俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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翌日。大輝は宿舎裏に呼び出された。
「よっ、遅かったね」
そこには真田繁留、父親が立っていた。
「親父、何の用だよ」
「いや、これからまたしばらく会えなくなるから、挨拶しとこうと思ってね」
「そうかよ」
「まずは、昨日お疲れ様。どうだった?無頭竜は」
「アホが一人いたな。あと多分、何人かイボ時だった」
「そっか………」
クスッと微笑む繁留。
「ま、元気でやれよ。加奈もお前が一人暮らし始めて寂しがってるらしいし」
「げっ……加奈が?」
「ああ。あと心配してた。大輝はもう、刀は振らないのか?って」
「っ」
それを聞いた瞬間、大輝の顔に汗が浮かんだ。
「まだ木刀で暴れてたみたいだし、木刀では勝てない相手だって出てくる。その時に後悔するぞ?」
「しねぇよ。俺が刀なんて握っても、みんな死ぬだけだ。敵も味方もな。周りの奴を守り抜くには、木刀で十分だ」
「…………そうか。ま、そう言うなら仕方ないな。でもお前の刀は、まだ家にあるから、必要になったらいつでも言えよ」
「おう」
「じゃ、またね」
そのまま挨拶だけして、父親と別れた。
○
第一高校の勝利で九校戦は終わった。後夜祭合同パーティなう、ということで九校の生徒達は割とフレンドリーな空気になっていた。
中には他校同士でダンスをしている奴もいて、九校戦前のパーティに比べて空気は軽くなっている。が、その空気に馴染めないのが大輝だ。将輝が深雪と、達也がほのか、雫、英美、真由美の相手をしてるのを皿に持った大量の料理を片っ端から食い尽くしている。で、三十七本目のチキンの骨をチュルンと口の中から抜いて、皿にカランと置くと、更に追加の肉を取りに向かった。
「何をしてるんだお前は……ここは大食いコンテスト会場か」
声をかけられた。振り返ると、摩利が立っていた。
「どうも、渡辺先輩」
「司波があそこで踊ってるのに君は何むしゃむしゃ食ってんだ」
「肉」
「それは分かってる。というか、まだ食うのか?」
「ええ、明日からまた貧乏一人暮らしの生活ですからね。今のうちに食い溜めしとかないと」
「冬眠でもするのか君は……。食事は控えて、パーティに参加してみる気はないか?」
「してるじゃないですか。食事だって立派なパーティの一部でしょう?」
「そういうことではなくてだな……つまり、その、なんだ……」
言いにくそうに口籠る摩利。気のせいか、顔が赤い。そして、決心したように摩利が口を開いたのと大輝が同時だった。
「私と踊」
「あ、もしかして俺と踊りたいとか考えてました?」
「………………」
一気に顔が真っ赤になる摩利。で、ニヤニヤしながら大輝は言った。
「そぉんな回りくどい言い方しなくてもストレートに言やぁいいのによぉ〜。もしかして照れてんですかぁ?」
「さ、さてはお前、最初から気付いてたな!」
「はい。つーか、彼氏いんのにいいんすか?」
「し、シュウはそんな小さい男じゃない!」
「あーそう。じゃ、今度チクっとき……」
「いいからどっちなんだ⁉︎踊るのか踊らないのか!」
今度は摩利が遮った。すると、大輝はため息をついて言った。
「ギトギトの手を洗ってきてからでいいならいいですよ」
「! わ、分かった。待ってる!」
大輝は言った通り、便所に手を洗いに向かった。
「………ま、いいか。今日くらいは」
そう呟くと、大輝は手を洗って、会場に戻っていった。で、摩利の前に立つ。
「頼みますよ。俺、初めてなんで」
「む?そうか」
すると、摩利は心の中でニヤリと笑った。
(少し、困らせてやるか)
で、摩利は踊ってる間にわざと難しい感じで踊った。のだが、大輝は涼しい顔でついていく。
「………は、初めてなんじゃないのか?」
「初めてですけど?」
(弱点なしかこいつ……)
と、つくづく思う摩利だった。