俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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「大輝!」
摩利が三階の大輝の部屋に飛び込んだ。だが、中には鈴音しかいなかった。
「市原?何故ここに……!いや、大輝は⁉︎」
「さ、さぁ……まだ帰ってきていませんが……」
「………まさか!」
「何か、あったのですか?そういえばさっきから、外がガタガタとうるさいですね」
摩利は説明せずに病室を飛び出した。摩利がただ事ではない顔をしていたので、鈴音も追い掛けた。
「一体、どうしたんですか⁉︎」
「大輝が危ないんだ!」
「真田くんが……⁉︎」
そのまま二人は階段を上がろうとした。その時、階段の少し奥の天井が崩れ落ちた。そして、そこから大輝が落ちて来た。
「さ、真田くん!」
鈴音が大輝を抱き上げ、摩利は上を見た。そこには、修次の姿があった。
「シュウ!」
「大丈夫、呂剛虎はそこで気絶してる。しかし、真田くんには驚かされたよ。あの姿勢から手摺の棒を引き抜いて突き刺すなんて」
言われて、摩利は大輝に目を向けた。大輝はむくりと起き上がった。
「あークソ。流石に気合が入ったぜ……」
大輝は「うーん……」と、ノビをする。
「なっ、だ、大輝!大丈夫なのか?」
「ああ?渡辺先輩?鈴音さんも、どうしてこんな所に」
「いや、平河千秋の事情聴取のついでにお前の見舞いに来たんだが……」
「そうすか。丁度今、その平河をそこのゴリラが捕獲に来た所ですよ。たまたま遭遇したのでボコボコにしときましたが……」
と、言いかけた大輝の胸ぐらを鈴音が掴んだ。
「うえっ?」
「あなたは怪我してるっていうのに何やってんですか?」
「えっ……喧嘩……」
「喧嘩なんてレベルじゃないでしょう!全く……心配掛けさせて……」
「俺のことなんて心配するだけ無駄ですよ。負けないし」
「そういう問題じゃないんですよ!」
と、やんちゃ坊主を説教する母親みたいな鈴音を見ながら摩利がニヤニヤしていると、修次が摩利の横に降りてきた。
「しかし、彼は凄いね」
「? 何がだ?」
「昨日まで神経をやられてベッドの上で寝ていたんだろう?それなのに、木刀一本で呂剛虎を撃退するなんて…」
「呂剛虎?誰だ?」
「人喰い虎と呼ばれてる凶暴な魔法師だよ。大亜連合本国軍特殊工作部隊の魔法師だ」
「呂剛虎……あれがそうか……」
「君は見られなかったから平気だろうけど、彼はおそらく奴に敵だと認識されたはずだ。一人になるのだけは極力避けさせるんだ」
「………分かった」
と、言っても大輝なら心配なさそうだが……と、摩利は大輝を見た。
「だーかーらー!リハビリの代わり程度にボコボコにしただけだから大丈夫だっつーの!」
「そうはいきません!これ以上あなたに何かあったらどうするつもりですか!」
本当に心配なさそうだった。
○
月曜日。呂剛虎は捕まった。
病院を派手にぶっ壊した大輝は、「元気なら出て行け」ということで、頭に包帯だけ巻いてもらって、入院費を払わずに追い出された。
今日はジャンプの発売日。「今週どうなってるだろ……」と、呟きながら病院を出て、コンビニに寄り、ジャンプを読みながら家に帰って着替えて風呂入って飯食っておやつ食ってゲームして喫茶店で甘いもの食べて学校に向かった。が、学校に着いた頃には放課後になっていた。
「うぃーっす」
軽いノリで風紀委員会本部に入ると、
「ダメ」
と、花音の声が聞こえた。
「理由を教えてください」
「ダメなものはダメ」
大輝には目もくれずに、てか気付かずに花音はダメを連呼する。
「ですから、何故です?理由を……」
達也が言いかけたところで、
「あっ!真田くん、退院おめでとう!」
と、露骨に会話を避ける花音。
「どーも。退院っつーか追い出されただけなんすけどね。で、何がダメなんです?」
大輝は純粋に気になったので聞いた。だが、
「しかも入院中なのに喧嘩したんでしょ?バカばっかやるね君は」
「はははーっ。で、何がダメ……」
「でもまだ無理しないでよ?私だって風紀委員長として君のことは心配なんだからね」
「そりゃすいません。で、何が」
「まぁしばらくは鈴音さんの護衛もなくて良いと思うから。お大事にね?」
「了解です。で、何」
「じゃ、私は少しトイレに……」
と、言いながら花音は風紀委員会本部を出ようとした。そこに大輝はバズーカをぶっ放した。爆発し、教室の前の壁に減り込む花音。
「人の話を聞け」
バズーカをその辺に置くと、大輝は達也に聞いた。
「で、何がダメなの?」
「関本先輩への面会申請だ」
「誰?」
「お前がいない間にこっちで捉えた男だ」
「ふーん……なんでダメなの?」
「面倒なことになるからよ!」
花音が壁から脱出して怒鳴った。
「何を根拠に……第一、面倒なことって何です?」
「じゃあ何も起きないって言うの⁉︎君たちが動き回って!自覚がないようだからこの際ハッキリ言っとくけど!司波くん、ついでに真田くんも!君たちはトラブルに愛されてるの!君自身にその気が無くて落ち度がなくとも、トラブルの方から寄ってくるんだから!この忙しい時に仕事を増やさないで!」
「大丈夫ですよ。俺はわざと問題を起こしてますからね。俺が風紀委員になってから何人病院に送ったと思います?」
「尚更ダメよ!てか自慢するところじゃないし!」
花音は頭痛を堪えるようにコメカミを抑えた。すると、摩利が口を挟んだ。
「花音、大輝はどうでもいいが、達也くんがさすがに気の毒だぞ。達也くんは当事者だ。自分の耳で事情を聞きたいと思っても無理はない」
「おいコラババァ」
「でも、摩利さん!」
「まあ待て、花音。お前の気持ちもよく分かる」
分かるのか⁉︎と、思う達也を捨て置いて、摩利は続けた。
「ちょうど明日、私と真由美で関本の様子を観に行く予定にしていたからな。それに同行だったらいいんじゃないか?」
「まあ……摩利さんと一緒なら」
「俺も行きたい!」
「「「ダメ」」」
摩利と花音どころか、達也にも断られた。