俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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一週間後、大輝は退院した。あの後、一応助けてもらったということで、全員で棒を砕き、なんとか大輝を助け出した。奇跡的に、骨折だけで済み、あ、いやまぁほとんど全身の骨が砕けてたんだけど、それでもその程度で済んだんだからマジ頑丈。
で、久々の自宅である。大輝の車椅子は鈴音が押していた。
「………今にして思えば、勝手にウンコに行かなかったらこんな事になってなかったよな」
「余りウンコウンコと連呼しないでください」
「ウンコウンコとウンコしないでください?」
「言ってませんよ!」
そんな事を言いながら大輝の部屋へ。ガチャッと中に入ると、男が一人いた。
「っ! あなたは……!」
鈴音には見覚えがあった。達也を連れて行った軍人の中の一人だ。鈴音に嫌な緊張感が走るが、大輝は呑気に言った。
「あっ、親父」
「えっ?親父?」
「おかえり大輝」
「いやここお前の家じゃねーから」
そんな事を言いながら家に上がる。ちゃぶ台の前に座った。大輝はお茶を淹れて三人分用意して置いた。
「で、大輝。そちらの方は?」
繁留がお茶を飲みながら聞いた。
「市原鈴音。俺の彼女。で、何の用だよ」
ガシャンと手元からグラスが落ちた。
「おい何やってんだよ。テメー弁償しろよ。うちにとってはそれ一つでかい出費なんだから……」
「今なんつったお前」
「弁償しろよ」
「その前」
「何やってんだよ」
「その前!」
「何の用?」
「もっと前!」
「それより親父、無頭竜のアジトは分かったのか?」
「いつの台詞だそれは!わかった!僕の説明が悪かった!そこの人とお前の関係は⁉︎」
「彼女」
今度は固まった。
「おい、いいからその湯のみ弁償しろ」
「べ、弁償?い、いいよ?」
言いながら繁留は懐から百万円の札束を出した。
「こ、これだけあれば足りるよね?」
「おい、いくらの湯呑みを買わせるつもりだ」
「ご、ごめん大輝。ちょっと用事思い出した。藤林くんに連絡入れなきゃいけないんだった」
「ああそう?」
すると、繁留は大量の汗と共に窓から飛び降りた。
「何やってんのあいつ」
「動揺しているのでは?」
「ああ、なるほど」
鈴音に言われ、大輝は窓から湯飲みの残骸を繁留の頭に落とし、なんとか落ち着かせた。
○
「てなわけで、彼女だ」
すると、繁留はガッ!と鈴音の肩を掴んだ。
「な、なんですか……」
「市原さん。すぐに大輝と別れなさい」
「…………は?」
「君と大輝じゃ釣り合わない」
「そ、それは……」
「君のような美人が大輝と付き合っていいはずがない」
「えっ………?」
「おいクソジジィてめぇ……」
「いいかい?こいつは腹黒くてドSでバカで不真面目でサボリ魔で二日に一回しか頭洗わなくて一週間に一回しか洗濯しなくてトイレのあと手も洗わない奴なんだ。考え直すなら今だよ」
「おいほんと余計なこと言うな殺すぞジジィ」
「ほらね?口も悪い。考え直すなら今だよ」
割と本気で言う繁留。だが、
「い、いえ……でも、そういうところも含めて、私は大輝くんが好きなので……」
と、鈴音は照れながらも答えた。
「君がそう言うなら止めないけど……」
そして、繁留は大輝をジロリと、にらんだ。
「大輝、洗脳してるなら今のうち解いとけよ」
「いい加減にしろ!お前俺のことなんだと思ってんだよ!」
大輝が怒鳴ると、繁留はようやく大輝に向き直った。
「ああ、そうだ。実はお前に用事があってきたんだ」
「あ?何?」
「いや、すまなかったと思ってね。軍人として、いやその前に父親として、お前を守ってやれなくて」
「いや、あれは別に自爆だからさ」
「他もだよ。一高の人達が無事だったのは、お前のおかげなんだろ?」
「俺は意図してなかったけどな」
「何にしても、悪かった。僕達が相手をするべき相手を、お前に任せてしまった」
「いいって。別に」
「あともう一つあるんだけど、いいか?」
「何」
「お前も、うちの隊に入らないか?」
「は?」
「陸軍101旅団・独立魔装大隊にだよ」
「………本気で言ってんの?」
「ああ。お前の魔法は二つともレアだからね。それにその対人戦闘スキルだ。お前のことは柳くんも藤林くんも評価していたよ」
「…………………」
「別に強制じゃないし、よく考えて決めるんだよ。彼女も出来たんだ。軍に入るってことはそれなりに覚悟も必要になる。その辺のことも考えて決めるんだ」
「今すぐに、か?」
「今じゃなくていいよ。また今度、いつでも」
「………わかった」
「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。お大事にね。……っと、そうだ。市原さん」
「は、はい」
自分に話を振られると思わなかったのか、少しどもってしまった。
「大輝はしばらくこんな状態だから、面倒見てやってね。なんから一緒に寝泊まりしてもいいから」
「えうっ⁉︎」
「じゃあ、またね」
そのまま繁留は出て行った。
「何バカ言ってんだあのジジィ……。スズ、気にしなくていいですからね」
「……寝泊り……大輝くんと……」
顔を真っ赤にしたまま、鈴音は頭から湯気を出した。ちなみにこのあと、本当に泊まることになった。