俺も魔法科高校に入学する 作:フリーザ様
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翌日。バトルボード決勝。毎度おなじみのメンバーで観戦している。今回はスペアの木刀を持っていない大輝。つーか、没収された。摩利に。で、試合開始。
先頭に躍り出たのは摩利。だが、予選とは違い、背後に二番手がぴったり付いている。
「やはり手強い……!」
「さすがは『海の七高』」
「海のって何。あいつらイルカの生まれ変わりか何かなの?」
「いや違うから」
「去年の決勝カードですよね、これ」
と、全員がその拮抗した戦いに声を漏らす。レースは最初のコーナーに入った。大輝はハナクソをほじりながら、ピンッと飛ばした。その時だ。
「あ?」
大輝が声を漏らした。その瞬間、七高選手が大きく体勢を崩した。
「オーバースピード⁉︎」
「えっ、何?俺のハナクソか?俺のハナクソが?」
誰かが叫んだ。七高の選手は飛ぶように水面を滑る。そのままフェンスに突っ込みそうになった。が、目の前には摩利がいる。
摩利は前方への魔法をキャンセルし、水平方向の回転加速に切替。そして、魔法と体さばきの場合でボードを半転させる。そして、七高選手を受け止めた。
「っ?」
今度は達也が反応した。不意に、摩利のボードが沈み込んだ。小さな変化だった。そのまま2人はフェンスに突っ込んだ。
「チィッ」
大輝は舌打ちすると、そのフェンスに走った。
「行ってくる。お前たちは待て」
達也もそう言うと、大輝のあとを追った。
○
病院。摩利が目を覚ました。
「んっ………」
「摩利、気がついた?私が誰だかわかる?」
と、真由美が声を掛けた。
「真由美、何を言っている?そんな事は聞くまでも……っ」
「じゃあこれは?」
大輝が写真を見せた。
「……織田信長」
「じゃあこれ」
「……徳川家光」
「はいこれ」
「………誰だ?この人は……」
「俺の親父です」
「分かるか!つーかさっきからなんなんだ!」
「いや、顔だけでクイズーみたいな?」
「なんでそうなる!………痛てっ」
「真田くん。余り無理させないの」
ひとまずそれを注意しておいて、真由美は続けた。
「でも良かった……意識に異常はないようね」
「あたしはどのくらい気を失っていたんだ?」
「5年」
「ごめんなさい、黙ってて真田くん。お昼が回ったところよ」
と、説明する真由美。
「肋骨が折れていたのよ。今は魔法でつないでいるけど、まだ定着していないわ。当然知ってるいると思うけど、魔法による治療は結局のところ応急処置で」
「定着するまでは仮に治っているだけだ。決して、瞬時に健康状態を取り戻すものじゃない。大丈夫だ。そのくらい、弁えている。それで、定着までどのくらい掛かる?」
「全治一週間。1日寝てれば日常動作に支障はなくなるけど、念の為に、10日間は激しい運動を禁止」
「おい、それじゃあ⁉︎」
「ミラージ・バットも棄権ね。仕方ないわ」
「そうか……」
ため息をついて、目を閉じる摩利。
「えっ、ミラージバット出るの?渡辺先輩があの衣装着るの?本気?天使と悪魔が一心同体みたいにならない?」
「どういう意味だ……!痛た……」
「無理しちゃダメでしょう渡辺先輩」
「無理させてるのはお前だ!って、痛たた!」
「あたたた?北斗神拳?」
「違うわ!」
ツッコむ度に痛むのだが、何故か大輝のボケはツッコマずにはいられなかった。
「でも、結構元気一杯で安心しましたよ」
唐突に、微笑みながら大輝が言った。その瞬間、真由美は意外なものを見る目で口元を手で覆い、摩利は思わず顔を赤くした。
「なっ、何を言うんだいきなり!」
「意外……真田くん、そんなこと言えるのね……」
「心配してたんだから当然ですよ。一応、女性の方ですし」
「〜〜〜っ!」
なぜか悔しそうな顔をする摩利。だが、
「だって、」
と、大輝が続いた時の笑顔は、天使の微笑みから悪魔の微笑へと変化していた。
「元気なら何しても平気ですからねェ」
その瞬間、摩利の顔は真っ青になり、真由美は落胆したようにため息をついた。で、大輝は手始めにマジックペンを用意した。
「なっ、何をする気だ?」
「とりあえずおデコに肉って書く」
「んなっ……ま、真由美!やめさせろ!」
「ごめんなさい。私にはどうすることもできないわ」
「いや、木の葉の里の額当てのマーク書いて頬に6本線を引くか」
「よせやめろ馬鹿……!痛っ!」
結局、落書きされた。
「じゃ、さいなら〜」
と、大輝は出て行き、真由美は濡れたタオルで摩利の顔を拭いていた。
「まったく……何しに来たんだあいつは……」
「フゥ……落ちた。でも真田くんが真っ先にあなたの所に駆け付けたのよ?」
「なにっ?」
「事故が起きた後、真田くんが真っ先に駆け付けて、そのあとすぐにやって来た達也くんと応急処置して、ここに運んできたのよ」
「あいつが……?」
「うん。結構、慣れた手つきで」
「………あの、一応聞くけど傷口にウォッカとか掛けられてないよな?あたしにグルメ細胞はないぞ」
「大丈夫よ。ちゃんと真面目に。………まぁ、その代わり、その……割と本格的に応急処置してたから……スーツの下とか見られてたかもだけど……」
「んなっ………⁉︎」
「でも、ちゃんとお礼言っといた方がいいわね」
そう言われるも、摩利は顔を赤くして顔を布団の中に隠した。
「な、なんなんだあいつは……」
「まぁそれで助かったんだからいいじゃない」
それを聞いて、尚更何故か悔しくなる摩利だった。