俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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翌日のクラウド・ボール。大輝の競技だ。達也は深雪と雫と英美が勝ち上がったため、明日のアイス・ピラーズ・ブレイクの準備、だから当然、深雪と雫と英美もそっち。雫がいるならほのかもそっち。よって、一年生の出場組は全員そっちへ。あと生徒会の皆様も深雪がいるのでそっち。ていうか、深雪という時点で大半の生徒がそっち。結果、クラウド・ボールの応援は一高の試合史上、もっとも少ないものとなった。
「…………腑に落ちねぇ」
ズゥーン……と、大輝は椅子に座り込む。
「まぁまぁ、お陰で緊張がほぐれたんだからいいじゃないか」
摩利がその大輝の肩をポンポンと叩く。
「別にきて欲しいとは言わねぇけどさ……てか、アイス・ピラーズ・ブレイクは午後だろうが……」
「午後にめいいっぱい応援するから二科生はいいやみたいな感じなんだろうな」
「俺もう何処にも応援行かない……」
「まぁそう言うな。ほら、君のクラスメイトは君の所に来てるぞ」
待機室のモニターにたまたま、レオ、エリカ、美月、幹比古の姿がある。
「なんか『二科生の誇り‼︎』とかいう旗持ってるな……」
「………………」
が、大輝の視線は上の連中より摩利を見ていた。
「な、なんだじっと見て」
「そういえば、渡辺先輩はこっちにきたんすね」
「うえっ?」
「や、生徒会の皆さんがあっちにいるのに珍しいと思ったんでね」
「き、気まぐれだ!いいからほら!女子は終わったぞ!行って来い!」
「何照れてんですか」
「照れてない!」
顔を赤くする摩利に背中を押し出され、大輝は待機室から出た。
○
客席。エリカ、レオ、美月、幹比古は今までの競技の中でも特に楽しみにしていた。出るやつが誰であれ、二科生代表だからだ。だから、誰も応援に来てない現状に意外にもストレスをためていた。特にエリカとレオ。
「頼むから勝ちなさいよ……」
「応援に来てねぇ連中を後悔させるくらいな」
と、ゴオオォォッッと、燃えてる二人だった。
「お、落ち着いて二人とも……」
「そうだよ。2人が熱くなってどうするのさ」
と、宥める美月と幹比古にレオとエリカはガバッと振り返った。
「だって!次の試合で燃えるためにこの試合は見ないってどういうことよ!」
「そうだぜ!いくらなんでもヒデェと思わねぇか⁉︎」
「わ、わかったから……」
で、美月と幹比古はため息をつく。すると、アナウンスにより大輝が出てきた。
『第一高校、真田タイキくん』
「くぉら!アナウンスー!」
「名前間違えんなー!」
「だから2人とも落ち着いて!」
で、大輝はラケットを持って入場する。相手は八高。そして、試合開始のブザーと共にボールが射出された。
「どうやら、間に合ったみたいだな」
「! 達也くん。それに、深雪、雫、ほのか!」
「お待たせエリカ」
「よぉ、席はかなり空いてるぜ」
皮肉のつもりでは無かったが、皮肉めいたことを口走ったレオ。で、四人に四人追加され、八人はコートを見る。射出されたボールを、八高の選手が移動魔法と加速魔法で球を撃った。だが、大輝は追い付き、ラケットで打ち返したした。
「っ!」
その球は、八高の選手がまったく反応できないほどの速度で、コートの右端に落ちた。達也ですら、目で追えたのがギリギリの速度だった。
「!」
「うっわ……達也さん、今のはなんの魔法ですか?」
ほのかが達也に説明を求める。だが、
「魔法ではない」
「えっ?」
「今の大輝の球は、魔法ではない。自力だ」
「う、嘘………」
達也以外にはほとんど球が消えたように見えたのだろう。だから、魔法と勘違いしたのだった。そして、20秒後、新しい球が射出される。今度は大輝が先にその球を捉えた。スパシィンッッと音を立てて、ボールは叩きつけられる。
「今のも自力?」
「ああ。大輝は魔法を使わないつもりかもしれんな」
雫に聞かれて、達也は答えた。その間にも試合は続く、さらにボールが射出された。八高の選手は、ボールをかなり高く遅く、ボールを撃った。
「! ……なるほど。これで20秒保たせて、球を複数個に増やす作戦か……」
「確かに、ラケットは一本ですし、真田さんの所にボールが二つ以上来るのは不利ですね」
達也の分析に深雪が付け加えた。そして、八高の選手の狙い通り、球は二つに増えた。
「……………」
だが、大輝は動いた。先に、撃ち上げられた方のボールを打った。だが、すぐに次を打たなければならないため、速度が殺され、八高選手もすぐに対応する。やがて、ボールがドンドン増えていった。
普通なら、ラケット一本の大輝は不利だ。だが、球の速度を越えて大輝は動く。最初は八高選手が有利だったはずが、いつの間にか大輝の打つ速度に追い付かなくなっていった。
「は、早ぇ……トランザムかよ……」
完全に引いているレオだった。
「あ、あれ本当に自己加速術式使ってないの……?」
「ああ、生身だ」
エリカの質問に達也は頷く。で、ボールの数はドンドン減っていく。残り一球となった。相手選手の体力はもうない。だから、すごいチャンスボールを撃ってしまった。それを大輝は逃さなかった。ボールを思いっきり打って、相手選手の顔面に叩き込んだ。
「わざとね」
「わざとだな」
「わざとですね」
エリカ、レオ、美月がジト目で言った。