俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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虎さん少し強くしました。


自転車

 

 

「いいよ」

 

「」

 

普通にOKした。

 

「あ、あの……ほ、本当にいいんですか……?」

 

「いいよ」

 

「わ、私こう見えて甘えん坊ですよ?それに、今年で卒業しちゃいますし……それに、家事も料理しか出来ませんよ……?」

 

「いいよ」

 

「……テキトーに答えてませんか?」

 

「ないよ」

 

「と、ということは本当にいいんですね⁉︎」

 

「いいよ」

 

「………嬉しいけど腹立つ」

 

言いながらも、鈴音はニマニマしている。

 

「ま、それはそれとして、どうしますかね」

 

「結婚します!」

 

「いやそうじゃなくて。置いてかれちゃいましたから」

 

「私はいつまでも待ちますよ♪」

 

「オイ、話聞け。そうじゃなくてだな……」

 

「あっ、子供は何人にします?」

 

「お前そればっか?つーか俺、話聞かねー奴嫌いなんだけど」

 

「なんですか?」

 

キリッとする鈴音。それらの反応を無視して大輝は言った。

 

「とにかく、ここにいちゃまたいつ敵が攻めて来るか分かりません。先に進みましょう」

 

「何処に向かうのですか?」

 

「近くに魔法協会がありましたよね。そこで匿ってもらいましょう」

 

「でも、ここからかなり離れてますよ?」

 

「大丈夫です」

 

大輝は言うと、敵の壊れた直立戦車を見た。

 

「これなら動くでしょう。コクピットしか壊してませんから」

 

「……なるほど」

 

そのまま二人は敵の目標である地とも知らずに、魔法協会支部に向かった。

 

 

 

 

ヘリの中。全員が全員、気まずい空気に囚われていた。

 

「………大丈夫かな、リンちゃん」

 

真由美が呟いた。

 

「まさか、大輝の方が気付くとはな……」

 

「絶対そういうの疎いと思ってましたからね……」

 

摩利、花音も呟く。すると、幹比古がガタッと立ち上がった。

 

「そこじゃないでしょう!何やってんですかあんたら!二人とも戦場のど真ん中に置いてきちゃったじゃないですか!」

 

その幹比古の台詞にホッとする五十里。自分の感覚が間違ってたわけじゃないんだと思ってるようだ。だが、エリカが冷静に返した。

 

「いや、でもそんな空気じゃないっていうか……ねぇ?」

 

「空気とか言ってる場合⁉︎このままじゃ二人とも恋人になれたとしてもまとめて死んじゃうよ!」

 

「まぁ恋愛に試練はつきものってことで」

 

「言ってる場合か!」

 

と、幹比古はツッコんだが、今自分が何を言っても無駄だと悟り、ため息をついて座った。その時だ。美月が「あっ⁉︎」と、声を漏らした。

 

「美月、どうしたの?」

 

深雪が聞いた。

 

「えっと、ベイヒルズタワーの辺りで、野獣のようなオーラが見えた気がして……」

 

幹比古が懐から呪符を取り出して確認する。

 

「敵襲⁉︎」

 

「確かなの?」

 

エリカが聞いた。

 

「少人数による背後からの奇襲です。恐ろしい呪力を感じます。戻りましょう、協会が危ない」

 

幹比古が言うと、真由美は言った。

 

「これから、協会支部へ向かいます。名倉さん、ヘリを向けて!」

 

そのまま上空から向かう真由美ヘリ。そして、ヘリポートに着陸し、ヘリから降りた一行が見たのは呂剛虎だった。

 

「あいつは⁉︎」

 

「摩利、知ってるの?」

 

「ああ。入院中に大輝が捉えたはずの相手だ……。逃げられたのか?とにかく、シュウが言うにはかなりヤバイ相手だ」

 

それを聞いて、真由美の指示は早かった。

 

「深雪さんは支部のフロアを守って。責任を押し付けるみたいで嫌だけど、最後の砦を任せられるのは深雪さんしかいないわ」

 

「かしこまりました」

 

「桐原くんと壬生さんと深雪さんと、それから柴田さんもお願い。吉田くんと五十里くんと花音ちゃんはあの白いの以外をお願い」

 

全員が全員頷いた。そして、真由美は最後に摩利をみた。

 

「摩利」

 

「ああ。あの男は私達で倒す。エリカ、西城、手伝ってもらうぞ」

 

「言われなくても」

 

エリカが返し、レオも力強く頷いた。そして、それぞれがそれぞれの戦場に立ち、戦闘を開始した。

 

 

 

 

その頃、大輝と鈴音は、直立戦車から自転車二人乗りに乗り換えた。理由は、まぁエンストみたいなものだった。で、自転車に乗ってチリンチリンと呑気に走る。

 

「………腹減ったな」

 

「帰ったらご飯作ってあげますね」

 

「いや自分で作れるんでいいです」

 

「………そういえばそうでしたね」

 

緊張感もへったくれもなかった。

 

 

 

 

その頃、魔法協会支部。呂剛虎は前の時とは違った。それは、大輝対策に、武器を持っていたからだ。如意棒みたいな。

 

「ハアァァァッッ‼︎」

 

レオとエリカが二人がかりで斬りかかるが、元々実戦の年季が違う。呂剛虎は鋼気功を纏った棒と拳で互角に殴り合う。

そこに、摩利も参戦しようとした。だが、棒がギュンッと伸びた。いやそういう意味でなく。

 

「っ⁉︎」

 

それが摩利の腹に減り込んだ。

 

「ぐおっ………‼︎」

 

思わず吐血し、後ろに吹き飛ばされた。

 

「ク……ソ………!」

 

「摩利!」

 

真由美はドライアイスを飛ばして援護する。呂剛虎は、後ろにバク転しながら躱した。

 

「パンツァー!」

 

レオが追撃した。音声入力コマンドを唱えながら攻撃しようとした直後、呂剛虎の双手突きがレオの胸に突き刺さる。

 

「グオァッ……‼︎」

 

バリケードの車に激突するレオ。

 

「このっ……!」

 

エリカが大蛇丸を振り下ろす。躱そうとする呂剛虎だが、真由美のドライアイスを飛ばした。それを掌打でガード。その隙にエリカが斬りかかった。見事なまでに上手く入ったように見えた山津波。だが、棒で防御されていた。

 

「ッ!」

 

そのままエリカに反撃しようとした時、エリカはニヤリと笑った。それを不審に思った呂剛虎だが遅かった。後ろから、さっき吹き飛ばされた摩利が圧斬りで呂剛虎の背中を叩き斬った。

 

「グオアッ………‼︎」

 

だが、それでも呂剛虎は倒れなかった。気合いで保ちこたえ、摩利の頭を掴み、ブン投げた。投げられた摩利は真由美に直撃し、二人仲良く倒れた。

 

「はぁっ‼︎」

 

エリカが大蛇丸を振るう。それを躱す呂剛虎だが、大蛇丸は地面に激突せずにもう一度呂剛虎に迫った。山津波・燕返しだ。そのまま呂剛虎の脇腹に食い込む。だが、元々覆っていた鋼気功は切り裂けなかった。隙だらけになったエリカに呂剛虎は膝蹴りを入れ、エリカは吹き飛ばされる。

 

「エリカ!みんな!」

 

幹比古から声が上がる。だが、呂剛虎はトドメを刺そうとしなかった。あいつがいない。病院で入院中の身体でありながら、自分を倒したあのガキが。

だが、自分の任務を思い出し、トドメを刺そうとした。その時だ。

チリンチリンと間抜けな音がした。

 

「あらっ、魔法協会支部戦闘中ですよ」

 

「本当だ」

 

鈴音と大輝が自転車でやって来た。

 

「! 大輝……!」

 

「真田くん!市原先輩!」

 

色んなところから声が上がった。だが、

 

「ここも危険だなオイ……別のところに逃げましょうか」

 

「そうですね。でも他に安全なところなんてありますか?」

 

「もう自転車で帰るか。どうせここ横浜っすよね?八王子まで頑張れば行けそうな気がするけど」

 

「じゃあ一時間ごとにこぐの交代しましょうか」

 

「いいね。じゃ、しゅっぱーつ!」

 

「いや待て待てェッ‼︎」

 

キャラを忘れてツッコんだのは幹比古だ。

 

「何しに来たの君達!助けに来てくれたんじゃないの⁉︎」

 

「いや、ちげーよ。逃げに来たんだよ。そしたらなんか戦場だったし、帰ろうと思って」

 

「目の前!みんなやられてるじゃん!なんで無視?」

 

「いや、人のことを戦場に置いていくような連中助けるのも癪にさわるなーって思って」

 

「それについては何も言い返せない……!」

 

「まぁそういうわけだから。またな幹比古。頑張れよ……」

 

と、言いかけた大輝の真上に、棒を振り上げた呂剛虎がいたからだ。

ズガシャアァァンッッと棒が振り下ろされ、粉々に砕け散る自転車。手ごたえがない、というのは呂剛虎本人には分かっていた。少し離れた所に、鈴音を肩車した大輝が立っていた。

 

「おいおい、なんだよ。動物園から脱走してきたんですか?」

 

「そうだ……。お前を喰らいに虎が脱走して来た」

 

「いや、虎じゃなくてゴリラ」

 

その一言に、ピキッとイラつく呂剛虎。

 

「もう決めた。お前殺す」

 

「え、何。俺?スズ?どっち?」

 

「お前だ。下の」

 

「俺もスズも下野なんて名前じゃないよ」

 

と、言った瞬間、大輝を目掛けて棒が伸びた。いやだからそっちの棒じゃなくて。それをジャンプで躱す大輝。そして、棒の上に乗った。

 

「………今のは、俺って事でいいのか?」

 

「だからさっきからそう言ってんじゃん」

 

すると、大輝はたったかたったか走って、鈴音を真由美の所に置いた。

 

「七草先輩。この人頼みます」

 

「え、ええ。真田くんは?」

 

「狙いが俺みたいなんでね。売られた喧嘩は買う主義なんで。なんなら先に逃げてて下さい」

 

言いながら大輝は呂剛虎の方へ歩いた。そして、大輝と呂剛虎の距離は五メートルもない。二人は、ニヤッと笑った。

 

 





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