俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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翌日。冬休みに突入し、大輝は暇そうに欠伸をする。することがないからだ。
「大輝くん、することが無いなら少しは動いたらどうなんですか?」
「めんどい」
「はぁ………。まぁ私も人のこと言えた義理ではありませんけど」
「なんかしようぜ。ジャンプでドミノとか」
「酷く暇潰しですね。ていうかこの部屋でそれは無茶でしょ」
「じゃあ何やる?それともヤる?」
「やりませんよ!こんな真昼間から!」
「だよねぇ。………そういえば、実家に帰ったりしないの?」
「あー……考えてませんでした」
「帰ったほうがいいよ。実家には」
大輝が意外と真面目な顔で言った。
「俺は帰るから」
「あ、そうですか……」
シリアスな雰囲気作っといてそれか……と、鈴音は思った。
○
年が明けて、数日。妹に泣かれながらも、大輝は一人暮らしの生活に戻ってきた。自宅にはすでに鈴音がいた。
「あけおめ。ことよろ」
「あけましておめでとうございます。懐かしいですね。でも挨拶くらいちゃんとしなさい」
「それより、初詣行こうぜ。俺今年まだおみくじひいてない」
「へっ?い、行ってないのですか?」
「妹とかは行ってたけど俺と親父はずーっと正月モンハンやってた」
「………行きましょうか」
「何処行くかダーツで決めようぜ」
「好きにしてください」
で、この辺りの神社を髪に片っ端から書いて、そこにヒュッと投げた。刺さったのは、日枝神社だった。
「じゃ、行くか」
「そうですね」
○
呑気に私服で日枝神社に入った。もう三が日も過ぎてるからか、誰もいなかった。それでもまったく気にしないで、一円玉を賽銭箱に投げる。
「………ケチですね」
「金ねぇんだよ」
「そうですか」
「よろぴく」
「だから挨拶くらいちゃんとしなさい。罰当たりますよ」
「そうだよ。挨拶くらいはちゃんとしようね」
後ろから声がした。振り返ると、禿げたオッさんが立っていた。
「………誰?」
大輝が聞いた。
「ここの神社の和尚だよ。九重八雲、よろしくね」
笑顔で手を差し出す。その手を大輝はジッと見た後、手を取ろうとした。瞬間、九重の袖からクナイが出てきた。それを見越していたように大輝は自分からクナイに手を指し、九重の手を握った。
「っ⁉︎」
「だ、大輝くん⁉︎」
鈴音の反応を無視して、予想外の動きで反応が遅れた九重の腕をねじり上げ、九重を回して背中を取ると、腕を後ろに引っ張り、後ろに背中をそらせるように態勢を崩し、上から自分の手に刺さったクナイを持ち替えてそのまま顔面に突き刺そうとした。
が、九重は反対側の袖からクナイを出して、大輝の顔面に突き刺そうとする。それを大輝が躱した隙に九重は脱出した。距離をとって睨み合う。大輝の目は戦闘モードになっていた。
「ふむっ……なかなかやるね。真田大輝くん」
「だ、大輝くん!て、手が……!」
急いで治癒魔法を掛ける鈴音。大輝は九重に聞いた。
「俺を知ってんのか?」
「達也くんからよく話を聞くからね」
「あ?達也?司波?」
「そうだよ。その達也くん。しかし、確かに体術……というか殴り合いなら達也くんより強そうだ」
「あんた、達也の知り合いか?」
「知り合いというか、師匠だよ。彼が忍術使いの弟子なのは知ってるだろう?」
「知らない」
「ごめんやっぱ今のなしで」
「あの、私は聞いていますが」
隣で鈴音が聞いた。
「そうなの?」
「彼が服部君を模擬戦で倒した時に聞きました」
「何それ俺聞いてない」
「大輝くんは渡辺さんと暴れてましたから」
そこでようやくその時のことを思い出す大輝だった。
「ま、僕はその達也くんの師匠なんだよ」
「へぇ……じゃあ、強ぇのか?」
大輝は好戦的に聞いた。
「……やっぱりね。君は達也くんの言う通り、他の一年生とは違う」
「あ?」
「戦いを楽しんでいる眼だ」
「…………」
黙る大輝。その眼を真っ直ぐ見据える九重。だがすぐに九重が手を胸前で開いた。
「まぁまぁ、そう怒らないで。気に障ったのなら謝るよ。でも、これだけは言わせてくれるかな?」
「………なんだよ」
「君は、戦いのときは自分はどうなってもいいと思っているだろう」
「っ!」
「さっき、自分の手に迷わず刺したでしょ。あれが自分一人で戦っているならアリかもしれないね。僕もつい呆気に取られてしまったからね、でも」
と、すこし目つきを鋭くして続けた。
「誰か大切な人がいるならダメだ。その時点で、君は一人で戦っているということにはならない」
「……………」
「それだけだよ。またおいでね」
「行こう、スズ」
「は、はい」
そのまま大輝は神社をあとにした。
「大丈夫ですか?手」
「平気だ」
「最後の方は九重さんの言う通りです。余り無茶しないで下さいね」
「ああ、分かってる……」
そのまま会話もなく、二人で帰宅した。
○
どっかの闘技場。そこに立つのは大輝ともう一人の男。観客から歓声が上がる中、大輝は小さく口を開いた。
『なんでだよ。オイ……』
そして、睨む。
『なんで、あんたが……』
だが、答えを言う前に試合開始のゴングが鳴る。そして、向こうの男は真剣を抜き、突っ込んできた。大輝も真剣を抜いてガード。
『おい!話くらい……聞けよ!』
だが、大輝の言葉も聞かずに斬りかかってくる。大輝は防御に徹し、説得するつもりだった。だが、途中から気付いた。気付いてしまった。止めるどころか、むしろこちらから仕掛け、殺しに向かっていた事に。
そして、
『っつあぁぁぁッッ‼︎‼︎』
大輝の一閃が、男の身体を斬り裂いた。そこで、ようやく正気に戻った。気が付いてしまった。自分が目の前の男、自分の支障を斬ってしまった事に。そして、その戦いを楽しんでしまっていることに。
『あっ……あっ……』
師匠の死体を見下ろしながら口から嗚咽が漏れる。
『……ぅうああああああ』
「大輝くん!」
「ぁぁああああぁぁぁあッッ‼︎⁉︎」
起こされて目を覚ました。
「………す、スズか……」
「すごい汗ですよ?うなされてましたし……なんの夢を見たんですか?」
「いや、何でもない……」
「で、でも……ただ事じゃないレベルの汗が……」
「平気だから。トラウマが夢になっただけだから」
「……………」
トラウマ、と聞いただけで鈴音は余計な詮索はやめた。
「でも、辛かったら相談してくださいね」
「うい」
テキトーに返事すると、大輝は学校の準備をした。
○
学校。今日から留学生が来るという事で、クラスは賑わっていた。
「すっごい美人なんだって」
いつもの面子でも、その話が出ていた。
「キレーな金髪でさ、上級生まで見に来てるらしいよ」
「エリカは見に行かないのか」
熱心に語るエリカに達也が聞いた。
「あんな人だかりに入って行けないって」
「オメーでも遠慮ってモンを知ってたんだな」
レオが茶化すように言った。
「遠慮してるんじゃねーよこれは。満員電車の中に飛び込むくらいなら次の電車待つみたいなもんだろ」
「……それって遠慮じゃないのか?」
「他人のために遠慮したわけじゃないだろ」
「それは確かにコイツらしいな!」
なんて本人の眼の前で堂々と失礼なことを語る二人の頭に拳骨が降ってきた。その三人のやり取りに、達也は「アホだな……」とため息をついた。
ギャグが少なかったので番外編第二弾
鈴音「実家に帰る前にこの部屋の大掃除しないといけませんね」
大輝「つっても、俺の部屋結構綺麗じゃね?」
鈴音「いえ、部屋の隅の方とかは掃除してないでしょう?それに、ジャンプの山だって整理されてませんし」
大輝「へいへいわかったよ……。じゃあ俺、この部屋やるから、他任せるわ」
鈴音「はい」
〜5時間後〜
鈴音「ふぅ……洗面所にトイレに玄関OK。これだけやれば後は大輝くんに任せてもいいですよね。……と、いうか、ちゃんと真面目にやってるんでしょうね……一応様子を見ておきましょうか」
で、大輝の部屋。
鈴音「ちゃんとやってますかー?」
大輝「えーっと……38号、38号っと……あった」
鈴音「何やってんですか?」
大輝「いやジャンプの整理。でも、こういうのってつい読みふけっちゃうよな。全然捗んないっすわ」
鈴音「………掃除は?」
大輝「してるしてる。心配すんなって」
鈴音「38号はこれですよ」
大輝「おっ、サンキュー」スカッ
大輝「えっ?」
鈴音「掃除が終わるまで没収です」
大輝「おい待てよ!ワンピースが良いところなんだよ!」
鈴音「早くしないとこれ、引裂きますよ?」
大輝「んぐっ……わ、分かったよ……!」
鈴音「私は洗面所、トイレ、玄関を終わらせたんですから、大輝くんはそれと同じくらいやること。それまで返しませんから」
大輝「ええっ⁉︎そんな……!」
鈴音「あと5時間以内に終わらさないと引裂きます」
大輝「畜生!」
結局、ギリギリ終わった。