魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
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九校戦初日。午後のスピード・シューティング準決勝、決勝を観戦する前に司波達也はホテル内の高級士官客室に向かった。昨晩にした約束を果たすためだ。
そこには彼の所属する国防陸軍第101旅団・独立魔装大隊の幹部達とそれを率いる隊長である風間玄信がルームサービスのティーセットを並べて一服していた。
「来たか。まあ、掛けろ」
達也が居並ぶ幹部連に躊躇いを見せ椅子に座るまでに一悶着あったものの達也含める全員が腰をおろした後は一転して和やかに会話が展開された。…和やかというのはあくまで雰囲気の問題であって内容には和やかとは言えないものもあったが。
「達也、もし選手として出場するようなことがあった場合は」
「分かっていますよ、少佐。『
『
風間の鋼の声に込められた真意を見謝ったりはしなかった達也は多少のユーモアを混ぜなから落ち着いて答える。
「……しかし、自分が選手として出場するような状況は考え難いんですが」
「心掛けの問題だ。分かっているならそれでいい」
お互いに失笑を浮かべながらもその瞳は醒めている。その醒めた目を見交わしながら二人が話題を締めくくるといよいよこの集まりも終わりのムードが漂い始める。
そろそろ会場に向かわなくては、と達也がこの場を退席しようとしたところで風間の副官を勤める女性士官、藤林響子があっと声を上げる。
何事かとそちらに意識を向けると藤林は達也が今までに見たこともないようなまるでイタズラを仕掛ける前の子供のような笑みを浮かべながら近づいてくる。
達也が藤林の奇行に混乱している内に達也の横へと移動した藤林が耳元で何やら耳打ちする。それは特大の爆弾だった。
「私、雪花君と婚約したの。だから次からはお兄様とお呼びした方がよろしいかしら」
達也はたっぷり30秒程フリーズした後、どこから出したのか分からない無理矢理絞り出したかのような声で言った。
「……結構です」
高級士官客室はこの日一番の笑いに包まれた。もちろん達也を除いてであるが。
この時達也が内心、歳が一回り近くも上の妹なんて御免だと思っていたことはここだけの話だ。
達也がそれを口に出すことは終ぞ無かったことであるしもし口に出していたのならば達也はエンジニアとしての仕事を全うすることが出来なくなっていたかもしれない。
その理由は語るまでもないだろう。
この話はオマケみたいなもので達也が雪花の婚約を知ったということだけが重要です。次話的に。