俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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別の日。大輝はバイトしていた。プールで。でっかいウォータースライダーの上で。
「………うしっ、はい次の方どーぞー」
下の監視員からのサインを受け取り、手を上げて次の人を滑り台に滑らせる、というものだった。その行程を炎天下の中、帽子と海パンとパーカーだけで繰り返している。
「暑い……帰りたい……」
でも、時給は高い。しばらくの食費を稼ぐためだ。そんな事を考えながら、アイスを食べながらバイトしている。店長にバレたら怒られるけど、バレなきゃいい。そんな事を考えながらガリガリくんを食べてると、若い女子の群れの声がした。
「見て見て、ウォータースライダーだって!」
「滑ってみましょうか」
「ち、ちょっと怖いですね……」
その瞬間、思わず舌打ちする大輝。
(ケッ、見て見てって……ウォータースライダーだと知らずにここに来たのかよ。下の階段に書いてあったろうが。これだから学生は嫌いなんだよ畜生)
とか考えながら、とりあえず下からのサインを確認する。
「次の方、どーぞ」
その声で、やかましい男子の群れが突入した。で、さっきの若い女子の群れは真由美と鈴音とあずさだった。
「ッ⁉︎」
慌てて帽子を目深く被り、下を向きながらガリガリくんを齧る。そのタイミングで、鈴音が「ん?」と声を漏らした。
「どしたのリンちゃん」
真由美が聞くと、鈴音はジト目で大輝を見る。
「いえ、あの人……」
「わー!真田くんじゃないですか!」
あっさり正体をバラすあずさ。大輝は思わずピクッと震えた。帽子のツバの辺りからギリギリ見えるように真由美、鈴音、あずさを見ると、全員が自分を凝視している。
どうしようか考えていると、先に帽子を取られてしまった。
「あっ」
「やっぱり真田くんだ。どしたの、こんなところで?」
真由美が聞いた。
「もしかしてバイト?」
「そうですよ。いいからさっさと滑って下さい。下に剣山用意しとくんで」
「怖いわよ発想が!」
そこを注意しておいて、真由美は言った。
「で、どう?私達の水着姿は」
真由美は黒のビキニ、鈴音は青のビキニ、あずさは緑のワンピースだった。
「………1人だけ小学生がいますね」
「誰のことですかぁ!それ!」
あずさがプンプンと拳を振る。
「私は?」
真由美が聞いた。
「うーん、大人になろうと背伸びしてる中学生ですね」
「酷い!」
「やっぱり高校生?」
「そこはいいのよ!」
「いえ。よくないと思いますが」
鈴音が口を挟んだ。その鈴音をじーっと見る大輝。
「な、何ですか?」
思わず顔を赤くする鈴音。
「いえ。まともな高校生って鈴音さんしかいないんだなぁと思いまして」
「どういう意味よ!」
「どういう意味ですか⁉︎」
真由美とあずさが食って掛かる。
「そのまんまの意味ですよ」
「あんたほんとに……達也くんより性格悪いんじゃない?」
「結構。いいからさっさと滑って下さい。もうOKのサイン出てるんで」
「分かったわよ……」
と、真由美は滑り台に座る。
「うっ……結構怖……」
「わっせろーい」
後ろから蹴り押した。きゃあああぁぁぁぁ………っと断末魔を上げて、流される真由美。あずさと鈴音は顔色が悪くなる。
「さ、次は?」
「わ、私、遠慮します!」
「OK、あずさちゃんの番ね」
「あずさちゃん⁉︎私のこと子供扱いしてませんか⁉︎ていうか何でそうなるんですか……!」
放り込まれた。
「で、鈴音さんはどーしますか?」
「では、私も……」
で、鈴音は座った。
「いってらっさい」
大輝はまた蹴り込もうとする。だが、鈴音がその足を掴んだ。
「あなたも道連れです」
「なにっ⁉︎」
二人で流された。
「ちょっ……鈴音さ……何をっ……!」
「いえ、一人だけ流されるのは癪なので」
「意外と負けず嫌い⁉︎つーか、マジで……!」
「ひゃっ!どこ触ってるんですか真田くん!」
「えーっと……ま☆こかな?」
「死ね!死ね!死ね!」
「蹴るな!やめて!痛いから!」
「よ、よく平気な顔で言えますね!」
「そんな照れるような年じゃないでしょ」
「あれ?なんか光が……」
「ゴールだ」
ドッボーン☆と二人は水の中に落ちる。
「ガボボボボッ!」
「ケホッケホッ……大丈夫ですか真田く……って、真田くん⁉︎泳げないんですか⁉︎」
慌てて引き上げる鈴音。
「あれ?真田くん?なんでプールの中に……」
監視員が声をかけた。
「や、えっと……水流に巻き込まれまして……」
「なんかよく分かんないけど、仕事中に遊ぶなんていい度胸してるわね」
「や、違っ……」
「休憩無しね」
「すいませんでした」
と、大輝が謝ってる間に鈴音は真由美とあずさを連れて逃げた。