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【社会】

<税を追う>地上イージス・レーダー 国内企業の参画断念

米ハワイ州カウアイ島にある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の米軍実験施設=18日(共同)

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 防衛省が国内二カ所に配備を予定している地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に搭載する米ロッキード・マーチン社のレーダー「SSR」の開発を巡り、同省が日本企業の参画を断念したことが分かった。開発に加わった場合、納期が遅れ、価格が上がる可能性があるためとしている。日本企業の参画はSSRが選ばれるポイントの一つになったが、同省は選定をやり直さない方針という。 (藤川大樹)

 二〇一七年十二月の導入決定後、防衛省は構成品の選定作業に入り、レーダーは、米ミサイル防衛庁から米ロッキード製「SSR」と、米レイセオン製「SPY-6」の提案を受けた。課長級の検討チームで性能や部品供給などの後方支援、経費、納期の四項目を評価。一八年七月、事務次官を議長とする構成品選定諮問会議でSSRを選んだ。

 選定の段階では、SSRの開発に富士通の窒化(ちっか)ガリウム半導体の技術が採用される見通しだったため、評価のポイントになったとされる。その後、価格上昇や納期遅れの可能性が判明し、同省は富士通の開発参画をやめることにした。

 同省の幹部は「ロッキード社から日本企業参画の可能性があるとの提案を受け、評価したのは事実だが、複数ある評価項目の一部であり、参画がなくなっても結果は変わらない」と説明する。防衛産業界からは「条件が変わったのであれば選定をやり直すべきだ」との指摘が出ている。

 地上イージスは一基千二百二十四億円。ミサイルの発射装置や施設整備の費用は含まれていない。防衛省は秋田市と山口県萩市・阿武町にある陸上自衛隊の各演習場に配備する方針。

 海上自衛隊OBで、かつてレイセオン社の上級顧問も務めた防衛アナリストの坂上芳洋氏は「防衛省は国内企業の技術力向上を目的の一つに、SSRを選定した。富士通の参入を断念したことで、SSR選定の意義は失われてしまった」と指摘している。

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