俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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壊れたビルの中に、大輝と摩利と鈴音は隠れた。
「……なんか、敵の数増えてきてないか?」
「そうですね。流石にこの数はおかしいです」
摩利と鈴音の言うとおり、敵の数はさっきと比べて増えている。
「………どうやら、やり過ぎたみたいですね」
「やり過ぎた?」
大輝の一言に、鈴音が反応する。
「奴らの目的が俺には分からないが、全滅するのが思っていた以上に早ぇーから、焦ってさらに投入して来たみたいですね」
お前のせいじゃないか!と、思っても言えなかった。今まで、鈴音も摩利もまったく手を汚さずにここまで来れたのは大輝のお陰だからだ。それに、戦場で手加減しろなんて言えるはずもない。
「………にしても、竹光や木刀って切れるもんなのか?」
「竹光が切れたらそれもう竹光じゃないですよね」
と、一瞬愚痴る摩利と鈴音。だが、その瞬間、三人の隠れていた建物が爆発した。大輝が二人を脇に抱えて、窓から脱出する。
「す、すまない大輝……」
「そういうのいいから。早くここから逃げてくだせぇ」
「ど、どういう意味ですか?」
「迎えに来てもらって申し訳ないんですが、どうやら戦場を悪化させたみたいです」
「だ、だからって真田くんを置いて行く理由にはなりませんよ!」
鈴音に言われても、大輝は顔色を変えずに続けた。
「だから、また迎えに来てください」
「は、はい?」
「タケコプターが来るんですよね」
「ドラえもんは来ませんよ」
「早い話が、ここは俺が食い止めるから二人はさっさと七草先輩達と合流してヘリで迎えに来てください」
「無茶ですよ!いくらなんでも……!」
「いやいいから行ってくんない。さっさと終わらせてウンコしたいんですよ」
「またウンコ⁉︎って、ウンコって言ってしまった!」
「いや、最近ウンコのキレがよくなくてさ」
なんだか緊張感があるんだかないんだか分からない会話だったが、敵に囲まれてる以上はやはりビンビンにあるわけで。
「どちらにせよ、ここで誰かがこいつらの足止めないと、ヘリコプターの所に連れて行くことになっちまうんですよ。だから、さっさと言ってくだせぇ」
「そんな………!」
と、反論しかけた鈴音の目の前でガギンッと音がした。大輝が弾丸を斬り落とした音だ。
「ほら、もう敵さんは待ってくれないみたいですよ。お約束も護れねぇんだからあの野郎ども」
すると、摩利が鈴音の手を引っ張ってたった。
「渡辺さん……?」
何する気?みたいな顔で鈴音が声を漏らすが、摩利は答えない。
「大輝、何処を使えば突破出来る?」
「今から作りますよ。死ぬ気で走ってください」
「………分かった」
「渡辺さん!」
鈴音が声を漏らすが、二人とも無視。
「あ、間違ってもヘリ以外で増援なんて寄越さないで下さいね。寄越したら『殺しちゃうゾ☆(横ピース)』って伝えてください」
「分かった」
そして、大輝が走った。迫り来る弾丸より早く走り、目の前の直立戦車に竹光を突き刺すと、そのまま押し込み、敵の壁を貫通して道を作った。
「今だ!走れェッ‼︎」
その大輝の号令で、摩利が鈴音の手を引いて、自己加速術式で一気に突破する。その摩利に銃口を向ける敵兵。そいつの半径三メートル以内の敵を全員大輝は叩き斬った。
そのまま真後ろにターンし、敵を斬る。摩利と鈴音は敵の包囲網を突破し、真由美達の元へ走った。
○
一方、その真由美達。敵はまるで来なくなった。レオとエリカの所にもだ。
「このままなら安全にヘリに乗れそうね」
「でも、大輝達はまだ帰ってきてないんだろ?気は抜けないぜ」
レオがすぐに返した。それもそうか、と言った顔でエリカは気を引き締める。
「にしても、大丈夫かな……。大輝」
幹比古が心配そうに呟いた。
「平気よミキ。どーせいつも以上にピンピンした腹立つ笑顔で帰って来るって」
「ぼ、僕の名前は幹比古だ!」
と、いつものやり取り(?)をしてると、摩利と鈴音が戻って来た。
「! 摩利!リンちゃん!」
真由美が安心したように駆け寄った。だが、表情はすぐ曇る。
「それが……」
と、鈴音が今までの事情を説明。
「結局、置いてきちゃったんだ……」
「つまり、大輝のお陰でこっちに敵は来ないわけなんですね」
真由美、幹比古と声を漏らす。
「そんな!危険じゃないですか!」
「エリカ。行くぞ!」
と、エリカとレオは行こうとした。だが、
「ダメよ。真田くんが来るなって言ったからには行っちゃダメ。多分、足手まといになるわ」
「でも、だからってな!」
と、言いかけたレオ。すると、エリカの携帯が鳴った。
「! 大輝からLINE!救援要請かも!」
と、言ってその場にいる全員で携帯を見た。
真田 大輝『今殺した奴、レオに顔似てるwwwくそワロタwww』
で、確かにレオに似てる奴の死体が送られてきた。
「腹立つ!マジ腹立つ!」
「プフッ……!」
「エリカてめぇ今笑ったか?」
「あっ、また来たわよ」
花音の一言で、全員が画面を見た。
真田 大輝『直立戦車の操縦超楽しいんだけどwww神ゲーwww』
「遊んでる!遊んでるよコイツ!ゲーム感覚だよ!」
誰かがツッコんだ。
「あ、またメールきた」
また、誰かが言った。
真田 大輝『直立戦車、壊れちゃったよ』
大破した直立戦車と、それを寂しげに見る大輝の背中が写った写真が来た。
「ほら見ろ遊んでるから!」
「てかなんで自分が写真に写ってんの⁉︎誰が撮ってんのこのバカの写真!」
「なんなのこいつ!本当に戦ってんの⁉︎」
「むしろもう死ねよ!」
と、ヴーヴー文句が出る中、鈴音は安心したようにホッと息をついた。
「良かったな市原」
その鈴音の肩を摩利は叩いた。
「な、何がですか?」
「大輝が生きてて」
「べ、別にそういうんじゃありません」
「そうだよな。告白する前に死なれたら困るもんな」
「な、何を言ってるんですか⁉︎違いますからね!」
「照れるな照れるな」
「て、照れてなんか……!」
なんてやってると、ヘリが来た。
「ヘリ、きたよ!」
雫の台詞で全員が上を見た。助かった、という空気が全員に流れた。
○
そのヘリの護衛のために、スーツを着て飛んできた達也。だが、敵の姿はまったく無かった。
「どういう事だ……?」
『どうした、特尉』
耳元の通信機から声が聞こえた。柳の声だ。
「いえ、敵が一人もいないものでどうしたのかと」
『なんだと?周りはどうだ?』
「いません。……いえ、少し離れた所で戦闘音がしますが、ヘリの離着陸に影響はないかと思われます」
『そうか。なら、そのヘリの離陸後にその戦闘音の方へ向かい、戦況次第で援護してやれ』
「了解」
そこで通信は切れた。
「お兄様!」
そのまま、ヘリに一般人を収容してるのを見ながら、達也は異変に気付いた。
(………大輝はどうした?)
「お兄様!」
ちょうどいいタイミングで深雪の声がした。呼んでる気がしたので、降下した。
「深雪。どうした?」
「真田さんが一人で交戦中です!」
「……なんだと?何処でだ?」
「さぁ……ただ、先程市原先輩と渡辺先輩が、一人で持ち堪えてると聞きました」
すると、さっきの戦闘音は……と、達也は思い出しながら言った。
「わかった」
そのまま達也はまた浮き上がり、空中で柳と通信した。
「柳大尉」
『どうした?』
「クラスメイトが一人で交戦中らしいのですが、そちらの援護に向かってもよろしいでしょうか」
『一人で、だと?………ああ、真田の息子か。いいだろう。すぐに行ってやれ』
「有難うございます」
達也は礼を言うと、急いでそっちに飛んで行った。