俺も魔法科高校に入学する   作:フリーザ様
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懇親会

 

 

 

宿舎に到着した。大輝は顔に手を当てながらバスを降りた。

 

「やっちまったなーおい……やっちまったよーおい……三巨頭の前で尻丸出しってお前……もう死のうかな……」

 

「大活躍だったそうだな。大輝……何かあったのか?」

 

「あー、今は何を言っても無駄だ」

 

達也が声を掛けるが、摩利が同情したように答えた。

 

「こいつはこいつの中で事故があったんだよ」

 

説明されるも「?」が頭の上に浮かぶ達也。そんな事を話してると、見覚えのある奴が手を振っていた。

 

「一週間ぶり、元気にしてた」

 

「ええ、まあ……それよりエリカ、貴女何故ここに?」

 

達也の隣を歩いていた深雪が聞いた。

 

「もちろん応援だけど」

 

「でも競技は明後日からよ?」

 

「うん、知ってる」

 

「深雪、先に行ってるぞ。エリカ、また後でな」

 

達也と大輝が2人の横を通って先に行った。

 

「あっ、うん、またね。大輝も頑張って」

 

「今、真田くんに何を言っても無駄よ……」

 

「は?」

 

深雪は悲しげに目を伏せた。

 

 

 

 

で、夕方のプレ開会式。パーティ。そこで達也は料理を取りに行こうとした。そこに「お飲み物は如何ですか?」と声がかかった。

 

「関係者とはこういうことか……」

 

「あ、深雪に聞いたんだ?ビックリした?」

 

「驚いた」

 

楽しそうに笑うエリカ。

 

「大輝は?」

 

「………そっとしといてやれ。それがあいつの為だ」

 

「はぁ?」

 

深雪に事情を聞いた達也は、そう返事を濁した。

 

「どうしたのよ。気になるじゃない」

 

「部屋で不貞寝してる」

 

「寝てるの?体調悪いの?」

 

「むしろ心の体調が悪い。今、渡辺先輩が様子見に行ってるよ」

 

「ふぅーん……それって逆効果じゃない?」

 

「俺もそー思う」

 

なんて話してると、そこに深雪がやってきた。

 

「ハイ、エリカ。可愛い格好をしてるじゃない」

 

「ねっ、可愛いでしょ?達也くんは何も言ってくれなかったけど」

 

「お兄様にそんなことを求めても無理よ、エリカ」

 

「ああ、なるほどね。達也くんはコスプレなんかに興味はないか」

 

「それってコスプレなの?」

 

「あたしは違うと思うんだけど、男の子からしたらそう見えるみたいよ」

 

「男の子って、西城くんのこと?」

 

「アイツじゃその程度のことさえ言えないって。ミキよ、コスプレって口走ったのは。しっかりお仕置きしといてやったけど」

 

「ミキ?誰?」

 

「そうか。深雪は知らないんだっけ」

 

そう呟くと、エリカはどこかへ走り去った。

 

「いったいどうしたのでしょう?」

 

「多分、幹比古を呼びに行ったんだろう。吉田幹比古。名前は知っているだろう?」

 

「お兄様と同じクラスの方ですね?」

 

「エリカと幼馴染みらしい。深雪は幹比古にあったことないからな。紹介するつもりなんだろうな」

 

なるほど……と、心の中で呟く深雪。すると、さらにそこに雫とほのかがやってきた。

 

「深雪、ここにいたの」

 

「達也さんも、ご一緒だったんですね」

 

「雫、わざわざ探しに来てくれたの?」

 

「うん」

 

「他のみんなは?」

 

「あそこよ」

 

ほのかの指差す先は慌てて目をそらす男子の集団がいた。

 

「深雪のそばによりたくても、達也さんがいるから近付けないんじゃないかな」

 

「……俺は番犬か何かか?」

 

「みんなきっと、達也さんにどう接したらいいのか戸惑っているんですよ」

 

ほのかが言うと、やはり達也は戸惑うしかなかった。

 

「バカバカしい。同じ一高生で、しかも今はチームメイトなのにね」

 

「千代田先輩」

 

新しくまた花音と五十里が入ってきた。

 

「分かっていてもままらないのが人の心だよ、花音」

 

「それで許されるのは場合によりけりよ、啓」

 

「どちらも正論ですね。しかし、今はもっと簡単な解決方法があります」

 

達也は言うと深雪に向き直った。

 

「深雪、みんなの所に行っておいで。チームワークは大切だから」

 

「ですがお兄様」

 

「後で部屋においで。俺のルームメイトは機材だから」

 

そう言うと、深雪はほのか、雫と共に男子の輪に行った。

 

「大人の対応ね。でも、それじゃあ先送りにしかならないと思うけど?」

 

花音が言った。

 

「先送りでいいんですよ。今すぐ解決する必要のない問題で、時間がある程度の解決をもたらす類のことなんですから」

 

「それは……っ」

 

言葉に詰まる花音。

 

「花音、司波くんの言う通りだよ。世の中には、拙速を尊ばないこともあるんだ」

 

「だが、若々しさが無いのも確かだな」

 

そこに、またまた新しい声がした。摩利だった。大輝を引きずっている。大輝の目は死んでいた。

 

「ほら、いい加減自分で歩け」

 

「いい火加減?確かに尻に火傷は無かったのにズボンとパンツだけ焼け落ちましたからね……いい火加減でしたよね……」

 

「………………」

 

思わず黙ってしまう全員。

 

「ほ、ほらそれより料理取りに行こうよ!美味しそうだよ!」

 

五十里が気分を変えるために声を明るくする。だが、

 

「そうですね……俺のケツも料理されちゃいましたからね……」

 

「………………」

 

また黙る4人。が、やがて摩利がブチギレた。

 

「ああもう!ウジウジするな!お前は私達の命を救ったんだ!それでいいだろう!」

 

「俺は救われなかったんですけどね……」

 

「〜〜〜ッ‼︎花音、こいつ一発殴れ」

 

「ええっ⁉︎」

 

「いいから早く!」

 

「うっ……ごめんなさい真田くん!」

 

花音は言われるがまま殴った。が、大輝は躱す。その躱し方にイラッとする花音。元々、負けず嫌いのタチなので、さらにもう一発。だが、躱される。しばらく殴っては躱されるの繰り返しをする。思いの外、収拾がつかなくなり、摩利は五十里に言った。

 

「そういえば五十里、中条が探していたぞ」

 

「すみません。それで、中条さんはどこに?」

 

「一号作業車だ。もうすぐ来賓挨拶が始まるから、早く用を済ませて中条も引っ張ってきてくれ」

 

「分かりました。ほら花音行くよ」

 

「いやだー!せめてこの野郎に一発入れるー!」

 

駄々をこねる花音を引きずって五十里は移動した。

 

「さて、じゃあ司波。私は他校の幹部と挨拶してくるから、大輝を頼むぞ」

 

「えっ」

 

「じゃあ後でな」

 

「いや、待っ」

 

行ってしまった。厄介ごとを押し付けられた。

 

 

 

 

来賓の挨拶が始まった。順調に激励、訓示が消化されていき、いよいよ九島老人の番となった。そして、ライトが照らし出され、その下に現れたのはパーティドレスを纏い、金色の髪の若い女性だった。

が、違う。壇上に現れたのはこの女性だけではない。それに少なくとも達也と大輝は気付いた。やがて、2人の凝視に気付いたのか、女性の背後の老人がニヤリと口を歪ませた。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する。今のはチョッとした余興だ。魔法というより手品の類いだ。だが、手品のタネに気づいた者は、私の見たところ五……いや、六人かな?それだけだった。つまり、」

 

と、老人は続ける。

 

「もし私が君たちの鏖殺を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことができたのはその五、六人だけだということだ」

 

その一言で、会場は静寂に包まれる。、

 

「魔法を学ぶ諸君。魔法は手段であって、それ自体が目的ではない。そのことを思い出して欲しくて、私はこのような悪戯を仕掛けた。私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。だが君たちは、その弱い魔法に惑わされ、私がこの場に現れると分かっているにも関わらず、認識できなかった。魔法を磨くことはもちろん大切だ。しかし、それだけでは不十分だということを肝に銘じてほしい。使い方を誤った大魔法師は、使い方を工夫した小魔法師に劣るのだ。明後日からの九校戦は、魔法を競う場であり、それ以上に魔法の使い方を競う場だということを、壊てておいてもらいたい。魔法を学ぶ若人諸君。わたしは諸君の工夫を楽しみにしている」

 

すると、拍手が飛び交う。そんな中、達也は声に出さず笑っていた。

 

(これが、老師、か……)

 

九重八雲。風間玄信。そしてこの、九島烈。この国にはまだまだ、彼が学ぶべき魔法師がいる。高校生をやっているのも、意外と退屈しない。そう思った。

一方、大輝は、

 

「zzz………」

 

寝てた。

 

 





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