何年か前に新人賞をもらって兼業作家になったのだが、向いていなかったと判断したので今夜編集者に筆を折ることを連絡しようと思う。実名のブログに赤裸々に書くとファンが哀しむのでここに書く。
理由は「いい加減睡眠4時間の生活にケリをつけて休みたい」とか「金がない」とか「家族との時間が欲しい」とかもあるのだが、根本は「小説を書くのは好きだけど商業小説を書くのは好きじゃない」ということに尽きる。
俺は自分の世界を表現するのが好きで、子供のころからフィクションを書いていた。小説だったり漫画だったり、RPGツクールでゲームを作ったり形態は様々だ。文章はウェブに載せたり友達に見せたりはしていたが、特にそれで食うつもりもなく、思うがままに書いていた。そんなある日、気まぐれに新人賞にでも送ってみようかと考えて投稿した結果、まさかの大賞受賞。いつの間にか作家になっていた。
その後何冊か書いたものが幸い本になり、売れたものもあれば売れないものもありという感じで生きてきたのだが、最近自分の限界を感じるというか、小説を書くのが本当に苦痛になってきてしまった。
商業デビューすると、アマチュアのように自由に書くことはできない。村上春樹や村上龍くらいの大御所になれば書きたいものを書きたいように書けるのかもしれないが(でも村上春樹も編集者のエンピツに対応すると言っていたっけ)、俺クラスの作家だとそうはいかない。こちらが面白いと思ったものを全否定されることもあるし、ときにはまるで違うものに魔改造されることもある。こちらが全く面白いと思えない編集者のアイデアを入れないと本にしないと言われることもあるし、そうやって無理やり書いたものが売れて金になればまだいいが、全く売れずに二週間で書店からなくなったりする。もちろん編集者を交えてのブラッシュアップはビジネスとして必要なプロセスだし、自由に書いたものが商品にならないのは俺の実力不足のせいだが、一方でこういう生活を続けていて商業小説を書く理由がよくわからなくなってきた。
よくワナビー向けの説教として「お前は小説が書きたいのか、小説家になりたいのか」というものがあり、「小説が書きたい」人のほうが作家に向いていると言われるが、俺は逆だと思う。「小説家になりたい、小説家であり続けたい」という人のほうが、商業小説を書くにははるかに向いている。彼らは編集者の意見をきちんと取り入れ、作品をブラッシュアップし、市場の動向にもアジャストし、貪欲に生き残り続ける。そうやっているうちに本物の傑作を書く作家に化けたりする。俺のように「小説が書きたい」だけの人間はそういうモチベーションがないので、自分がつまらないと感じる方向に改稿をしてまで本を出すという動機がない。書きたいものを書いて売れてくれればいいのだがこれは天才戦略で、凡人がやると赤字を出して死ぬ。そしてただの凡人だった俺は、職業作家として死ぬのだ。
というわけでこれから各社に順次連絡してこのエントリを見せようと思う。これからはブログにでも趣味の小説を書いて、だらだら楽しく生きて行こうと思う。読者のみんなには謝りたい。
脱落たすかる
商業出版は地獄だが頑張れ。やる気と才能があればなんとかなる。
嘘乙。 お前がプロの小説家の舞台を降りてアマチュア小説家になったとしても 「睡眠4時間の生活」「金がない」は全く解決しないぞ。 お前は自分が小説を書くことが好きだったことも...
最初の新人賞は、書きたいもの書いて認められたんでしょ なろう小説家みたいに、趣味で書いて、声が掛かったら書籍化でいいんじゃないの WEBに載せてるものはそのままに、書き下ろし...
まあもう本は散々書いたし、いまさら書籍化とかはあまり興味ないかな。直木賞くれるとかいうのならもらうがそんな才能はないしな。
「お前は小説が書きたいのか、小説家になりたいのか」で前者を選ぶ人はプロデビューしないほうが幸せになれる、ってほうがよく聞くわ。 あと自分がとうてい納得できないような改稿...
師匠にブチ切れて文壇から放逐されて極貧生活を送りながら同人に作品を発表し続けた作家がかっていた。 稲垣足穂という。
どの世界も一緒だなー。俺はイラスト。 もったいないとかよく言われるかもだけど、自分の選択なのだから気持ちに素直でいいと思うよ。
仕事どうすんの? 実家や嫁実家が商売してて跡取り絶賛募集中、とかならうらやましいが。
兼業の仕事に軸足戻すだけじゃね?
anond:20190122141644
そんなこと思いもつかないくらいのバカなら成功していた。 増田は賢すぎた。
わかる 研究がしたい人は脱落して、どこどこの組織の研究者になりたい、大学教授になりたい、内容自体は寧ろどうでもいい、ポストがほしい、権威がほしい、という人の方が偉くなる...
兼業ならもっと強気に出たらよかったのに、納得いかないのに譲歩する意味がある?せっかく兼業なのに 相手がなら本は出せないっていうなら担当代わってくれ出なきゃ他紙に行くで済...
何も言わず消えていけよ めんどくせー奴だな
しばらく休んだら良いんじゃないの?兼業だろ?
他人事ではないな。 俺は二十年やってきて今ものすごく辛いけど、専業なので今更やめられないよ。
ファンがいるなら電書直売でも稼げんるじゃね
編集なしで、これからも有料noteとかで作品を発表し続けてほしい 読者は待ってると思う
おつかれさまでした。 自分一人で満足できるか、他人の評価で満足するのかの違いとかもあるんだろうなあ。