俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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会場の中。
「鈴音さん、無事ですかー?」
「このテロリストめぇぇええええッッ‼︎‼︎」
声をかけた瞬間、摩利のドロップキックが炸裂した。そのまま馬乗りにされ、顔面を殴られる。
「ちょっ!渡辺……!」
「まだ一匹残っていたか!手こずらせおって!」
「だかっ……!ちがっ……!」
「だがここまでだ!市原には指一本触れさせんぞ!」
「いい加減にしろクソババァッ‼︎」
起き上がりの頭突きで摩利をぶっ飛ばすと、大輝は鈴音に近づいた。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ……どちらかというとあなたが大丈夫ですか?」
「あんなハナクソみたいなコブシ、効きゃしやせんよ」
で、大輝は真面目な顔になった。
「それよりさ、ウンコしたいか……」
……ら服部先輩と護衛を変わってきます。と、言おうと思ったところで、情動干渉魔法「梓弓」が発動した。思わず、そっちに振り返って、台詞を中断せざるを得なくなった。そして、ステージ中央で、真由美がマイクを持って言った。
「私は第一高校前生徒会長、七草真由美です。現在、この町は侵略を受けています。みなさん、ご存知の通り、この会場は地下通路で駅のシェルターに繋がっています。シェルターは災害と空襲に備えたものですから、陸上兵力に対しては必ずしも万全ではありません。だからといって、砲火の飛び交う町中から脱出を図るのはもっと危険かもしれません。しかし、もっと危険なのはこの場に留まり続けることです。各校の代表はいますぐに生徒を集めて行動を開始して下さい。シェルターに避難するにしろ、この場を脱出するにしろ、一刻も無駄にできない状況です!」
真由美のその言葉で、一斉に動き出す。そして、真由美はあずさに言った。
「あーちゃん、みんなのことは任せたわよ」
そのまま真由美は大輝と鈴音の元へ来た。
「七草先輩。俺ウンコしたいから……」
「じゃ、リンちゃん。逃げるわよ」
「その前に、デモ機のデータを処分しておきたいのですが」
「ねぇ、俺もお腹の中の排泄物を処分したいんだけど」
「分かったわ。急ぎましょう」
そのままステージ裏に向かい、鈴音は五十里と共にデモ機をいじる。その後ろでは真由美、摩利、花音、桐原、紗耶香が取り囲んでいた。
「あの、うんこしたいから誰か護衛を……」
「何をしてるんですか」
大輝の台詞は後ろからやってきた達也によって遮られた。
「データの消去です」
鈴音が淡々と答える。
「ここは僕たちがやっておくから、司波くんは控え室に残っている機器を頼めるかな」
「もし可能なら、他校が残した機材も壊してちょうだい」
「こっちが終わったらあたし達も控え室に向かう。そこで今後の方針を決めよう」
五十里、花音、摩利と答えた。
「ねぇ、誰か……」
「大輝も機材の破壊を頼む。そういうの好きだろ」
そこが大輝の限界だった。全機材を三秒で壊すと、トイレに駆け込んだ。
○
大輝は便器の上。すると、プルルルッと電話が掛かってきた。
「もしもし?」
『大輝か?』
繁留だった。
「おう。どうした?」
『いや、お前はもう避難したのかと思ってな』
「俺の腹から今、便を逃してるよ」
『何やってんの。もうお前の友達行っちゃったよ?』
「は?」
『お前がいない事にも気付かないで。もしかしてお前、友達いないのか?』
「嘘……えっ、なんで?」
『念のため聞いといてよかったよ。今すぐその場から離れろ。じゃないと、ゲリラがいつ来るか分からないよ』
「…………分かった」
『君のお友達にはなんとか伝えてもらうから、じゃあ死ぬなよ』
「おう……」
パシャァァァァッッと、水を流し、大輝はトイレを出た。
○
藤林が護衛することになった真由美達は、駅のシェルターに避難することになった。そのため、徒歩で移動中。藤林の携帯に連絡が入った。
「真田大尉ですか?今は……」
『ごめんね藤林くん。実は、僕の息子がトイレにいる間に置いてかれちゃったみたいでね』
「はぁっ⁉︎」
その声に、全員が振り返った。
「本当ですか⁉︎」
『ごめんね世話かけて。まぁあのバカはほっといても、平気だと思うんだけど、君たちがどこにむかってるか分からないからさ。誰か迎えに行ってあげてくれないかな?』
「はぁ……了解しました」
で、通話を切った。
「どうしたんですか?」
真由美が聞いた。
「真田大輝くん、いるわよね?」
「え、ええ。まぁ」
「彼が今、会場のトイレにいるみたいなの」
「ええっ⁉︎」
すると、全員が全員、「あのバカ……」と言った顔になる。
「だから、私は一度彼を迎えに行くわ。だから、護衛はここまで。ごめんなさい」
言うと藤林は元来た道を引き返そうとする。だが、
「私がいきます」
鈴音が言った。
「ダメよ。危険だわ。もう敵は会場に着いてるかもしれないのよ?」
真由美が即座に反論する。鈴音から反論はない。だが、行きたいという意思はあった。
「分かった。ならあたしが同行しよう」
摩利が後ろから言った。
「それならいいだろう?」
「それでも……!」
開きかけた口を真由美は閉じた。これ以上、なんて言っても無駄そうだと思った真由美は、藤林を見た。藤林は仕方なさそうに言った。
「分かりました。お二人にお任せします」
「ありがとうございます」
鈴音は頭を下げると、摩利と元来た道を引き返した。
「罪な男ね……真田くん」
真由美はそう呟くと、また藤林と共に前に進んだ。