俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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竹光

 

 

 

論文コンペ会場。トイレから出るなり、銃声が聞こえた大輝。見れば、こっちに向かって撃ってきていた。木刀を構えると、銃弾を片っ端から弾き、大輝は敵の前に突っ込んだ。

 

「邪魔だ」

 

一秒掛からずボコボコにすると、電話が掛かってきた。

 

『真田くんですか⁉︎』

 

「鈴音さん。どうしました?」

 

『今どこですか?無事ですか?』

 

「元気ですよ。会場でゴミ処理してます」

 

『今から渡辺さんと迎えに行きます。待っていてください』

 

「了解です」

 

通話を切りながら大輝は外に出た。外は、敵兵で囲まれていた。

 

「さて、鈴音さん達が来るまでに、綺麗にしとかないとな」

 

言いながら、大輝は邪悪に笑うのだった。

 

 

 

 

地下シェルターが設置されている駅前に辿り着いた真由美達。だが、広場が大きく陥没していた。その上を闊歩する、巨大な金属があった。

 

「直立戦車……一体何処から……?」

 

藤林にとっても予想外の敵だったのか、口から声が漏れた。その戦車が二機、目の前に立っていた。が、深雪と真由美が魔法を発動し、一瞬で二機とも大破させた。

 

「地下道を行ったみんなは大丈夫みたいです。誰かが生き埋めになっている形跡はありません」

 

幹比古が言った。

 

「そうですか。吉田家の方がそうおっしゃるなら確かでしょうね。ご苦労様です」

 

「いえ、大したことでは」

 

藤林に労われて、幹比古は大急ぎで閉じていた目を開き、早口で答えた。

 

「それで、これからどうするんですか?」

 

エリカが聞いた。

 

「こんな所まで直立戦車が入り込んで来ているのですから、事態は思ったより急展開しているようですね。私としては野毛山の陣内に避難することをオススメしますが」

 

「しかしそれでは敵軍の攻撃目標になるのではありませんか?」

 

「千葉さん、今攻めて来ている相手は戦闘員と非戦闘員の区別なんてつけていないわ。軍と別行動したって危険は少しも減らない。むしろ危ないと思う」

 

「では、七草先輩は野毛山に向かうべきだと?」

 

藤林、エリカ、真由美、五十里と言った。最後の問いは真由美に対するものだが、真由美は首を横に振った。

 

「私は逃げ遅れた市民のために、輸送ヘリを呼ぶつもりです。まずあの残骸を片付けて、発着所を確保し、ここでヘリと真田くん達を待ちたいと思います」

 

「なら、俺も残るぜ」

 

レオが最初に言った。

 

「クラスメイトを置いていけるかってんだ」

 

「なら、あたしもだね」

 

エリカが賛同し、幹比古、美月も頷いた。

 

「まぁ、風紀委員長として部下の面倒は見るべきよね。それに、摩利さんもいるし」

 

「花音が残るなら、僕も残るよ」

 

花音と五十里も頷いた。

 

「まぁ、下級生が残るって言ってるのに逃げるわけにはいかねぇよな」

 

「あたしも。エリちゃんや桐原くんや皆さんほどの力はないけど、少しでも罪滅ぼししたいから」

 

と、二年生カップル二つ目。

 

「私も残ります。お兄様が戦っていらっしゃるのに、私が何もしないわけには参りませんから」

 

「わ、私だって!」

 

「会社のヘリを寄越すよう、父に連絡します」

 

深雪、ほのか、雫と続いた。

 

「みんな、バカね……」

 

と、真由美は本気で「嘆かわしい」とため息をついた。

 

「お聴きの通りです。本当にうちの子達は聞き分けがなくて……せっかくのご厚意を、申し訳ありません」

 

真由美は藤林に言った。

 

「頼もしいですね。それでは部下を置いていきますので」

 

「いえ、それには及びませんよ」

 

後ろからやってきたのは寿和だった。

 

「警部さん」

 

「和兄貴⁉︎」

 

「軍の仕事は外敵を排除することであり、市民の保護はけいさつのしごとです。我々がここに残ります。藤林少尉は本隊と合流してください」

 

「了解しました。千葉警部、後はよろしくお願いします」

 

そのまま藤林は去って行った。

 

 

 

 

「ここ、だよな……」

 

「ええ……」

 

論文コンペ会場に到着した摩利、鈴音。だが、そこは先程まで自分達が出てきた場所とは到底思えなかった。あるのは死体の山と大量の血。鉄臭さと、無惨な光景に、鈴音は一瞬吐き気がした。

そして、その死体の山の中央で木刀を手に持って、ドーナツを食べてる男がいた。

 

「あ、鈴音さん。渡辺先輩」

 

そいつは返り血を浴びた顔で明るく名前を呼んだ。

 

「真田くん……!」

 

鈴音が駆け寄る。

 

「無事だったんですね!」

 

「はい」

 

言いながら大輝は死体の服で木刀を拭いた。すると、摩利の携帯に電話が入った。

 

「えっ?本当か⁉︎」

 

真由美からのようだ。

 

「二人とも、急ぐぞ。シェルターが埋まってて、ヘリの到着を待たなきゃいけない状態らしい。私達も早く合流するぞ」

 

「! 分かりました」

 

「でも、そんなに上手く行くか分かりませんよ」

 

そう言う大輝の視線の先には、敵兵がゾロゾロと現れていた。

 

「……なんなんだこいつら。ゴキブリか?」

 

「間違ってはないが……良い例えじゃないな。気持ち悪い」

 

「二人とも下がってて下さい。こいつらは全員……俺が殺す」

 

大輝はニヤリと邪悪に笑うと、腰に差してある木刀ではない方の剣、竹光を抜いた。

 

「………竹光か?」

 

「俺から離れてた方がいいですぜ。返り血でサンタさんになりたくないなら」

 

大輝はそう言って笑うと、敵の中に突っ込んだ。

 

 

 

 

真由美達は二つのチームに分かれていた。その片方のチーム。

 

「来た」

 

幹比古が呟いた。そして、二機の直立戦車が現れた。右手にチェーンソー、左手に火薬式の杭打ち機が取り付けられていて、右肩に榴弾砲、左肩に重機関銃。

だが、深雪の魔法により動きを止められ、レオが飛び出した。双頭ハンマーに似た短いスティック。そこからモーターの駆動音を立てて、スティックの先端から黒いフィルムが吐き出される。それが、二メートルの刃に変わった。そして、薄刃蜻蛉で撃退した。

エリカも、寿和に持ってきてもらった大蛇丸で山津波を使い、敵を撃退した。

一方、もう片方のチームの方に敵は来なかった。

 

「………なんでだろーね」

 

「さぁ………」

 

五十里も花音も桐原も寿和も、緊張感は途切れさせないものの、やはり来ないのは退屈だった。

 

 

 

 

その敵が来ない理由を作っていたのは、大輝だった。大輝と摩利と鈴音ではない。ただ、大輝一人だ。

目の前に直立戦車がいるにも関わらず、大輝は容赦なく突っ込み、機関銃の銃弾を全て竹光で弾くと、木刀を投げて銃口を封じた。相手は腕のチェーンソーを振り下ろして来るが、その腕を竹光で斬って切断すると、そのチェーンソーを掴んで直立戦車のコクピットの上に乗り、突き刺す。

後ろから別の敵兵がハイパワーライフルを撃って来るが、それをあっさり躱すと、一気に距離を詰めて、竹光でそいつの首を刎ねた。別の直立戦車が摩利と鈴音に榴弾砲を向ける。

だが、木刀を投げ、榴弾砲の銃口に刺さり、自爆させた。

 

「あーあ……まーた木刀おじゃんにしたよ」

 

言いながら、大輝はため息をついた。

 

「な、なんだあいつ……!」

 

「化け物か!」

 

「落ち着け!奴は木刀と竹光だけだ!距離を取ればこちらの方が有利だ!」

 

敵の方から声が上がる。だが、誰一人としてまともに動ける奴はいなかった。今の大輝には、それほどのプレッシャーがあった。それは、敵だけではなく鈴音や摩利も感じていた。普段なら、援護の一つや二つはしている所だが、今回はそれができない。ただ、大輝の指示通り、少し後ろからついて行くことしか出来なかった。

すると、相手は全員が固まり、大輝と一定の距離を取った。一斉射撃の構えのようだ。直立戦車とハイパワーライフルの敵兵で、その場にいる全員が大輝を狙って構える。

 

「鈴音さん、渡辺先輩。俺の真後ろから動かないでくだせぇ」

 

「えっ……?」

 

「なんだ?」

 

「動いたら死にますよ」

 

大輝が言った瞬間、

 

「撃てェッ‼︎」

 

と、号令。ズガガガガガガガッッ‼︎と轟音が響く。摩利と鈴音は言われた通り動かなかった。そして、約三十秒ほど、敵の一斉射撃は行われ、シュウゥゥ……と、弾が切れるまで続けられた。そして、煙から出てきたのは、木刀と竹光を二本構えたまま無傷の大輝だった。

ギロリと大輝は敵全員を睨んだ。そして、こいつらに飛び道具はない。と、本能的に察した。

 

「う、うああああ!」

 

敵全員は、自分はもう助からない、と思いパニックになったのか、唯一の武器であるナイフを構えて突っ込んできた。直立戦車の場合はチェーンソーだ。それを、大輝はつまらなさそうにそれらの敵を斬り捨てた。

そして、後ろの摩利と鈴音を見た。

 

「さ、行きましょう」

 

大輝はそう笑顔で言うと、また死体の服で竹光の血を拭くと、鞘に収めて先へ進んだ。

 

 





たらららーん、今回はギャグが少なかったので、後書きで番外編〜。

鈴音(そういえば、真田くんって、上級生は私の事だけ『鈴音さん』って下の名前で呼びますよね……も、もしかして、私のこと………//)←意外と純情

真由美(……リンちゃんのあの顔は、『私の事だけ下の名前で呼んでる来るから真田くんって、ひょっとしたら私のこと……』って顔ね。よーし……)

大輝「うーっす、鈴音さんの護衛に来ました〜」

真由美「ねぇ、真田くん。どうしてリンちゃんのことだけ下の名前で呼ぶの?」

鈴音「」ピクッ

大輝「え?なんでってそりゃあ……」

鈴音「…………」じーっ

大輝「市原海老蔵みたいで可哀想だからですけど?」

真由美「」

鈴音「」

大輝「他にどんな理由が?」

真由美「………真田くん」

大輝「はい?」

真由美「海老蔵は市川よ」

鈴音(そこじゃねーだろ)

終わり





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