魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
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隅でパーティーをやり過ごしぼくは澪さんの私室にいた。
「どうでした?パーティーは楽しめましたか?」
「ええ隅で人間観察をして楽しんでました」
「えっ!?それはパーティーの楽しみ方ではありませんよね!?」
「仕方ないんですよ、一校の生徒会長が来てたんです。ぼく学校全然行ってないし姉さんが生徒会役員なんで絡まれたくなかったんです」
「学校は行っておいた方がいいですよ?学生の頃の思い出は大人になってからの励みになります。私は昔から病弱で学校へはあまり行けてませんでしたが少なからず良い思い出はありますよ?」
澪さんの言葉には何となく重みがある。それは澪さんがぼくのことを本当に考えて言ってくれているからだろう。
「九校戦は観に行こうと思ってます。学校行ってないんで選手には選ばれないでしょうから完全な観客でしょうけど」
「九校戦ですか私も毎年中継で観ているのですが雪花くんもいることですし今年は直接観に行くのもいいですね」
「無理はしないでくださいね」
会話が一区切りした所でぼくは部屋の外から誕生日プレゼントの箱を持ってくる。
「大きいですね、何が入ってるんですか?」
「ふふーんお見せしましょう!ぼくの最高傑作を!」
芝居がかった動きでかっこよくリボンをほどく。すると箱は自然と開き中の車椅子が登場する。決まった。二時間練習した甲斐があったというものだ。
「これは…車椅子…ですよね?」
「ええ、以前お約束したその車椅子を越えるぼくの最高傑作です」
澪さんが車椅子であるかどうか疑問に思うのも無理はない。 なんせこの車椅子には車輪がないのだから。本来車輪がつけらるべき両サイドには車輪を真っ二つにしたような半円が取り付けられている。
「この車椅子はこれで動かします」
「それはもしかしてCADですか?」
「ご名答」
ブレスレット型のCAD。この車椅子の胆である。
「さて、実際に動かして見せましょう。きっと驚きますよ」
ぼくがCADを操作し車椅子を右へ左へと動かすと澪さんの顔は驚愕に染まった。
何故ならこの車椅子はぼくの兄さん、司波達也いやトーラスシルバーのシルバーが開発した魔法─
「浮いてる…!まさかこれ─」
─飛行魔法の使用を前提とした世界初の車椅子なのだから。
◆
兄さんが飛行魔法を完成させる時期は大体予測できた。だから飛行魔法を組み込むことを前提に設計し制作、一番重要な飛行魔法の部分は丸投げという手法をとった。で飛行魔法を完成させたという兄さんからの報告を第三課で受けてから飛行魔法を組み込み兄さんと再調整。何度かの実験をし動作に問題がないことを確認して完成に至った。
「先程は分かりやすくするために高く浮かせましたがデフォルトではもっと低めに設定してあります。実験の結果割り出された最適な高さを常に保つようになってます。澪さんなら連続で25時間は稼働出来るはずですよ。」
「凄いです!飛行魔法が発表されてまだ一週間も…あっそういえば雪花君のお父様は…」
「まっそういうことです。発表される前から知ってたので割と時間はありました。まあ最終目標としては武装一体型ならぬ車椅子一体型のCADなんですけどね。そっちはちょっと時間が足りませんでした」
澪さんは浮く車椅子に大興奮のようで立ち上がってはしゃいでいる。可愛い。
「CADを調整すればすぐにでも乗れますよ、澪さんのためだけに作ったものなのでそんなに喜んでもらえて嬉しいです」
「素晴らしいプレゼントを本当にありがとうございます雪花君!」
キラキラとした子供のような笑みを浮かべる澪さんにぼくは…あまり寝ないで作ったので変な機能も沢山つけちゃいましたとは言えなくなったのであった。
いや寝てないときの深夜のテンションっておかしくなるじゃん!普段じゃあり得ないこととかしちゃうじゃん!
と内心で言い訳をしながらも表面上はニコニコと笑顔を崩さない。
マジどうしよう。でも今言っておかないとどんどん言いづらくなるし……よし言うぞ。
ぼくが決意したところで澪さんが相変わらずの笑顔で
「本当に本当に凄いです!これなら九校戦も観に行けますよ!一緒に観ましょうね!九校戦!」
なんて言うもんだからぼくの決意はあっさり折れた。
車椅子77の特殊機能は墓場まで持っていこう。
そう決めたぼくだった。
ブランシュによる事件は全カットです。もちろんこの作品でも事件は起きましたが全カットです。内容は原作とほぼ一緒だとお考えください。
さて明日も0時に投稿します。