俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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大輝の夏休み2

 

 

 

別の日。大輝はバイトしていた。プールで。でっかいウォータースライダーの上で。

 

「………うしっ、はい次の方どーぞー」

 

下の監視員からのサインを受け取り、手を上げて次の人を滑り台に滑らせる、というものだった。その行程を炎天下の中、帽子と海パンとパーカーだけで繰り返している。

 

「暑い……帰りたい……」

 

でも、時給は高い。しばらくの食費を稼ぐためだ。そんな事を考えながら、アイスを食べながらバイトしている。店長にバレたら怒られるけど、バレなきゃいい。そんな事を考えながらガリガリくんを食べてると、若い女子の群れの声がした。

 

「見て見て、ウォータースライダーだって!」

 

「滑ってみましょうか」

 

「ち、ちょっと怖いですね……」

 

その瞬間、思わず舌打ちする大輝。

 

(ケッ、見て見てって……ウォータースライダーだと知らずにここに来たのかよ。下の階段に書いてあったろうが。これだから学生は嫌いなんだよ畜生)

 

とか考えながら、とりあえず下からのサインを確認する。

 

「次の方、どーぞ」

 

その声で、やかましい男子の群れが突入した。で、さっきの若い女子の群れは真由美と鈴音とあずさだった。

 

「ッ⁉︎」

 

慌てて帽子を目深く被り、下を向きながらガリガリくんを齧る。そのタイミングで、鈴音が「ん?」と声を漏らした。

 

「どしたのリンちゃん」

 

真由美が聞くと、鈴音はジト目で大輝を見る。

 

「いえ、あの人……」

 

「わー!真田くんじゃないですか!」

 

あっさり正体をバラすあずさ。大輝は思わずピクッと震えた。帽子のツバの辺りからギリギリ見えるように真由美、鈴音、あずさを見ると、全員が自分を凝視している。

どうしようか考えていると、先に帽子を取られてしまった。

 

「あっ」

 

「やっぱり真田くんだ。どしたの、こんなところで?」

 

真由美が聞いた。

 

「もしかしてバイト?」

 

「そうですよ。いいからさっさと滑って下さい。下に剣山用意しとくんで」

 

「怖いわよ発想が!」

 

そこを注意しておいて、真由美は言った。

 

「で、どう?私達の水着姿は」

 

真由美は黒のビキニ、鈴音は青のビキニ、あずさは緑のワンピースだった。

 

「………1人だけ小学生がいますね」

 

「誰のことですかぁ!それ!」

 

あずさがプンプンと拳を振る。

 

「私は?」

 

真由美が聞いた。

 

「うーん、大人になろうと背伸びしてる中学生ですね」

 

「酷い!」

 

「やっぱり高校生?」

 

「そこはいいのよ!」

 

「いえ。よくないと思いますが」

 

鈴音が口を挟んだ。その鈴音をじーっと見る大輝。

 

「な、何ですか?」

 

思わず顔を赤くする鈴音。

 

「いえ。まともな高校生って鈴音さんしかいないんだなぁと思いまして」

 

「どういう意味よ!」

「どういう意味ですか⁉︎」

 

真由美とあずさが食って掛かる。

 

「そのまんまの意味ですよ」

 

「あんたほんとに……達也くんより性格悪いんじゃない?」

 

「結構。いいからさっさと滑って下さい。もうOKのサイン出てるんで」

 

「分かったわよ……」

 

と、真由美は滑り台に座る。

 

「うっ……結構怖……」

 

「わっせろーい」

 

後ろから蹴り押した。きゃあああぁぁぁぁ………っと断末魔を上げて、流される真由美。あずさと鈴音は顔色が悪くなる。

 

「さ、次は?」

 

「わ、私、遠慮します!」

 

「OK、あずさちゃんの番ね」

 

「あずさちゃん⁉︎私のこと子供扱いしてませんか⁉︎ていうか何でそうなるんですか……!」

 

放り込まれた。

 

「で、鈴音さんはどーしますか?」

 

「では、私も……」

 

で、鈴音は座った。

 

「いってらっさい」

 

大輝はまた蹴り込もうとする。だが、鈴音がその足を掴んだ。

 

「あなたも道連れです」

 

「なにっ⁉︎」

 

二人で流された。

 

「ちょっ……鈴音さ……何をっ……!」

 

「いえ、一人だけ流されるのは癪なので」

 

「意外と負けず嫌い⁉︎つーか、マジで……!」

 

「ひゃっ!どこ触ってるんですか真田くん!」

 

「えーっと……ま☆こかな?」

 

「死ね!死ね!死ね!」

 

「蹴るな!やめて!痛いから!」

 

「よ、よく平気な顔で言えますね!」

 

「そんな照れるような年じゃないでしょ」

 

「あれ?なんか光が……」

 

「ゴールだ」

 

ドッボーン☆と二人は水の中に落ちる。

 

「ガボボボボッ!」

 

「ケホッケホッ……大丈夫ですか真田く……って、真田くん⁉︎泳げないんですか⁉︎」

 

慌てて引き上げる鈴音。

 

「あれ?真田くん?なんでプールの中に……」

 

監視員が声をかけた。

 

「や、えっと……水流に巻き込まれまして……」

 

「なんかよく分かんないけど、仕事中に遊ぶなんていい度胸してるわね」

 

「や、違っ……」

 

「休憩無しね」

 

「すいませんでした」

 

と、大輝が謝ってる間に鈴音は真由美とあずさを連れて逃げた。

 

 





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