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【社説】

五輪贈賄疑惑 招致のあり方問い直せ

 日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、二〇二〇年東京五輪・パラリンピック招致に絡む贈賄疑惑をあらためて否定した。説明はもちろん、招致のあり方にも一石を投じている。

 フランス当局が捜査を続ける一連の疑惑は、五輪・パラリンピック招致のあり方自体が問われる問題と考えた方が、いいのではなかろうか。

 JOCの竹田会長は十五日の会見でも、自身が理事長を務めていた東京五輪招致委員会が一三年にシンガポールのコンサルタント会社ブラックタイディングス(BT)社に支払った計百八十万ユーロ(約二億二千万円)について、適切なコンサルタントの対価であったことを主張し、贈賄を否定した。

 その経緯についてはJOCもいま一度、しっかり調査するべきだ。ただ、それほど高価なコンサルタント料を許容してしまう招致のシステムにも問題はある。

 BT社にコンサルタントを依頼した経緯について、一六年五月の衆院予算委員会で当時の馳浩文部科学相は「コンサル業務に関しては、招致委員会のメンバーはプロではありませんので」として、大手広告代理店からの勧めがあって決めたと答弁している。

 一六年五輪・パラリンピックで開催地に立候補しながらリオデジャネイロに敗れた招致委は、今回の招致活動にも約八十九億円の経費を費やした。それを再び無駄にすることが許されない状況下で、高額を払ってでも推薦されたBT社に委ねることを決めたと受け取れる。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、IOC委員の五輪・パラリンピック立候補都市への自由な訪問や個別接触を、買収などの不正につながるとして禁止している。そのことがIOC委員とつながりを持つコンサルタントの需要増加につながり、高額なコンサルタント料が動く図式になったのだとすれば、皮肉なことだ。

 五輪・パラリンピックのたびに贈収賄疑惑が浮上する現状を鑑みれば、IOC委員の投票で開催地を決定する現在の方法に限界があることは否定できない。

 公開性を高めるため、開催地にふさわしい都市であるかを各条件ごとにポイントをつけ、その総合点で決めるなどの方法もある。そのような、密室性を差し挟む余地がないようなシステムの構築を検討した方がいいのではなかろうか。一考を促したい。

 

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