燃料電池の歴史は古く、1867年明治維新の22年前、江戸時代後期、徳川家慶(いえよし)の時代である。家慶の後、大河ドラマ「篤姫」の家定の時代となる。
1845年にイギリスのウィリアム・グローブによって燃料電池が発明された。当時は、電極に白金を、電解質に希硫酸を用いて、水素と酸素から電力を取り出すもっとも基本的な仕組みであった。
その後、燃料電池は発電システムとしては、熱機関により動かされる発電機の陰に置かれ、次に注目されるのは第二次世界大戦後のことである。
1955年、ゼネラルエレクトリック社(GE)に勤務していた化学者であるW. Thomas Grubbはスルホ基で修飾されたスチレンによるイオン交換膜を電解質として用いた改良型燃料電池を開発した。
1958年、他のGEの化学者であるLeonard Niedrachは触媒として用いられる白金(プラチナ)の使用量を減らす方法を探していた。この成果は'Grubb-Niedrach 燃料電池'として知られる事となる。GEは当時進行中だったジェミニ宇宙計画に採用する為にこの技術を開発を進めるようにNASAに働きかける。これは燃料電池の最初の商業用途となった。
1965年にアメリカの有人宇宙飛行計画であるジェミニ5号で炭化水素系樹脂を使用した固体高分子形燃料電池が採用され、再び燃料電池が注目されるようになった。
1959年、フランシス・トーマス・ベーコンは5kwの定置式燃料電池の開発に成功した。1959年、Harry Ihrigが率いるチームによって15kw出力の燃料電池トラクターがAllis-Chalmersの米国横断フェアーで公開された。このシステムは水酸化カリウムを電解質として使用して、圧縮水素と酸素を反応させていた。
1960年代、ブラット&ホイットニー社は米国の宇宙計画に於いて宇宙船の電力と水を供給する為にベーコンの米国での特許の使用許諾を得た。アポロ計画からスペースシャトルに至るまで燃料電池は電源、飲料水源として使用された。その際は材料の信頼性による検討の結果、アルカリ電解質形燃料電池が採用された。
2008年、多糖類のでんぷんに水と酵素を加え、効率よく水素をつくり出す技術を米バージニア工科大の研究チームが開発。バイオ燃料電池と呼ばれる。他にも光合成を利用した「太陽光バイオ燃料電池」が研究されている。
燃料電池の種類
固体高分子形燃料電池(PEFC)、アルカリ電解質形燃料電池(AFC)、リン酸形燃料電池 (PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)、固体酸化物形燃料電池 (SOFC)、バイオ燃料電池など、主に電解質の違いによりいくつかの種類がある。
固体高分子形燃料電池(PEFC)
イオン伝導性を有する高分子膜(イオン交換膜)を電解質として用いる燃料電池である。基本単位を単セル (single cell) と呼ぶ。単セルでは運転時に約0.7Vの電圧を発生する。この単セルを積層して直列接続し高電圧を得られるようにした物をセルスタック (fuel cell stack) と呼ぶ。
アルカリ電解質形燃料電池(AFC)
水酸化物イオンをイオン伝導体とし、アルカリ電解液を電極間のセパレータにしみこませてセルを構成する燃料電池。
最近では、PEFCと同様、高分子膜を用いるタイプも報告されている。最も構造が簡単であり、アルカリ水溶液での使用であることから、ニッケル酸化物等の安価な電極触媒を利用することができること、常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純にできるため、信頼性が高く、現在宇宙用途などに実用化されている唯一の燃料電池である。
リン酸形燃料電池 (PAFC)
工場、ビルなどの需要設備に設置するオンサイト型コジェネレーションシステムとして市場投入(100/200kW級パッケージ)がなされている。電解質としてリン酸(H3PO4)を用いる。
動作温度は200℃程度で、発電効率は、約40%LHV。固体高分子形燃料電池と同様に白金を触媒としているため、燃料中に一酸化炭素が存在すると触媒の白金が劣化する。従って、天然ガスなどを燃料とする場合は、予め水蒸気改質・一酸化炭素変成・一酸化炭素選択酸化反応により純度の高い水素をつくり、電池本体に供給する必要がある。
溶融炭酸塩形燃料電池 (MCFC)
水素イオン(H+)の代わりに炭酸イオン(CO32-)を用い、溶融した炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸カリウムなど)を電解質として用いる。そのため、水素に限らず天然ガスや石炭ガスを燃料とすることが可能。動作温度は600℃〜700℃程度。常温では固体の炭酸塩も動作温度近傍では溶融するため、電解質として用いることができる。
固体酸化物形燃料電池 (SOFC)
電解質として酸化物イオンの透過性が高い安定化ジルコニアやランタン・ガリウムのペロブスカイト酸化物などのイオン伝導性セラミックスを用いており、空気極で生成した酸化物イオン(O2-)が電解質を透過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている(PAFCやPEFCでは水素イオンが発電反応に介在)。動作温度は700〜1000℃程度でMCFCよりも高く排熱の利用は更に有利であるが、高耐熱の材料が必要となる。また、起動停止時間も長くなりがちである。
バイオ燃料電池
食物からエネルギーを取りだす生体システムを応用した燃料電池。生体触媒(酵素)の働きにより糖分を分解し、電気エネルギーを取りだす。環境の変化に対しても安定して働く強力な酵素が不可欠であり、研究開発では、酵素の寿命を伸ばすことなどが課題となっている。実用化では、血液中の糖分を利用する体内埋め込み型ペースメーカーの開発、ノートパソコンや携帯機器の電源などへの応用が期待される。その他、光合成による植物の生体システムを応用した「太陽光バイオ燃料電池」の研究開発が行われている。(出典:Wikipedia)
参考HP 日本ガス協会
→ http://www.gas.or.jp/fuelcell/index.html
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