(cache)SHOWROOM・前田裕二×成井五久実「人生には根拠のない自信が必要だ」(前田裕二,成井五久実) | 現代ビジネス | 講談社(2/4)


SHOWROOM・前田裕二×成井五久実「人生には根拠のない自信が必要だ」

DeNAの同期・起業家対談①
前田裕二, 成井五久実

創業者・南場智子氏の存在

前田:だけど、当時のDeNAよりも、今のほうがより社員の独立を後押しする会社になってきていると思う。「みんなのウエディング」という事業もDeNAからのスピンオフ事例としては有名ですが、当時はそこまで、事業を外に切り出して会社化することを戦略的にやっていなかったのではないかなと想像します。

SHOWROOMは、DeNAから会社分割して設立したわけですが、よりこういった動きを支援する経営方針に変わってきているのかもしれないですよね。

経営者・親会社による、子会社あるいは独立志向のある社内事業に対しては、大きく2通りのスタンスがあると思います。1つは、0か1の考え方。100%子会社にするか、完全に売却してしまうか、つまり、取り込むか切り離すかをはっきりさせるやり方です。

もう1つはその中間で、数十%の保有比率で血縁関係を持つベンチャーをグループで増やしていく方法です。例えば、ソフトバンクがアリババの2割程度の資本を持つようなイメージ。孫さん自身が起業家だから、起業家の生態が理解できているのでしょう、投資先の起業家の主導権を完全に握るようなやり方はしないんですよね。

起業家という生き物は原則、しっかり主導権をもって、自分の価値観に沿って経営したいと思っているわけですが、孫さんはそのモチベーションのあり方をよく理解している。なので、むやみにコントロールするわけではなく、薄く広く影響力を広げていって、それら投資によるリターンやシナジーを得ていく。それらを全体で合わせてみるとすごく大きな価値になる。こんなやり方です。

DeNAも、以前に比べるとより後者のスタイルに寄ってきているのかなと思います。

成井:南場さんの考えも変わってきているのかな。

前田:DeNA入社前にアメリカで起業しようかなと考えていた時、南場に「DeNAで一回修行してみたら」と言われたんです。事業を学ぶ道場、修行する場として、DeNAは日本でも最高峰だからって。実際入ってみて、なるほど確かに、と思う部分がありました。

何よりも、人材のクオリティが高い。とにかくDeNAは人を大事にするし、採用をものすごく大事に考えている会社。本気でベンチャー精神のある優秀な人材を、南場含めて経営陣が本気で採りに行っているから、結果として、外に出ても起業家として十分に通用する、むしろ群を抜いて活躍する人材がDeNA発で出てきているのだと思います。

例えば、アカツキの塩田さんや、リタリコの中俣さんは、本当に天才的に優秀で、僕は全起業家・事業家の中でも、その2人には大きなリスペクトを持っています。僕と成井さんが他のベンチャー企業ではなくDeNAを選んだ理由は、そういった、モンスター人材を生み出す会社である片鱗が見えていたからかもしれません。

成井:今起業している同期たちも、起業ありきでDeNAに入ったというよりは、DeNAでしごかれるうちに、すごいビジネスマンに成長して、結果として辞めて起業しているという感じがします。

撮影:浜村達也

前田:僕は「DeNAが好き」ということもありますが、それ以上に言えるのは、「DeNAで働いている人が好き」ということです。昔からそうですけど、企業や組織など抽象的なものよりも、「ヒト」に思い入れを持つことが多いタイプの人間だなと思います。孫さんは大好きだけど、ソフトバンクが好きで好きでたまらないわけではない、という。そしてこれから、「モノ」より「ヒト」に対して、人の心が紐づいていく時代がくると思っています。

そういう意味では、やはり南場のことは好きで、それがDeNAにきた大きな理由です。もう母親みたいな感じで、「前田は髪を黒く染めろ」ってうるさいわけですが(笑)、そういうところも含めて、人間的に好きです。

 

成井:そうなんだ(笑)。私は採用試験を受けていた時、学歴があまり高くないのもあって、当落線上にいたんです。でも、人事が悩んでいたところ、南場さんが「成井はすごい女になる」と後押ししてくれたおかげでDeNAに入社できた、という経緯があって。

その言葉は今でもずっと心の中にあります。起業とか、何か大きなことを成し遂げるには、“根拠のない自信”を持つことが必要不可欠だと思っているんですけど、それを私につけてくれたのは南場さんでした。南場さんの期待に応えられる人間になりたいと思って、20代は頑張ってきた。そこに女性ということもあり、出産などを考えると自分のビジネス寿命が短いのではないかという焦りも合わさって、28歳で起業できたんだと思います。

前田:南場は起業家の中でもチャーミングさ、人から好かれる能力が極めて高い人ですよね。それを最も感じたのは、南場と一緒にミーティングに出た時。当然交渉の場なので、自分たちが望む着地点に持っていくわけなんですけど、普通はそういったこちらの利益になる話をすることは難易度が高いし、相手に嫌な反応をされることもある。

でも南場は、あくまでも先方が心地いい感じで、相手に好かれながらも、こちらの利益となる要素を散りばめていく。そういう能力がめちゃくちゃ高いんです。僕はそれを横で見て、ずっとメモを取っていました。

成井:私は、南場さんの女性経営者としての在り方にも影響を受けました。資本主義市場でインパクトのあるビジネスより、自分の理想とする社会を作りたいというビジョン型の経営者が女性には多いと感じるんですけど、南場さんを見ていると、利益をちゃんと出すことは大事だな、と。

だから私も、さらに大きなビジネスに挑戦するために大手とのM&Aという道を選びました。会社の利益って、社会からの通信簿なんですよね。

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