“日本案のほうがよかった”との声も…インドネシア高速鉄道計画、問題噴出で大混乱

 インドネシア高速鉄道計画のニュースは、日本でも大変な注目を浴びた。日本の新幹線は、最終的に中国との受注合戦に敗れたわけだが、問題はその後である。中国の手による施工で、果たして本当に良いものができるのだろうか。こうしたことは、以前から言われていた。そして蓋を開けてみれば、残念ながら様々な問題が噴出する形となった。

◆消極的な運輸省
 高速鉄道建設の起工式が開催されたのは、1月21日のことである。これにはジョコ・ウィドド大統領が出席し、スピーチも行った。だが問題は、そこにイグナシウス・ジョナン運輸大臣がいなかったということだ。現地邦字紙じゃかるた新聞(2016年1月28日付)は、「起工式にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領含め関係閣僚が出席したがジョナン運輸相は欠席、事業を主導するリニ・スマルノ国営企業相との確執が取り沙汰された。ジョナン運輸相は27日、高速鉄道について「私は事業の手続きを進めるだけで、事業の適性や収益性などはリニ氏に聞いてほしい」と強調した」と報じた。

 ジョナン氏とリニ・スマルノ国営企業大臣。高速鉄道問題を語るのに、この二人は欠かせない。インドネシアでは、ジョナン氏とリニ女史は政敵同士と見なされている。ジョナン氏は高速鉄道計画が中国主導で開始されると決まった時、記者会見の場で「運輸省は法的手続きに関する協力はするが、計画に絡む責任は一切持たない」と語った。明らかに国営企業省と距離を置いているかのような発言だが、そんなジョナン氏は現在思いもしなかった難題に突き当たっているようだ。

◆中国語の書類
「書類問題」は、すでに日本のいくつかのメディアも報道している。これは高速鉄道建設を手がけるインドネシア中国高速鉄道社(以下KCIC)が運輸省に提出した書類の中に、中国語表記のものが含まれていたという話題だ。現地ニュースポータルサイトのビバによると、運輸省はKCICから提出された書類のいくつかに中国語が使われていることを確かに認めている。もちろんこの書類は、KCICに差し戻された。「せめて英語にするように」と指示したという。

 インドネシアの行政機関は、基本的には申請書類の使用言語をインドネシア語に指定している。だが現在では外資企業に配慮し、英語の書類も認めるようになった。しかしだからといって、中国語は一切認められていない。そのような書類を渡されても、まず読める職員がいるかどうかという問題になってしまう。そうしたこともあり、起工式を経てもなお建設が進められていない。また、土地接収問題も完全解決とは程遠い状態だ。

Text by 澤田真一
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