木下正道「書物の住人」 3人の演奏者(ソプラノ、打楽器、アシスタント)のための 約45分

 書物の住人である、サラ(女)とユーケル(男)による、不在かつ不可能な愛を求め続ける書物の時間の中での、不可能な(愛の)歌。全曲は、音響の性質上でも、視覚上でも明確に区別できる3つの部分(おおまかには緩-急-緩の構成)からなり、漸進的に接近していくソプラノと打楽器奏者が、(不在かつ不可能な)愛の展開とその軌跡を描く。ソプラノ(女)と打楽器(男)は、互いに隔たった位置から始まるわけだが、ソプラノの(不在の相手へ書き続ける)愛の(手紙の)歌に対して、打楽器は、その歌への接近を求め、、かつその扱う楽器の音程=意志の力をしだいに獲得しつつ、ソプラノに寄り添い、その歌と合一しようとするのだが、ついに「言葉」を獲得すること無くそれは果たすことが出来ず、これまでも/これからも、(お互いに)不在者としてあり続けるしかない。
 アシスタントは、これらの成りゆきを冷静に観察し、制御し、時の推移を告げ、時を分節しつつ、全てを見守り、見届けつづける。
 
 
 

☆演奏者=D.S.=Duo Sacre

2002年結成された愛甲雅美と篠崎智とのデュオ。トッパンホール主催デビューコンサートオーディションに合格し、同ホールでダウランド、フェルドマンや新作初演を含む意欲的なプログラムで注目される。現代音楽と古楽をレパートリーの中心として活動を展開している。

☆愛甲雅美 (soprano)= 札幌市出身。武蔵野音楽大学声楽科卒業。題名のない音楽会、秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバル、武生国際音楽祭2001、国際電子音楽祭(ハンガリー)出演他、東京交響楽団、コントルシャン(スイス)、イクトゥス(ベルギー)、ノマド(東京)などのアンサンブルと共演。NHK-FM、東京FM、ハンガリー国営ラジオで放送される。これまでに、アンサンブル・マニュファクチュア、サウンド・ギア、Ensemble-sans-limiteのメンバーとして、国内及びハンガリー、ベルギー、イタリア、韓国、また2001年には国際交流基金派遣演奏家としてカナダにて演奏。現代音楽にも積極的に取り組み、ユン・イサン、ブライアン・ファーニホウ、サルヴァトーレ・シャリーノ、権代敦彦、ヨンギー・パクパーンをはじめとする現代音楽の世界/地域初演を多数手掛ける。CDにジャン=クロード・リセの『インヴィジブル』(HEAR103 The Electroaccoustic Music Studio of The Hungarian Radio)などがある。
声楽をL.エッガー、金光良美、A.M.ロッド、A.チェンゲリ、白井光子&H.ヘルの各氏に師事。

☆篠崎智 (percussion)= 1973年富山県生まれ。6歳よりピアノを、中学生の頃より打楽器を演奏しはじめる。東京学芸大学教育学部音楽科打楽器専修卒業。打楽器を塚田靖、マリンバを安部圭子に師事。
 
 

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