外国人労働者の受け入れを拡大する新制度に絡んで衆参両院で閉会中審査が行われた。政府は総合対策をまとめているが、今春の制度スタートに間に合うか。共生社会の実現はたやすくはない。
新しい在留資格である「特定技能」の創設は、今年四月から始まる。年末に政府がまとめた新制度の運用方針や生活支援策は計百二十六項目にも及ぶ。看板を一口で言えば「共生社会の実現」だ。
例えば都道府県や政令指定都市など約百カ所に一元的相談窓口を設置する、行政サービスの多言語化を推進する-など、日本での暮らしを支援するのが柱だ。
実行に移すとなると大変なことだ。一元的窓口は「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮称)」と呼ぶが、そこでは医療や福祉、教育など外国人のさまざまな相談に応じる。日本人相手であっても難しいテーマなのに、外国人に十分対応できるか疑問だ。
むろん、外国人を受け入れるならば、必ず必要なことである。言いたいのは「人手不足」を金科玉条に準備不足のまま走りだしていないか。結果として、さまざまな混乱を招かないか。社会も外国人も悲劇的になるのを懸念する。
長期間、日本に滞在する労働者である。医療機関や運転免許などさまざまな分野で多言語化が迫られる。外国人が確実に入居できるように住宅情報も提供せねばならない。社会保険などの加入を促進する必要もある。閉会中審査でも山下貴司法相は「自治体との連携を図る」と強調した。
技能実習生の場合、来日までに母国で多額の借金を抱えるケースが目立った。送り出しに悪徳ブローカーが介在したためだ。だから、ブローカー排除のため、技能実習について中国などとは二国間協定を結ぶという。新在留資格の日本語試験をするベトナムなどと政府間文書の作成を目指すとも。当然のことであり、実効性を持たせる仕組みづくりを急ぎたい。
五年間で十四業種で約三十四万人を迎え入れる。だが、人手不足が解消されれば受け入れを停止するという。日本人雇用への悪影響を防ぐためだが、使い捨てにならないか。
むしろ企業側に低賃金で働かせ、その労働力に依存する発想が根付くなら本末転倒だ。
世界的な人材獲得競争の時代だ。日本で自らの技能を磨き、知識を育ててほしい。
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