全2932文字

え?茶色でも白でも、あまり違いはないの?

 それは、約12万人のアメリカ人を12~20年といった長期にわたって経過観察し、それぞれの生活習慣が体重の変化にどう影響を与えかを検討しています(2)。

 その結果、体重が増えた人の生活習慣で多いのが、フライドポテト(1.52㎏)、ポテトチップス(0.77㎏)、ジャガイモ(0.58㎏)、果糖入り飲料水(0.45㎏)でした。

 一方、体重が減った人の生活習慣で多いのが、運動(マイナス0.80㎏)、ヨーグルト(マイナス0.37㎏)、ナッツ(マイナス0.26㎏)でした。

 なかなか興味深い結果です。

 ジャガイモのインパクトの大きさは薄々分かってはいましたが、1位から3位を独占してています。果糖入り飲料水もなかなかのものですね。

 一方、ヨーグルトがしっかりマイナスに働くことや、野菜がほとんどマイナスに影響していないこと(マイナス0.10kg)は多少意外に感じられます。

 では炭水化物の「色」に関してはどうでしょうか。

 精製されていない穀物は0.17kgのマイナス、精製された穀物は0.18kgのプラスをもたらしただけです。合わせて0.35kgの差です。

 一応、はっきりした結果は出ているものの、この差がそんなに許されないものだとは、私には思えません。なぜなら、これよりもっと大きな差をもたらす因子が、ほかにたくさんあるからです。

 この論文が報告しているのは、「白い炭水化物が体に悪い」ということではなく、むしろ「炭水化物の色よりも、もっと影響力の強い因子がありますよ」ということ、もっと言えば「ジャガイモを控えてしっかり運動しなさい」ということでしょう。

 炭水化物の「色」についてもし本気で結論を出したかったら、やはりランダム化比較試験をするしかありません。つまり数千人、数万人単位で、「白い炭水化物だけを食べるグループ」と「茶色い炭水化物を多く食べるグループ」にランダムに分けて、10年以上かけて経過観察する必要があるでしょう。

 もちろん、この臨床研究を高い精度で実行できるとは全く思えませんが……。

 過去の記事「『健診には意味がない』のは果たして本当か」でも解説しましたが、確かにエビデンスは重要だけれど、それを確立するのに「向いている事柄」と「向いていない事柄」があります。

 そして食事というのは、自由度の高さと日々のバラツキから、残念ながら「あまり向いていない事柄」なのです。

 食事に関するエビデンスについては、最低限の目配りはしていきながらも、同時にその限界についても認識する必要があるのです。

 では臨床研究は一旦置いておいて、現実の疫学的なデータはどうなっているのでしょうか。

 コメの消費量が多い地域や、うどんで有名な香川県は、実際に糖尿病患者が多いのでしょうか?こちらも、一応調べてみました。