納得いかない、という感じでレオが言った。

 

「殴り合ってる最中に、急に身体の力が抜けちまってさ。最後の根性で一発、良いのを入れたら逃げてったけど、こっちも立っていられなくなって道路に寝転がってるとこをエリカの兄貴の警部さんに見つけてもらったんだよ」

 

「毒を食らったわけじゃないんだよな?」

 

「ああ。身体中何処調べても、切り傷も刺し傷もなかったし、血液検査も白だったぜ」

 

それに関して達也は顎に手を当てて考えた。

 

「相手の姿は見たのかい?」

 

幹比古が口を挟んだ。

 

「見たっちゃあ見たけど、帽子に覆面にロングコートにその下はハードタイプのボディアーマーで人相も身体つきも分からんかったよ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「女だった、ような気がするんだよな」

 

「……女性の腕力でレオと対等に殴り合ったのかい?でも、最初から人間じゃなかった、って可能性もある」

 

「えっ⁉︎ミキ……あんたまさか、吸血鬼なんてものが本当にいると思ってるの?」

 

エリカが目を丸くして聞いた。

 

「多分、レオが遭遇した相手はパラサイトだ」

 

「パラサイト?」

 

首をかしげる美月。

 

「魔法の存在と威力が明らかになって、国際的な連携が図られたのは現代魔法だけじゃない。古式魔法も従来の殻にこもり停滞することは許されず、国際化は避けられないものだった。古式魔法を伝える者達による国際会議がイギリスを中心として何度も開催され、その中で用語や概念の共通化、精緻化が図られたんだ」

 

「国際的な連携は、古式魔法の方がむしろ盛んだということは知っている。それで?」

 

熱が入ってつい語る幹比古を達也がなんとか水を差して、仕切り直した。

 

「パラサイトもそのうちの一つだ。人に寄生して人を人間以外の存在に作り変える魔性のことをこう呼ぶんだよ。国際化したって言っても古式魔法の秘密主義は相変わらずだから、基本的に現代魔法の魔法師であるみんなが知らなくても当然だとおもうけど」

 

と、幹比古が解説する。達也に嫌な汗が浮かんだ。

 

「? 達也さん、どうかしたんですか?」

 

ほのかが聞いた。

 

「い、いや……あの……」

 

達也にしてはかなり歯切れの悪い台詞だった。

 

(もし、今朝言ってた大輝の用事がレオの仇討ちだったとしたら……、)

 

「そういえば大輝は?」

 

「さぁ……学校にも来てなかったけど……」

 

(し、史上最強のパラサイトが爆誕しちまうッ‼︎)

 

キャラも忘れてそう思うと、慌てて達也は病室を飛び出そうとした。

 

「お兄様⁉︎どうしたのですか?」

 

深雪に聞かれて達也は答えた。

 

「深雪は……つーかみんな、ここにいてくれ。お願いだから」

 

で、達也は走った。駅までダッシュした。渋谷に向かった。到着した頃には夜になっていた。公園に向かった。

 

「大輝!」

 

そこには、全裸の元吸血鬼と思われる男が木に吊るされていて、その下で木刀を握って立ってる大輝がいた。

大丈夫そーだなと達也は思い、「大輝」ともう一度声をかけると近付いた。

 

「おい、大丈夫か。つーか何してる?」

 

と、声をかけた時、ビュッと達也の頬を木刀が掠めた。

 

「っ⁉︎」

 

慌てて距離を取る達也。お互いに睨み合った。

 

「…………まさか、お前……」

 

「…………」

 

寄生した。

 

 





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